健康・医療

名医10人が実践する《免疫力を上げる習慣》「睡眠時間は6時間確保」「起床後はコップ1杯の水を飲む」「日中はしょうが紅茶」「お風呂では目を温める」ほか

寝ている女性
名医10人が実践する《免疫力を上げる習慣》とは?「睡眠時間は6時間確保」が良いそう(写真/PIXTA)
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すぐに風邪をひく人とひかない人、病気になる人とならない人、回復が早い人と遅い人。その差は「免疫力」にある。いつまでも病気知らずの体でいたいなら、高めたいのが免疫力だ。免疫細胞の働きを活発化させて、あらゆる病気から体を守るために医師が実践するルーティンを聞いた。

季節の変わり目…特に今年は警戒が必要

夏がようやく終わったと思ったら、急に寒くなり、昼と夜の気温差に体が悲鳴を上げている人も多い。

季節の変わり目は免疫力が低下しやすい時期。「特に今年は警戒が必要」と話すのは、順天堂大学医学部教授の小林弘幸さんだ。

順天堂大学医学部教授の小林弘幸さん
順天堂大学医学部教授の小林弘幸さん
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「寒暖差が激しく、気圧の変化も大きい。今年は長かった猛暑の影響もあり、疲れが出て自律神経も乱れやすくなっている。すでにインフルエンザの大流行が始まっていることが、それを証明しています」

特に加齢によって全体的に免疫力が落ちている高齢者にとっては、命にかかわる大問題。東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信さんも注意を促す。

東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信さん
東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信さん
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「高齢者はウイルスに対する抵抗力が低いので、ささいな風邪でも長引きやすい。昨年冬季にコロナなどのウイルス感染による風邪の後で肺炎が流行ったように、風邪で弱ったときに細菌感染を起こし肺炎になるリスクも高まります。高齢者は重症化しやすく、最悪、亡くなってしまう場合もあるのです」

朝食を抜くと死亡率アップ

免疫力を上げるために、東丸さん自身が気をつけているのが、食事だ。高齢になると食が細くなり、あまり食べられないという人も多いが、東丸さんはこう続ける。

食事
朝食を抜くと死亡率アップ!?(写真/PIXTA)
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「エネルギー源となるカロリーと、筋力などを維持するたんぱく質、ビタミン、ミネラルをしっかり摂ることは大事です。“肉や魚を減らして野菜や炭水化物だけ”といった簡素な食事は免疫力を下げる可能性があります」

バランスのいい食事を実践していると回答した名医は多い。高血圧専門医の渡辺尚彦さんも言う。

高血圧専門医の渡辺尚彦さん
高血圧専門医の渡辺尚彦さん
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「しっかり栄養を摂らないと体の機能が低下するので、結果的に免疫力も落ちると思います。食事はきちんと3食とって、栄養バランスを考えて食べましょう」

朝食を抜く人もいるが、池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さんは「ちょっとでもいいから、朝食は食べて」とアドバイスする。

池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さん
池袋大谷クリニック院長の大谷義夫さん
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「朝、何か必ず食べないと死亡率が上がるというデータがあります。私もどんなに時間がないときでも、ヨーグルトとバナナというように、最低限ヨーグルトプラスアルファは食べるようにしています」(大谷さん)

ヨーグルトは腸内細菌を整えることにも効果的だ。消化器病専門医の工藤あきさんも腸内環境の重要性を強調する。

消化器病専門医の工藤あきさん
消化器病専門医の工藤あきさん
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「腸には免疫細胞が多く存在し、全身の免疫機能に影響を与えています。また腸内細菌は、今年のノーベル生理学・医学賞で話題になった、免疫機能を制御して自己免疫疾患を防ぐ『制御性T細胞』にも作用します。

発酵食品や食物繊維を過不足なく摂り、よく噛んで食べることが大切。腸内環境の変化には2~3週間かかり、継続しなければ効果が消えていきます」

食事の内容だけではない。食べるときには「楽しむ」ことも大切だと話すのは、免疫学者で順天堂大学特任教授の奥村康さんだ。

免疫学者で順天堂大学特任教授の奥村康さん
免疫学者で順天堂大学特任教授の奥村康さん
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「体内で警察官のような役目をしている自然免疫細胞のNK細胞は、メンタルの影響をとても受けやすく、ストレスがかかったり暗い気持ちになったりすると弱くなってしまいます。適度なお酒はNK細胞の働きを高めるので、友人と楽しく食事をしながらお酒を飲むのもいいでしょう。ただし、飲みすぎると免疫力が下がるのでほどほどに」

体を動かす習慣も免疫力キープに

体を動かす習慣も免疫力キープにつながる。大谷さんのルーティンは「毎日1万歩以上歩く」こと。

「朝食後にコーヒーを買いに行く、昼食後に散歩するなどこまめに歩き、トータルで1万歩くようにしています。軽い運動習慣は免疫力を上げ風邪をひきにくくする、重症化を防ぐなどの効果が報告されています」

