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目的別のお風呂の入り方を温泉療法専門医が解説 「風邪気味のときは5分だけ」「花粉症がつらいときは“ぬるま湯”にゆっくり」時間がないときの効果的なシャワーの使い方も

お風呂
“目的別のお風呂の入り方”や“入浴に関する疑問”を解説(写真/PIXTA)
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健康やアンチエイジングのためにと運動やダイエットをがんばっても、なかなか続かない―─。そんなあなたがまずやるべきは「お風呂に入る」こと。汚れを落として温まるだけじゃなく、「正しい入り方」がわかれば血行がよくなり、血圧も安定し、肌も潤うなど、一石何鳥もの効果が望めるのだ。また、「毎日お風呂に入る人は、そうでない人より幸福度が高い※」というデータも。“目的別のお風呂の入り方”や“入浴に関する疑問”をお風呂博士が解説する。

※早坂信哉さんら東京都市大学の研究チームが6000人を対象に行った調査。週7回以上湯船につかる人のうち幸福度を感じる人は54%、週6回以下の人は44%と10ポイントの差がある。

風邪気味のときは5分だけ

「体温が37.5℃以上のときの入浴は厳禁です」と、温泉療法専門医の早坂信哉さんは言う。

「高齢者が対象ではありますが、さまざまな入浴事故発生のリスクが16.47倍高まるという調査があります(※https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000005034.html)。ただ、湯気を吸い込んで鼻腔の細菌などを排出したり、一時的に免疫力を上げる効果があるので、体力があれば入浴することをおすすめします。ゆっくりつかると体力を消耗するので、40℃の湯に5分ほどつかる程度に」(早坂さん・以下同)

40℃に5分
40℃に5分(イラスト/上田惣子)
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入浴後は体の保湿と水分補給を行い、早めに休もう。

気合を入れたいときは熱めのお湯に5分

「今日は気合が必要」「重要な仕事に向けてシャキッとしたい」という「ここ一番」の入浴法はあるだろうか?

「本来、入浴は副交感神経を優位にしてリラックスに導くものですが、やる気スイッチを入れたいときに限っていえば、42℃くらいの熱めの湯に数分(最長5分)入り、交感神経をオンにするという方法があります」

ただし、血圧が上昇しやすいため、高血圧の人は避けること。

「充分にかけ湯をして、血圧を上げない工夫をしてください。長時間の入浴は体に負担となるため避けましょう」

早風呂や、動画視聴はOK

そもそも「10分も入っていられない」という人は、5分入浴→体を洗う→5分入浴などの分割入浴でもOKだ。

入浴中に動画を見る女性
動画は10分以上は見ないこと(イラスト/上田惣子)
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「入浴中にスマホなどで動画を見るのも、楽しいと感じられればいいと思います。ただし、10分以上は見ないこと。仕事にかかわる情報などを見るのはリラックスできないので避けましょう」

体が疲れすぎているときはシャワーで

仕事や家事で疲労困憊。こんなときこそお風呂の出番!と思いきや…。

「疲労が激しいときは、入浴を翌朝に回し、さっさと寝てしまうことをおすすめします。

疲労が激しいときは、入浴を翌朝に回し、さっさと寝てしまうことをおすすめ
疲労が激しいときは、入浴を翌朝に回し、さっさと寝てしまうことをおすすめ(イラスト/上田惣子)
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 入浴もある程度の体力を要するため、湯につかることが疲労感を増長させる場合も。疲労回復のために入ったお風呂で眠ってしまい、溺死という事態が起こらないとも限りません。

どうしてもサッパリしたいときは、42℃のシャワーを。疲れが気になる部分にシャワーを当てるとスッキリするでしょう」

シャワーを浴びる元気すらないときは、のちほど紹介する手浴で温まろう。

イライラして集中できないなら水音を

『マインドフルネス』ならぬ“マインドフロネス”を実践
『マインドフルネス』ならぬ“マインドフロネス”を実践(写真/PIXTA)
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「集中できないときこそ『40℃10分』入浴を。雑念を脇に置き、呼吸や入浴剤の香りなど、五感に意識を向ける『マインドフルネス』ならぬ“マインドフロネス”を実践してみましょう。水道からしたたり落ちる水の音に集中するのもおすすめ。最初は気が散りますが、続けるうちに脳が集中モードに切り替わってきます。この集中力は、シャワーでは得られません」

