「900m歩く」がリハビリの高いゴール
質の高いリハビリを受けるには、その病院がどのような方針で取り組んでいるかを知ることも肝要だ。ねりま健育会病院院長の酒向正春医師は、患者に残された能力を最大限に引き出し、その人の人間力を回復させる「攻めのリハビリ」をモットーに掲げている。

「攻めのリハビリには3つの基盤があります。1つ目が『1日3時間の積極的なリハビリ治療』。2つ目が『1日12時間の完全離床』、3つ目が『1日24時間の再発予防と全身管理』です。1日3時間のリハビリは制度上どの病院でも可能ですが、残り2つはかなり難しい。
当院では重症であっても起床時から夕食終了後まで、体を起こして過ごしていただきます。重力に逆らって負荷をかけるから心肺機能が回復していく。また、デイルームで過ごすことでほかの患者と接する機会が増え、『自分も頑張ろう』と思える。完全離床は大変で、看護スタッフのレベルが高くなければできません。
3つ目の再発予防と全身管理は、専門性の高い医師がいなくてはできません。体調を整えることで、夜にしっかり眠れる。だからこそ昼間はいい状態で過ごすことができ、前向きにリハビリに取り組めるのです」
このように、方針が明確だからこそ、リハビリの目標も高く掲げることができる。酒向医師が続ける。
「当院のまわりを歩くと900mです。その距離をしっかり歩けるようになれば、バスや電車に乗ったりスーパーで買い物したりできるようになる。私たちはそうした高いゴールを目指して取り組んでいます。
重症度が高く、自宅で生活するのが難しい人もいます。しかし、安心してリハビリが継続できるよう、『超強化型老健施設』も併設しました。老健でのリハビリ後に自宅に帰り、またその3か月後に老健に入ることを繰り返している人もいる。当院で受け入れた患者さんは最後まで診る。それが私たちの基本的な考えです」
このような理想的な病院を探すには、どうすればいいのだろう。前出の岡本医師によると、日本医療機能評価機構が認定する高度・専門機能評価で「リハビリテーション(回復期)」の評価を受けているかどうかも、重要な目安のひとつだという。
「この認定を受けるには、リハビリ専門医が常勤している、継続的なリハビリを提供できる体制がある、リハビリを1日平均6単位(1単位=20分)以上提供しているといった基準を満たすとともに、外部審査をクリアする必要があります。
全国には1000を超えるリハビリ病院や回復期病棟がありますが、この認定を受けた病院は現在までに62施設(2025年3月時点)しかありません。審査を受けるにはかなりの準備が必要で大変なのですが、これをクリアした病院は、一定以上の質が担保できているといえるでしょう」
リハビリには「再び人間らしく生きる」という意味がある。後遺症があったとしても、自分らしく最後まで生きるために、頼れる病院に巡り合ってほしい。


【プロフィール】
鳥集徹(とりだまり・とおる)/同志社大学大学院修士課程修了(新聞学)。新著『妻を罵るな』が発売中。
※女性セブン2026年1月22日号