
毎年7月の最終金曜日は「世界コアラの日」。絶滅危惧種であるコアラの保全を目的に非利益団体「オーストラリアコアラ基金」が制定したものだ(編集部注:コアラに関する記念日は諸説あり)。そんなコアラ記念日にちなみ、コアラ飼育頭数日本一を誇る鹿児島県・平川動物公園でコアラ飼育員を務める落合晋作さんにその生態の魅力や飼育の歴史について話を聞いた。
コアラ飼育40年の苦労と努力
平川動物公園でのコアラの飼育は1984年10月にスタート。東京都・多摩動物公園、愛知県・東山動植物園と並び国内初の試みだった。きっかけとなったのは、その約10年前に市民グループ「コアラを鹿児島に連れてくる会」が発起した誘致活動。当時は電子メールもなく、海外からの情報収集や飼育設備準備に苦労の連続だったそう。飼育に必須であるユーカリは、園内や周辺での試験植栽を繰り返し行うことで、十分なエサの確保を成功させた。その後も、台風や寒波への備えとして鹿児島県内にユーカリ畑を40か所ほど分散して管理するなど、万全の対策を続けている。

こうして無事コアラが来園してからも、ユーカリの木の葉しか食べない、食べたユーカリの繊維や毒素を分解するため1日20時間ほど寝て過ごす、などこれまで接した動物とは異なる生態であったため、苦労が多かったという。
「当時の担当者や獣医師は、手探りで飼育管理を行っていたといえるでしょう。今でこそ、メールや電話で、オーストラリアとは連絡ができますが、そのようなツールがない時代は、未知な生き物の飼育をする感じだったと思います」と落合さんは話す。
同園ではコアラ担当の飼育員がユーカリ畑に出向き、採取や管理を行うという。コアラが生きるために必要なエサの栽培を実際に経験することで、個体の状態と、与えるユーカリの種類をリンクさせることができるのだ。
こうした地道な努力とチャレンジの積み重ねが、コアラ飼育40年の歴史の中で通算110頭(※編集部注:2025年7月現在)と国内最多の飼育頭数を維持する柱となっている。