厚労省管轄下・独立行政法人が公表「患者副作用報告」最新データ 患者や家族が報告した“薬の副作用”から「筋力低下」「記憶障害」「呼吸困難」「幻覚」など重篤事例をリストアップ
よく処方される身近な薬の危険性
報告された薬には、専門家が要注意だと懸念を示すものが少なくない。
「例えば痛み止めとして使われる『タリージェ』。副作用として傾眠や排尿困難などのほか、記憶障害や注意力障害、判断力低下などが挙げられます。急にぼんやりするといった変化を見逃さないことが大切です」
国際医療福祉大学病院内科学教授の一石英一郎さんは、よく処方される身近な薬の危険性を指摘する。
「不整脈の薬『アミオダロン塩酸塩』で甲状腺機能の異常が出現する場合があります。胃腸薬の『モサプリドクエン酸塩水和物』では呼吸困難や倦怠感が起こることがある。
今後も似たような症例が起こる可能性があると考えて注意すべきでしょう」
薬剤師の長澤育弘さんは、ぜんそくやアレルギーでよく使われる「モンテルカストナトリウム」を挙げる。
「悪夢や抑うつ、自殺念慮などの神経精神症状が問題になることがある。花粉症やぜんそくの薬として身近なため、家族も薬との関連に気づきにくい。のみ始めてから性格や睡眠が変わった場合は、必ず医師や薬剤師に伝えてください」
「死亡」が報告された「クエチアピン」に注意が必要だと話すのは鈴木内科医院の総合診療医・舛森悠さん。
「抗精神病薬で統合失調症などに処方されますが、せん妄という混乱症状のほか、単なる不眠でも処方されることがある。強めの睡眠薬だと思ってのんでいる人もいますが、一日中寝込んでしまうほど効くこともある強い薬です。糖尿病の人には使えない薬でもあり、隠れ糖尿病の人の症状を悪化させている恐れもある」

一石さんはリストからある特徴を指摘する。
「報告数や頻度からすると、神経系に作用する薬や、脳やメンタル系の薬剤にトラブルが多いようです。こういった薬をのんでいる人は注意すべきでしょう」
舛森さんは、リストにはないものの、要注意の薬として「ロキソプロフェンナトリウム」を挙げる。
「服用されるかたが多い薬ですが、腎臓に負担をかけるほか、一部の血圧の薬との併用でさらに腎臓に負担がかかります。胃炎や胃潰瘍の原因にもなるので安易な使用は禁物です」
福島県在住のBさん(54才)は、リストには載っていない「デュロキセチン塩酸塩カプセル」を服用したときに、副作用が出たと話す。
「慢性の腰痛に悩んでおり、神経内科を受診したときに処方されました。服用後、1か月を過ぎたあたりから、めまいや倦怠感、そして終日眠気が襲うように。それなのに夜は寝つけず、常に寝不足状態でした。医師に相談したところ薬の副作用が原因だとわかり、薬を変えたら落ち着きました」
薬を服用する際、私たちはどう注意するべきか。
「メリットとリスクを理解し、いつもと違うなと感じたときは薬の影響を疑うことが大切。特に60代以降では眠気やふらつき、食欲不振、便秘、尿の異常、気分の変化などの副作用が出ているのに年齢のせいにして、本人も家族も薬の影響と結びつけにくい。新しい薬を始めた後の体調変化は遠慮せず医師や薬剤師に相談すべきです」(谷本さん)
長澤さんが続ける。
「医師も薬剤師も、すべての薬の副作用を常に把握しているわけではないので、いつ薬をのみ始めて、いつ頃から症状が出たのか、その症状はどういうときに出るのかなど、具体的な情報を伝えてください。医師や薬剤師も原因を一緒に探しやすくなります」
高齢者特有の事情もある。
「年齢を重ねた患者さんは複数の診療科にかかっていて、多くの薬が処方されていることがある。6剤以上になると副作用が出やすいほか、同じ成分が重複することもあるので、より注意が必要です」(一石さん)
長澤さんは「処方カスケード」と呼ばれる悪循環に陥った患者がいたと明かす。
「降圧剤の副作用で足がむくんだ患者に、むくみ症状を軽減するための利尿薬が出ていた。その利尿薬の作用でトイレが近くなり、頻尿を抑えるために過活動膀胱の治療薬が追加され、さらにその薬の副作用で口が渇いたり、物忘れがひどくなったといった具合です。もとは1つの薬の副作用だったものが新たな病気と誤解され、次々と薬が追加されていく状態でした」
薬には必ず負の面が存在する。100%安全な薬など存在しないことを肝に銘じたい。

※女性セブン2026年7月30日・8月6日号