東丸さんは、外を歩くと日光を浴びることになるため、二重の意味で免疫力キープに役立つと話す。

「免疫力を保つには、ビタミンのなかでもA、C、Dが重要です。いずれも、学術的に免疫力を保つのに必要なことが証明されています。ビタミンDは、日光に当たらないと活性化されません。ヨーロッパの研究では、日光浴をする人としない人では免疫力に大きな差があるというデータもあります」

睡眠時間をしっかり確保

睡眠時間を重視する名医も多かった。産婦人科医の高尾美穂さんが言う。

産婦人科医の高尾美穂さん
産婦人科医の高尾美穂さん
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「睡眠時間が短いと免疫力が落ちやすいので、私は7時間を確保。寝ついたり朝起き上がったりするのに30分くらいはかかるので、7時間半は確保しています」

眠りの質を高めるために快眠アイテムを活用しているのは、眼科専門医で二本松眼科病院副院長の平松類さんだ。

眼科専門医で二本松眼科病院副院長の平松類さん
眼科専門医で二本松眼科病院副院長の平松類さん
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「遮光カーテンを閉めたうえでアイマスクを着用し、音が気にならないよう耳栓もしています。起床時間を固定する方が睡眠の質がよくなるので、起床時間は毎朝6時半。睡眠管理ウォッチを使って睡眠時間を自動計測しています」

「入浴」は多くの医師が重要視

イシハラクリニック副院長の石原新菜さんは「冷え対策」を習慣にする。体を温めることで免疫力は高まるため、深部体温を上げる「入浴」は多くの医師が重要視し、湯船につかることを推奨。

入浴
深部体温を上げる「入浴」は多くの医師が重要視し、湯船につかることを推奨(写真/PIXTA)
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石原さんは常にお腹を温めることを意識しているという。

イシハラクリニック副院長の石原新菜さん
イシハラクリニック副院長の石原新菜さん
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「腸の壁には全身の免疫細胞の約7割が存在しているので、腸を冷やすと働きが低下してしまいます。私は24時間常に腹巻きをしていて、薄手のものと厚手のものを使い分けています」

これからの季節、厚着をして外出し、暖房が効いた場所でかえって汗をかいてしまうことも。小林さんはこうした事態にもしっかり備えていると話す。

「汗をかいたままだと体が冷えて風邪をひきやすいうえ、不快感で自律神経が乱れ、免疫力が落ちてしまいます。私は着替えを持ち歩き、電車の中で汗をかいたりしたら着替えられるようにしています」

大谷さんが力を入れているのは「口腔ケア」だ。

「歯科衛生士がしっかりと口腔ケアをした高齢者の群は、そうでない高齢者の群に比べて、インフルエンザの発症が10分の1だったという東京歯科大学のデータがあります。私は毎食後に必ず歯磨きをしますし、寝る前はフロスもします」

その理由は口腔内細菌にあると大谷さんが続ける。

「口腔内細菌は、インフルエンザウイルスが気道に入るのを促進したり、増殖するのを助けたりするたんぱくをつくります。そのため、しっかり歯磨きをして口腔内細菌を減らせば、インフルエンザ予防だけでなく風邪もひきにくくなると考えられる。口腔内細菌を減らすことは、口腔内細菌を含んだ唾液によって発症する誤嚥性肺炎を防ぐうえでも有効です」

笑ったり、前向きな気持ちでいることも免疫力アップに

普段からよく笑ったり、前向きな気持ちでいることも免疫力アップにつながる。アットホーム表参道クリニック副院長の宮尾益理子さんが実践しているのは、楽しく、ポジティブな気持ちになれる時間をつくること。

アットホーム表参道クリニック副院長の宮尾益理子さん
アットホーム表参道クリニック副院長の宮尾益理子さん
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「私の場合は、歌舞伎の“推し活”だったり、友人との食事だったり。先々の楽しい計画をたくさん立てておくと、自律神経のバランスも整って、免疫力を維持する効果が期待できると思います」(宮尾さん)

宮尾益理子さん
歌舞伎を楽しむ宮尾さん(写真提供/宮尾益理子さん)
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大切なのは、自分に合ったルーティンを見つけて、楽しみながら続けることだと宮尾さん。

「効果が出始めても、そこでやめたら元通りになってしまいます。義務感からやろうとしても続きません。体力と気力の両面から、無理なく楽しめる範囲で行うことを心がけましょう」

名医たちのルーティンを参考に、自分に合った“免活”を始めよう。

名医10名が実践! “免疫力を上げる最強習慣”
名医10名が実践! “免疫力を上げる最強習慣”
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※女性セブン2025年11月6日号