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夫より稼ぐ“大黒柱妻”のリアル「すごく気を使う」「常に夫に対して申し訳ない」「気の毒だった夫を会社の代表者にした」…当事者が語る“稼げる妻”の苦悩 

妻のくせに生意気だ

 運送会社を営むSさん(44才)は20才年上の夫と年の差婚だった。

「すごいお給料もらってるんでしょ?」「頼りになる旦那さんがいていいわね」とママ友の間で“嫌み”を言われる大黒柱妻も(写真/PIXTA)
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「子供を産んだのも遅かったので夫の定年と子供の将来を見据えて、10年前に運送業を始めました。トラック1台からのスタートでしたが、取引先に恵まれたこともあって年商は1億円弱にもなりました。夫や子供たちも手伝ってくれて順風満帆といったところなのですが、夫の実家や親戚がよく思ってくれません。『妻のくせに夫を従業員扱いするなんて生意気だ!』というわけです。夫に対しても『女房に食わせてもらって恥ずかしくないのか?』と言ってきます。私は夫が気の毒で、最近会社の代表者を夫にしました。

 社長と呼ばれるようになって夫は貫禄がついて生き生きしてきましたし、夫の実家や親戚も満足そうです。実際に業務を取り仕切っているのは私だし、夫はほぼお飾り状態なので従業員や子供たちからは気の毒がられますが、身内の間で波風を立たせたくないので“ま、いいじゃん”という気持ちでいます」

常に夫に対して「申し訳ない」

 Sさんのように、夫婦間では問題なくとも、周囲の偏見に悩む人も少なくない。食品メーカーで管理職を務めるFさん(46才)が話す。

「就職して20年目に管理職になり、忙しいながらも充実した生活を送っているのですが、気になるのが同じ年の夫との格差です。実は夫は同じ会社の同期なんです。夫はおとなしい性格で“言われたことはちゃんとやるけど、言われたことしかできない”人。夫と潜在能力は変わらないけど、要領のよさだけで出世してしまった私は常に夫に対して申し訳なさのようなものを感じて居心地が悪くって。

 ご近所にも私の方が上司だと知られたくありません。私が仕事を頑張れるのは、私のことを理解し、支えてくれる夫のお陰なので、家庭のパワーバランスを崩さないためにも夫のことは立ててあげたいんです」

周囲の偏見に悩む人も少なくない(写真/PIXTA)
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 働く女性、稼ぐ女性が増えても、社会の潜在的なジェンダー意識が大黒柱妻を苦しめる。

「男性が大黒柱だったら家で妻が家事も子育ても100%やる、という家庭は当たり前にあって、世間もなんとも思ってない。でも男女が逆になると世間は色眼鏡で見ますし、主夫になることに抵抗のない男性はまだ少ないでしょう。妻が自分より稼ぐとプライドが傷つくので家事分担を放棄して妨害する夫の話もよく聞きますし、だから“旦那には自分の収入は言えない”という女性も結構います。

 妻が大黒柱になった経緯って本当に家庭によってさまざまだと思うんですけど、なぜか本人が好きでそうしていて、ガツガツ仕事したいから稼ぎ頭になります!って言って、寛容でやさしい旦那さんがそれを支えるというイメージがすごくある。でもそんなことばかりじゃなく、やむにやまれぬ人もいれば、お互いのバランスに苦慮しながらの人もいて、それぞれの形を模索しているはずです」(瀧波さん・以下同)

家庭にも社会にも「見えない敵」

 瀧波さんは、男性のアイデンティティーのゆらぎを感じていると続ける。

「稼ぐということでしか自分を保てない男性は多くて、稼げるようになった妻はすごく気を使わなきゃいけないのが大多数のリアルです。逆に、『専業主夫』として取材を受けたり、情報を発信する男性もいますが、社会からの称賛にあまりこだわるとつらくなるのでは。

 働くことも家事をすることも、同じ価値があるということにやっぱり男性はまだまだ意識が向かないのかなと感じています。私たち女性も、実力や能力で評価される世の中にはなりきっていません。高市内閣の閣僚も、“北欧がビックリするくらい女性を増やします”との言葉とは裏腹にたったの2人。しかも、実務能力で選ばれたのかは疑問符が付きます」

 家庭でも社会でも、見える敵、見えない敵と戦う大黒柱妻。瀧波さんは「大黒柱妻」が当たり前になる社会を希望する。

「私が大黒柱妻と呼ばれなくなること、そんなふうに呼ばなくてもそれが普通で当たり前になったらいいなと思います。そのためには女性が能力できちんと評価されて、妻として母として、ではなく自分として力を出せるような社会になったらいいですね」

 自己実現のできる社会のために、高市総理の手腕に期待したい。

女性セブン2025111320日号