『美女と野獣』の経験を生かして生まれた舞浜公演だけの演出

技術監督の古城博之さんからは、舞台セットのアップデートについて説明が。古城さんは3月まで上演していた『美女と野獣』でも技術監督を務めており、特殊な形状で知られる舞浜アンフィシアターの魅せ方を知り抜いた人物でもある。
「そもそもは、これまでの3年半『美女と野獣』を担当してきた中で(2022年10月~2026年3月)、当初はできるだけ一般的な箱型の舞台に近づける工夫をしてきたんですが、途中から、“作品を劇場に寄り添わせる方が効果的ではないか?”ということに気づいたんです。ですから、今回の『リトルマーメイド』はできるだけアンフィシアターのもともとの舞台を生かす方法で、新しい演出を取り入れています。

例えばアールの形状に合わせて、プロセニアム(額縁のような舞台を彩る装置)を少し前にせり出すようにし、絵本を開いたような形状にしました。これにより斜めからでも舞台奥まで見やすくなりますし、ページをめくりながら物語が進む没入感が得られると思っています。
プロセニアムの間を、花道のように俳優が通り抜けたり、フライングしたりということも行われます。この舞浜公演では、特別なフライングも追加されています。より近くで没入感を得られるようにと、アリエルはプロセニアムの間もフライングします」(古城さん・以下同)

さらにプロセニアムの間には海藻のカーテンもセットされており、シーンによって出たりはけたり、効果的な演出が行われる。
「今回のアップデートの目玉は、客席全体を海の世界のようにして魚が泳ぐパペットができたことです。全長70m、客席の上空で魚が泳ぐ演出を行います。
もともとは、1シーンか2シーンくらい魚を出せたらいいなと思って、ディズニー側にプレゼンテーションをしてみたところ、“もっといろんなものを泳がせたい!”ということになりました(笑い)。まだ細かくは言えませんが、いろいろなシーンでいろいろなパペットが泳ぎ回る予定です」
フライングパペットが登場する位置は、客席の比較的中央部分。つまり、前方の舞台近くで観劇するのと、中央以降の客席で観劇するのとでは、見え方や楽しみ方が違ってくる。座る位置によって味わいが違うとなると、観劇のたびに新しい発見がありそうなのもうれしい。

人間の落とし物がマーメイドにはどう映るのか

舞台美術で印象的なのは、洞窟にある巨大な彫像だろう。アリエルが海中で拾った人間の落とし物を飾り、未知なる人間世界への憧れや興味をますます深めていく。
よく見ると、燭台にはフォークやスプーンがささっているのだが、その理由は、アリエルが使い方をわからないせい。劇中ではフォークで髪をとかすシーンがあり、アリエルの無邪気さが伝わってくる小道具の小ワザにも、ぜひ目を光らせたい。

日本での初演から13年もの月日が流れてなお色あせない同作。今回新たに加わった舞台装置も含めて、ぜひ自分の目で見て、新しい感動を味わってほしい。
劇団四季 ディズニーミュージカル『リトルマーメイド』は2026年8月26日(水)より、舞浜アンフィシアター(千葉県浦安市)にて開幕。
撮影/五十嵐美弥 取材・文/辻本幸路