コレステロール、HbA1c、BMI、中性脂肪…気にしすぎなくていい“健康基準値” 厳しい基準によって不安が植え付けられた日本人は「“世界一不健康”だと思い込んでいる」
《中性脂肪》基準値に明確な根拠はない
中性脂肪の基準値は空腹時30~149mg/dLと定められているが、値に明確な根拠はないという。
「1000mg/dLを超えると急性膵炎になる可能性があるので、すごく高い人は薬で下げる必要がある。しかし、200~300mg/dL程度であればリスクは少ないです」
そもそも数値の背景には個人差がある。一律に捉えること自体が誤りだと指摘するのは、医療経済ジャーナリストの室井一辰さんだ。
「同じ体重・身長でも、ただ太っているだけの人と筋肉質の人では中身が違う。健康度合いには体質や年齢も関係してくるので、すべてを同じ基準だけで判断するのは不自然です」

血圧もまた、数値の裏には年齢や生活環境、持病などがあり、必ずしも基準値を超えたからといってすぐに薬を服用するのが正しいとは言い切れない。それでもなお不安になる人は多い。東京都在住のNさん(58才)が言う。
「健診で血圧が高いと言われ、降圧剤をのみ始めました。家でよく測るようにしており、少し血圧が高いときに動悸を感じて病院に行きました。問題ないと言われましたが毎日不安で、気になるとすぐ測るようになり、血圧計が手放せません」
Nさんのように不安になる人は珍しくない。だが数値にこだわりすぎることが健康を害する恐れもある。
「逆にストレスがたまりすぎると免疫が低下し、がんになるリスクも高くなる。塩分や糖質をがまんしてストレスをためすぎるのもよくない。基本的に年を重ねるほど、数値を下げることによる弊害が大きくなると考えてほしい」(和田さん)
健康のための努力が、かえって健康を遠ざけていることもあるということ。
「健康を気にしてサプリメントに手を出す人もいますが、紅麹サプリで健康被害が生じたように思わぬ事態になることもある。OECD(経済協力開発機構)の調査で『自分を健康だと思うか』という問いに『健康だと思う』と答えた割合が日本人は約3割で、加盟国中最下位だった。日本は世界トップクラスの長寿国ですが、なぜか国民は“世界一不健康”だと思い込んでいる。厳しい基準値により健康不安を植え付けられているといえるでしょう」(大櫛さん)
基準値設定の裏には、医学や製薬業界の思惑があることも忘れてはいけない。
「厳しい基準値を設定して生活習慣病の治療を行うことで一部の医療機関や業界が利益を積み増している側面がある。基準値でスクリーニングして治療することで助かる命があるのは事実ですが、数字だけで判断すると、健康な体に無駄な薬を投与することにもなる」(室井さん)
基準値の意味を改めて考えることが、本当の意味での健康管理になるのだ。

(了。前編を読む)
※女性セブン2025年10月30日号