健康・医療

《変形性股関節症の治療》“ある程度動ける状態”で手術を決断したほうがいい結果になりやすいとの指摘 「40代で骨切り術、その後に人工関節」などライフステージに応じた選択も重要 

変形性膝関節症と同様に、女性に多いのが変形性股関節症だ(写真/PIXTA)
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 人生100年時代に暮らす私たちの生き生きとした老後を妨げるのは、ひざ、股関節、首や腰の痛み。一方、症状や治療法は千差万別だ。あなたに合った診断と治療で、年だからと諦めていた「痛みのない生活」を叶えてくれる病院を名医たちに聞いた。ジャーナリストの鳥集徹氏と本誌『女性セブン』取材班がレポートする。第2回では股関節の病気について、治療に際して知っておくべきことを紹介する。【全3回の第2回。第1回を読む

【股関節】「筋肉を切らない手術」で術後の筋力低下を防ぐ

 変形性膝関節症と同様に女性に多いのが「変形性股関節症」だ。有病率は男性の3倍以上とされている。女性には生まれつき大腿骨頭がはまり込む寛骨臼(骨盤側の円形のくぼみ部分)の発育が不充分な人が多く、それが変形性股関節症の大きな原因となっているとされる。

 股関節の痛みに対しても、減量や筋トレが効果的だ。ただし、股関節に負荷(体重)をかけないことが肝心で、よくすすめられるのがプールでのウオーキングやエアロバイクなど。インターネット上では、ほかにも股関節周辺の筋肉を鍛えるさまざまな筋トレやストレッチ法が紹介されている。金沢医科大学病院整形外科長で教授の兼氏歩医師が解説する。

金沢医科大学病院整形外科長で教授の兼氏歩医師
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「変形が進んでいない初期のうちであれば、筋トレやストレッチはおすすめです。運動を控えると、体重のコントロールが難しくなる。5kg体重が増加すると股関節には20~25kgの負荷がかかりますから、動いてやせた方がいい。

 それに、筋トレをすると骨も強くなるので、おいおい手術となったときに、人工関節をしっかり固定しやすくなります。術前に筋トレをしておいた方が、術後の回復が早いという論文も出ている。3~4か月後に手術を予定している患者さんに、無理のない範囲で筋トレをしておきましょうと話すことはよくあります」

 ただし、いつまでも筋トレをしているだけで症状が抑えられるわけではない。えにわ病院診療部長の井上正弘医師が話す。

「痛みのために股関節をあまり動かさない状態が続くと、筋肉が固まってしまい、人工関節を入れても動きが悪く、回復が遅くなります。手術はできても、拘縮した筋肉は簡単には元に戻せません。日常生活ができているかたには、強く手術をおすすめしませんが、やはり関節の機能障害がある状態を長く放置するのはよくない。まだある程度動ける状態のうちに手術を決断した方が、いい結果になることが多いです」

 変形性股関節症の手術にも、「骨切り術」と「人工股関節置換術」がある。股関節の骨切り術は、骨の一部を切り取り、大腿骨頭をしっかり覆うことができる位置に寛骨臼を移動することで、股関節にかかる負荷を軽くする手術だ。

 耐久性が30年、40年と延びたことで、40代の若いうちから人工股関節を選択するケースが増えたが、「骨切り術の存在意義がなくなったわけではない」と兼氏医師は強調する。

えにわ病院診療部長の井上正弘医師
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「若くして股関節を悪くする人がいますが、そういう人に骨切り術をすれば、2か月半ほどで飛び跳ねられるほど回復する。患者さんの中には、術後にバレーボールの県大会決勝戦に出場した高校生もいます。

 人工関節と違って日常生活やスポーツに制限がかかりませんから、できれば自分の骨と軟骨で治したいというのが、私たちのこだわりです。手術も筋肉を切らない前方からの方法で行い、7cm程度の傷で済むので、術後の筋力低下を防ぐこともできます。

 一方、女性は40代後半から50代になるとホルモンバランスが変化して、骨がもろくなるので、その場合は人工関節の方がいい。それでも、当院では40代で4人のうち3人が骨切り術です。自分の骨で治しておいて、30年、40年後に悪くなったら、人工関節にする。そのようなライフステージに応じた治療を考えることも重要です」

 一方、人工股関節の手術も進歩しており、事前に撮影したCT画像をコンピューターに取り込み、術中に人工関節が適正な位置に入るよう誘導する「ナビゲーション手術」や、がんなどと同様に「ロボット手術」も医療の最前線で普及しつつある。前出の井上医師が話す。

「ナビゲーションを使用すると、術中に骨の切除量や人工関節の設置角度を計測しながら手術を行うことが可能です。さらにロボットは一歩進んで骨の切除と人工関節の設置をサポートして調整してくれます。これにより従来の手術より格段に精度や安全性が高まりました。

 また当院では、人工股関節の手術においても、筋肉や腱を切らない前方からの手術を行っています。さらに、以前は人工関節をセメントで固定する手術が多かったのですが、近年はそれを使わない『セメントレス』が増えました。その方が骨を削る量が減り、手術時間が短く、血栓症の合併症も少ないといわれています。骨がもろい人はセメントで固定した方がいいものの、人工股関節の手術でも、負担の少ない低侵襲化が進んでいます」

名医が選んだ「股関節」で頼れる病院
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(第3回につづく) 

【プロフィール】
鳥集徹(とりだまり・とおる)/同志社大学大学院修士課程修了(新聞学)。新著『妻を罵るな』が発売中。

女性セブン202625日号