
日本人の大人の平均体温は1957年から2008年の50年間で0.5℃以上も低下したという調査結果がある。体温が下がると免疫力も低下し、がんの活性化、認知症の進行にもつながるとも言われ、健康長寿のためには、体温を0.5℃上げることが肝心だ。特に寝る前は体温を上げて寝つきをよくすることを意識したい。そこで、プロが教える夜の体温を上げる習慣をチェックしよう。
寝る前に体温を上げることを意識して
「寝る前の体温を高くするほど、寝つきがよくなる」と言うのは、医師の川嶋朗さん。
「体温が下がることで、よく眠れるようになるのですが、体温が高いほど下がりやすくなるからです。寝る前に体を冷やすとこのリズムが狂うため、眠る前は体温を上げることを意識しましょう」(川嶋さん)
【入浴前にストレッチで代謝を上げる】

「お風呂に入る前に体操やストレッチを行うと代謝がよくなり、疲れが取れやすくなります。寝る前に副交感神経を優位にさせることがスムーズな入眠をもたらすため、ハードな運動よりもストレッチやツボ押しなど体を軽くほぐす程度のものが適しています」(鍼灸師・温活指導士・川崎真澄さん)
【「ドライヤーお灸」で血の巡りをよくする】

ドライヤーでツボを温める「ドライヤーお灸」を入浴前に行うのも効果的だ。
「ツボのあたりをドライヤーの温風で1分程度温めるだけです。お腹まわりを温めると、全身に熱が行き渡ります。足の甲や土踏まず、お尻などを温めるのも効果的です」(川嶋さん・以下同)
素肌にドライヤーを当てる場合はやけどに注意。乾燥が気になるなら肌着や衣服の上からでも問題ない。
【腹式呼吸で副交感神経を優位に】
腹式呼吸を行うと、副交感神経が優位になって体温が上がり入眠しやすくなる。
「やり方は、【1】5秒かけて鼻から息をゆっくり吸ってお腹を膨らまらせる。【2】10秒かけて鼻もしくは口から息をゆっくり吐き、お腹を凹ます(【1】【2】を約10回繰り返す)。血流もよくなります」
【お風呂は最低でも湯船に10分つかる】
湯船の温度は38~40℃がいいといわれるが、これには理由がある。
「40℃以上になると交感神経が優位になり、ヒートショックが起きやすくなります。38~39℃くらいがベストです。10分程度湯船につかると深部体温が0.5℃上がり、副交感神経が優位になります。最低でも10分、できれば約30分つかると体全体が温まります」
【お風呂から上がったら体が温かいうちに布団へ】
せっかく入浴して温まっても、時間が経って体が冷えると寝つきが悪くなる。
「体温が高い状態で布団に入ると、徐々に体温が低くなって寝つきがよくります。お風呂から上がったら、なるべく早く布団に入りましょう」
【寝るときは首、手首、足首の3つの首と頭を温める】
睡眠時にはパジャマの下に肌着を着ること。
「首、手首、足首を温めると体が冷えにくいので、就寝用のネックウオーマーや手首が隠れるような肌着、レッグウオーマーを着用するといいですね。また、意外に見落とされがちなのが頭部です。髪がきちんと乾いていないと頭皮が冷え、体全体の体温が奪われるためドライヤーでよく乾かすこと。柔らかく薄手のナイトキャップをかぶると安眠をもたらします」
【シーツの下に敷毛布、掛け布団の上に毛布を】
冬の寝具は、熱をため込むように工夫する。
「シーツの下に敷き毛布を敷き、掛け布団の上から毛布をかけると布団の中の熱を逃さなくなります」
【寝る前にスマホを見ない】
「布団の中でいつまでもダラダラとスマホを見ていると、交感神経が優位になって血流が悪くなり、いい睡眠が取れなくなります。血流が悪くなることで、冷えやすい体になって悪循環に。布団の中ではスマホを見るのをやめましょう」
【就寝は22~深夜2時が理想】
体温を上げるためには寝る時間帯にもこだわりたい。
「漢方医学の考え方に基づくと、22時から深夜2時の間に細胞に必要な修復作業が行われます。病気や感染症に対する免疫機能が高まる時間でもあるので、その時間帯に寝るようにしましょう」
◆教えてくれたのは:医師・川嶋朗さん
神奈川歯科大学特任教授、統合医療SDMクリニック院長。著書に『60歳から体温を「0.5度」アップする健康法』(Hanada新書)ほか。
◆教えてくれたのは:鍼灸師・温活指導士・川崎真澄さん
グラン治療院東京院長。共著に『冷え知らず先生が教える温活百科』 (ワン・パブリッシングムック)がある。
取材・文/廉屋友美乃
※女性セブン2025年3月6日号