【在宅医療】「最期は自宅で」をかなえる“運命のドクター”の見つけ方 第一歩は地域包括支援センターでの“聞き込み調査”、クリニックごとの強みや看取りの実績の確認も

人生の最期を病院ではなく、自宅で迎えたいという願いを叶えるには、「在宅医療」や「訪問リハビリ」が不可欠。後悔のない最期を迎えるために必要不可欠な「在宅医」「訪問リハビリ医」の見つけ方について、専門家に取材した。【全3回の第2回。第1回から読む】
「在宅医」「訪問リハビリ医」は暮らし全体を見る視点が必要
在宅医療や訪問リハビリは、多くの場合、最終的には「看取り」につながる。だが最期まで在宅で診てくれる“運命のドクター”に出会えている人は少ないようだ。高齢者医療に35年以上従事する精神科医の和田秀樹さんはこう語る。
「国は2038年に在宅死率40%をめざしていますが、現実には在宅死の割合は2020年の段階で15%にとどまっています。自宅で最期を迎えたいと望む人が多い一方、実際に願いが叶う人はまだまだ少ない」(和田さん・以下同)
在宅医療を担う医師の数は増えている一方で、質の低下も大きな問題だと、和田さんは続ける。
「わざわざ家に来てくれたというだけでいい医師だと思ったら大間違いで、中にはビジネス目的の“なんちゃって在宅医”もいる。在宅医を派遣するサービスに訪問診療を電話で頼むと、“患者の居住地から遠く離れた地方にあるコールセンターから、患者の近場でたまたま時間が空いている医師に派遣要請が出される”といった、まるでアルバイトのような実態も珍しくないと聞きます」
ただ家に来てくれるだけでは不充分。本当に信頼できて、最期まで伴走してくれる医師は、どうやって見つければいいのだろうか。
在宅医療や訪問リハビリを受けたいと思ったら、まずすべきことは「情報収集」だ。できる限り健康で、余裕があるうちに集めておきたい。たかせクリニック理事長の高瀬義昌さんはこう語る。
「住まいの場所の地域包括支援センターを訪ねて、“近い将来、在宅医療を受けたいのですが、まずは何を知っておくべきですか”と率直に“聞き込み調査”をするのが第一歩。在宅医療を提供している医療機関のリストなど、資料とともに説明してもらえます。自分の希望を伝えられるよう、あらかじめどんな医療を受けたいか決めておくとスムーズです」

家族を在宅で看取った知人に話を聞いたり、在宅医療制度や介護保険に関する書籍を読んだりして勉強しておくとさらに心強い。そうして総合的な知識をつけたら、地域包括支援センターで出された候補の中から、個別のクリニックの特徴をつかみたい。医療法人社団悠翔会理事長の佐々木淳さんはこう話す。
「“認知症が得意”“がんの緩和ケアに特化している”“訪問看護や訪問歯科診療などの付帯サービスも提供している”など、クリニックごとの強みを把握しておくといいでしょう。
例えば、肺炎が悪化した際、最期まで在宅で診てくれるところがある一方、“重度患者は得意ではないので、大きな病院に入院してください”というスタンスのクリニックも少なくありません。在宅医療へのスタンスや看取りの実績などは各クリニックのホームページに書かれています」
本人が認知症などで判断能力を失っているなら、地域包括支援センターで認知症が得意なケアマネジャーや介護支援専門員を紹介してもらい、どんな医師を選ぶべきか相談しよう。
「特に認知症のひとり暮らしは特殊なアプローチが必要なので、認知症サポート医の中から在宅医を選ぶのが望ましい。
家族が同居している場合は、それぞれの病気ごとに〝家族会〟があるので、そこに出席して情報収集をする手があります。最近ではChatGPTなどのAIに住まいの地域の在宅医を紹介してもらうケースもあるそうです」(高瀬さん)

脳梗塞や脳卒中でまひが残った場合などは、理学療法士などの訪問リハビリテーションの専門職が頼りになる。
「病院で行う『回復期のリハビリ』は、障害が起きた体を早期に立て直し、機能の回復をめざしますが、在宅で行うのは『生活期のリハビリ』と呼ばれるもの。例えば、右手が動かない人が左手を使えるように練習するなど、体の機能に応じて、より高い生活レベルに調整し直すのです。家族がつきっきりで面倒を見たり、リハビリに対応したりするのは難しい一方で、家でリハビリができなければ身体機能はどんどん衰えて寝たきりにつながってしまいます。その人の暮らし全体を見る視点を持ったかかりつけ医や在宅医と、理学療法士などのリハビリ専門職の連携が必要です」(佐々木さん)
かかりつけ医や在宅医を経由せず、自力で訪問リハビリ専門職を見つけるときは、慎重に探すべきだ。
「近年、もともとリハビリや整形外科を専門にしていた医師が在宅のリハビリクリニックを立ち上げるケースが増えているため、選択肢が多く、素人判断では難しくなっているのが現状です。こちらも、まずは地域包括支援センターに問い合わせるのが確実な第一歩。入院していた病院に連携しているクリニックがないか、医師に紹介してもらうのもいいでしょう」(高瀬さん)
在宅医療を受けるのに特別な手続きは必要なく、在宅医療を提供してほしい医療機関に直接申し込めばいい。ただし、手続きはなくとも、在宅医療を受けるための条件はあると、佐々木さんは言う。
「1つは、認知症や歩行が困難など『ひとりでは通院が難しい状態であること』。もう1つは『継続的に管理しなければならない病気や障害があること』です。つまり、もともとなんらかの医療機関にかかっていて、治療後も完全に回復していないケースや、退院後に在宅医を紹介されるケースが多いでしょう。
家族が通院のサポートをするのが難しく、在宅医療に切り替える場合もあります」(佐々木さん)

(第3回に続く。第1回から読む)
※女性セブン2025年10月16・23日号