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《パンダが帰国》アドベンチャーワールドのジャイアントパンダ4頭「まもなく中国へ」飼育員が涙で綴った「贈る言葉」

和歌山県白浜町のレジャー施設「アドベンチャーワールド」にいるジャイアントパンダが、6月28日に中国へ返還される。対象となるのは、「良浜(らうひん)」、「結浜(ゆいひん)」、「彩浜(さいひん)」、「楓浜(ふうひん)」の4頭で、これで同施設にいるすべてのパンダの返還となる。返還の日を前にひとめ見ようと、連日多くの人が施設を訪れているという。そんな長年にわたり多くの来園者を魅了してきたパンダたちを、パンダ飼育歴8年の中谷有伽さんの思い出と共に振り返る。

手に伝わった鼓動から命の重さを実感した

彩浜(さいひん) 出生日:2018年8⽉14⽇(6歳) 性別:メス(写真提供/アドベンチャーワールド)
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4頭それぞれが「アドベンチャーワールド」で生まれ育ち、たくさんの“はじめて”をファンと共に歩んできた。なかでも2018年生まれの「彩浜」の誕生は、中谷さんにとって特別な経験だ。ジャイアントパンダの飼育スタッフになってから、初めて出産に立ち会ったのが「彩浜」で、「過去の日報や資料を見ながら事前に想定していたつもりでしたが、生まれてきたら平均よりもはるかに小さくて、異例なことばかり。現場の緊張感や一生懸命に生きようとする彩浜、育てようとする良浜の姿がとても印象的でした」と振り返った。その小さな体を初めて抱っこしたときに手に伝わった鼓動は今でも忘れられず、命の重さや温かみを肌で感じたという。

幼少期の彩浜 出生時の体重はわずか75gと、同施設で生まれたパンダの中で最も小さく誕生(写真提供/アドベンチャーワールド)
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また「結浜」の“やんちゃ時代”も中谷さんにとって忘れられない思い出だ。2〜3歳の頃、お父さんパンダ「永明(えいめい)」譲りのグルメぶりを発揮し、竹を選り好みしすぎてお腹を壊したことも。「園内にある竹を何度も取りに行ったりと手がかかった。でも、今は大人になって成長し、比較的なんでも食べてくれるようになりました」(中谷さん)

結浜(ゆいひん)出生日:2016年9⽉18⽇(8歳) 性別:メス チャームポイントは、頭の上のとんがり(写真提供/アドベンチャーワールド)
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一緒に過ごした日々に感謝をこめて

楓浜(ふうひん)出生日:2020年11⽉22⽇(4歳) 性別:メス 新型コロナウイルス感染拡大の真っただ中で誕生。多くの来場者に明るい希望と癒しを与えた(写真提供/アドベンチャーワールド)
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「みんなと過ごした日々が、飼育スタッフとしての成長につながりました」と中谷さん。これまでの感謝を込めて、帰国を目前にした4頭のパンダたちに贈りたい言葉を聞いた。

「まずは旅立つその日まで、健康な状態でいられるよう全力でサポートするのでたくさん竹を食べて、のんびり元気に過ごしましょう!

良浜へ
中国でも元気で健康に。たくさん竹を食べて、たくさんお昼寝をして、今まで通り元気に長生きをしてね!また会いに行けるよう私も頑張ります!

結浜、彩浜、楓浜へ
中国へ旅立ったその先に「母親になる」という未来もあると思いますが、良浜の血を引くあなた達なら絶対に大丈夫!中国へも会いに行くから、今までと変わらず元気に過ごしてね!」

良浜(らうひん)出生日:2000年9⽉6⽇(24歳) 性別:メス 同施設で初めて誕生したジャイアントパンダ(写真提供/アドベンチャーワールド)
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最後に、中谷さんは30年にわたってアドベンチャーワールドのパンダファミリーを応援してきた来園者へ向けてこう言葉を残した。

「皆様のおかげで、たくさんの命が誕生し、育っていきました。ここで終わりではなく、これからもまた新しい命に出会い、つなげていけるよう、私たちも努力していきますので、あたたかく見守っていただけたら嬉しいです」

飼育スタッフ、そして来園者から愛情をたくさん注がれ成長した4頭のパンダたちを同施設で見られるのは6月27日までと残りわずか。別れはさみしいけれど、またいつか。ありがとう、そして、行ってらっしゃい!

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