「老人は老人が嫌い」は真実か
70代の知り合いのトラブルを聞くと、たいがいは言ってはいけないことを口走ったことから始まっている。つい数か月前のこと。私より5才上で気楽に会えるBFがいたの。仕事は「不動産会社経営」と言ってたけど、体中から“ひま”という空気が立ち上っている。
昨年9月、林家ペーさんの自宅から出火して、縁あって私がその後のサポートをし始めた。そうしたら、BFから「どうしてもお伝えしたいことがあります」とメールが来た。そういえば彼の身近な人が火事の火元になったという話を聞いた気がする。火事経験のある人などそういないから、すぐに彼と会ったわよ。
すると開口一番、「いい? 火事の火元は責任を取らなくてもいいんですよ。うちの親戚は4軒延焼させたけど、1円も払わなかった」と胸を張ったの。聞けば、それは彼が20代の頃。つまり50年も前。「時代が違うわ」と言うと、有名私大の法学部卒の彼は「時代じゃなくて法律。故意または重過失でなければ、火元には賠償責任は発生しない、という失火責任法があるの、知らない?」だって。
知ってるよ。てか、そんなもん振り回して事を荒立ててどうすんの!──とは言えないので話題を変えた。そうしたら話を遮って、「あのさぁ。あなた、急激に太ったんじゃない?」だって。火災後のサポートをし始めてから2か月で5kg太ったけど、それをあえて口にするか。さすがに「そんなこと言われて喜ぶ女はいないと思うよ」と語気を強めると後から謝ってきたけど、万事休すだよね。

あと、最近のトラブルの元凶はスマホだ。どこそこの何々がおいしいよという話が出ると、サササとスマホを操って、「この店? さっそく行ってみるわ」と言いながらチェックする人は同世代にもいる。でも、スマホ使いを諦めてしまった人は、「そこに行くときは誘ってね」と人任せ。
それはいいんだけど、人任せにするにはお作法というものがある。人にものを頼んだら自分の思い通りにはならないし、それでもちゃんと口に出してお礼は言わねばならない、という当たり前のことができないんだよね。
あぁ、言い出したら止まらないわ。どうあがいても、70才を過ぎると“がまん力”が減る。例えば相続のトラブルよ。くどくど何千万円という数字を並べて、きょうだいげんかの愚痴を繰り返し聞かされると、「奪い合う財産がある人はいいわね」と言いそうになる。しょせんは人ごとだもの、いつまでも聞いてられないって。あと、“介護大変のマウント合戦”も、両親ともに見送った私は身を入れて聞けなくなっている。
と、ここまで言って思い出したことがある。その昔、「老人は老人が嫌いだよね」と聞いた私は「あはは。それ、言えてる」と笑ったっけ。それがいまは……てことは? あ〜あ、私も相当焼きが回ってきたね。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2026年7月2日号