
今年は例年よりも花粉の飛散量が多いと予測されており、花粉症に悩む人たちにとっては“過去最悪”の花粉シーズンになる可能性がある。いまからでも遅くない最新対策を徹底解説する。
朝起きた瞬間からくしゃみと鼻水に悩まされ、外出すれば目がかゆくてたまらない。頭痛にも見舞われ、家事も仕事も手につかない…今年も花粉症の季節がやって来た。厄介なことに、例年より花粉の飛散量は多いという。
日本気象協会の予測によると、今春の花粉飛散量は西日本ではおおむね例年並みの一方、東日本と北日本では例年より多く、「非常に多い」とされる地域もある見込みだ。
医療ガバナンス研究所理事長で医師の上昌広さんは、今年の花粉症患者の傾向を次のように予想する。
「花粉の飛散量が多いからといって、花粉症が重症化することは考えにくいものの、花粉の量が多いと症状が出ている期間が長引く傾向があります。つまり、今年は長く苦しむ患者が増える可能性があります」
ゾッとする話ではあるが、近年、花粉が飛び始める前からのみ薬や点鼻薬を利用する「初期療法」により、ピーク時の症状を抑えられることが知られるようになった。
だが「今年こそは」と意気込んでいたものの、対策を講じないままシーズンを迎えてしまった人も多いだろう。また、これまでは何ともなかったのに、今年初めて発症し「ついに来たか…」と青ざめている人もいるのではないだろうか。
花粉シーズンが到来したことで、のみ薬や目薬だけでやり過ごすしかないと悲観するのはまだ早い。これからでも間に合う対処法がある。
世界初の「塗り薬」として2024年に登場した「アレジオン眼瞼クリーム」は、目のかゆみに悩まされる人の心強い味方になるかもしれない。横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニックの理事長で医師の三島渉さんが解説する。
「まぶたに塗るだけで目の結膜に浸透し、花粉症の症状であるアレルギー性結膜炎による目のかゆみを抑えることができます。
目薬の効果は6時間ほどで1日に何度か点眼する必要がありますが、塗り薬は結膜にゆっくり吸収されるため効果の持続性が高い。一度の使用で一日中効果が続きます。また年齢を重ねるほど目薬がうまく目に入らないという患者さんが増えますが、クリームは塗るだけなので簡単に使用できます」
アレジオンは副作用として「かぶれ」が報告されているが、比較的副作用の少ない薬ともいわれる。

ほぼ全員の症状が劇的に改善した
即効性が期待できる治療もある。
「私の患者さんの、ほぼ全員の症状が軽くなりました」と上さんが口にするのが、「ゾレア皮下注射」だ。2019年に承認された注射による治療法で、’20年からスギによる花粉症患者への注射にのみ保険適用となった。
「花粉が体内に入ると、くしゃみや鼻水、目のかゆみや涙などを誘発する『ヒスタミン』が分泌されます。ゾレア皮下注射はそのヒスタミンの分泌を抑制し、アレルギー症状の発生を食い止める。接種後に劇的に症状が改善して、“1日50回近く出ていたくしゃみがたった1回に激減した”“花粉が飛ぶ日でも外出できるようになった”などの患者さんの声も聞こえてきます。花粉症の一般的なのみ薬である抗ヒスタミン薬でみられる副作用の眠気が出にくいことも、ゾレア皮下注射の利点です」(上さん)
年々注目が高まるゾレア皮下注射だが、難点は治療のハードルが高いことだ。誰でもすぐに接種できるわけではなく、「過去にアレルギー性鼻炎の薬を使用したが改善されなかった」「アレルギーテストでスギ花粉症の診断が必要」「合併症や既往病歴がなく医師が治療を許可している」など、複数の条件をクリアしないと治療を受けられない。
加えてゾレア皮下注射は3割負担でも1回4000円前後と高額。効果を持続させるには2~4週間に1回の注射を繰り返す必要がある。
花粉症対策の注射はほかにも「ノイロトロピン注射」と「ヒスタグロビン注射」がある。どちらも週1~2回の注射を3~6週間継続する必要があり、保険適用の3割負担で1回1000~1500円と安価だが、効果には大きな個人差があるとされる。

鼻水や鼻詰まりなど鼻の症状を「貼るだけ」で緩和できるのが、「アレサガテープ」。こちらも世界初の貼るタイプのアレルギー性鼻炎治療薬で、2018年に保険適用となった。
使い方は簡単で、エメダスチンという抗ヒスタミン成分を配合したテープを胸・腕、背中・腹部のいずれかに貼り、24時間ごとに貼り替えるだけ。皮膚から吸収された有効成分が体内に浸透することで効果が得られるという。
「のみ薬はエメダスチンの血中濃度を一気に上げますが、下がるのも早く1日2回の服用が必要です。その点、アレサガテープは1日1回貼るだけでエメダスチンの血中濃度を24時間一定に保ちます。のみ薬と違って食事の時間に左右されないため不規則な生活の人でも使いやすく、胃腸を通らないのでのみ薬で胃が荒れやすい人も安心して利用できます」(三島さん)
アレサガテープは手軽で安全な薬とされるが、妊娠中や授乳中の女性は使用を避ける必要がある。
保険適用外の自由診療に選択肢を広げれば、「ステロイド注射」もある。
「強力な抗炎症作用を持つステロイドを注射して、花粉症の症状を抑え込みます。ただし消化器潰瘍や感染症などの副作用が生じることがあり、女性の場合はホルモンバランスが乱れて生理周期が変わる危険性もあります。このため花粉症治療のガイドラインである『鼻アレルギー診療ガイドライン』(感染症学会)では推奨されていません」(上さん)
近年、「ボトックス点鼻法」も注目されている。銀座ケイスキンクリニック院長の慶田朋子さんが解説する。
「しわ改善などに使われるボトックスには、神経伝達物質アセチルコリンの過剰な働きを抑制する働きがあります。ボトックスを鼻腔に滴下して鼻粘膜に浸透させることで、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの症状が和らぐとされています。個人差はありますが、施術直後から効果を実感される患者さんも少なくありません」
1回の施術で2~4週間効果が持続し、費用は約1万~2万円だ。
最恐の花粉症シーズンにどう対処すべきか、検討を急ぎたい。
※女性セブン2026年3月19日号