花粉症がつらいときは“ぬる湯”にゆっくり

花粉症の人にはつらい季節の到来。入浴で症状を和らげる方法はないだろうか。

「花粉を家に持ち込まないのが最優先。帰宅したらすぐにシャワーで顔や髪についた花粉を落とし、その後、ゆっくり入浴するのがいいでしょう。

38〜40℃
38〜40℃の湯にゆっくりつかるのがベスト(イラスト/上田惣子)
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入浴するときは、湯温に注意。41℃以上は交感神経を刺激し、アレルギー症状を悪化させるので、38〜40℃の湯にゆっくりつかるのがベストです。湯気を吸い込み、異物を流すことで鼻づまりも改善されます」

花粉症のみならず、春は寒暖差が激しく、生活環境の変化もあって疲れやすい季節だ。

「不調の軽減には、『40℃10分』入浴が助けとなります。また、いまは夏の酷暑に向けて『汗をかける体』にしていく準備の季節。深部体温が上がると汗腺の働きが高まり、夏バテ予防にもなります。春こそ、毎日湯船にしっかりつかりましょう」

お風呂につかれないときは手浴と足浴

「けがや風邪で入浴ができないときは手浴、足浴でも体はそれなりに温まります。

手浴は42℃の湯を洗面器に張り、5〜10分手を浸すだけ
手浴は42℃の湯を洗面器に張り、5〜10分手を浸すだけ(イラスト/上田惣子)
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手浴は42℃の湯を洗面器に張り、5〜10分手を浸すだけ。足浴も同様に洗面器に湯を張り、座って足を浸すか、バスタブに10㎝ほど湯を張り、足を浸したままシャワーを浴びると、より体が温まり、かつ、あまり疲れません」

バスタブに10㎝ほど湯を張り、足を浸したままシャワーを浴びる
バスタブに10㎝ほど湯を張り、足を浸したままシャワーを浴びる(イラスト/上田惣子)
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手浴、足浴は介護の分野でもよく使われる手法で、体だけでなく心理的なリラックス効果があるそうだ。

早坂さんに聞く入浴のギモンQ&A

【Q】体を温めるには、熱めのお湯にサッと入ればいい?

【A】42℃以上の熱いお湯に短時間入る方が温まりそうですが、深部体温まで上がらないどころか、体温が急速に下がって湯冷めを招く。何より、血圧や心拍数が上がり、血栓ができやすくなるため特に高齢者には危険。40℃のお湯が物足りなければ、残り3分くらいで42℃に追い炊きし、1〜2分だけつかれば、体への刺激も比較的少なく満足感も得られると思います。

【Q】朝風呂は体によくないの?

【A】悪いことはありませんが、朝は脱水状態にあるため、水分をしっかり摂りましょう。血圧が変動する時間帯なので、熱めの湯は避け、10分入ると眠くなるので、つかる時間は5分程度に。

【Q】お風呂で立ちくらみが起きるのはなぜ?

【A】湯船につかった後、急に立ち上がると血液が下半身に集中し、脳への血流が減少する「起立性低血圧」が起き、立ちくらみや失神に至ることも。日頃から低血圧のかたはゆっくりと立ち上がり、さらに、湯船から出る前に冷水で手を冷やすと急激な血圧低下を防ぐことができます。

【Q】時間がないときの効果的なシャワーの使い方は?

時間がないときの効果的なシャワーの使い方
時間がないときの効果的なシャワーの使い方は?(イラスト/上田惣子)
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【A】「首の後ろと側面、脇の下、足のつけ根」など、太い血管が通る部分に42℃のシャワーを重点的に当てると、効率よく体を温められます。

ちなみに「加齢臭」が気になるときは、朝、皮脂の多い「額、胸の間、背中の真ん中、脇の下、足の裏」に41℃のシャワーを1分当てると、石けんなしでも皮脂量が減り、夕方までにおいが抑えられます。

◆東京都市大学教授・早坂信哉さん

温泉療法専門医、博士(医学)。25年以上にわたり7万人を超える入浴習慣を医学的に調査するお風呂の第一人者。近著に『入浴 それは、世界一簡単な健康習慣』(アスコム)。

取材・文/佐藤有栄

※女性セブン2026年3月19日号