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《健康リスク高める塩分の摂りすぎ》意外にたっぷり“隠れ塩分食品”に注意!コンビニおにぎり、鍋のシメの雑炊、アップルパイにも

塩
塩分は意外なところにたっぷり含まれる(写真/PIXTA)
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若い頃は「太らないように」することを意識していた食事も、加齢とともに「病気にならないように」に重きが置かれるようになる。減塩はあらゆる病気のリスクを下げるといわれるが、“思わぬ伏兵”に気づかなければ、効果は半減どころかゼロになってしまうかもしれない。

体の中に蓄積することでじわりと健康を蝕む塩分

ひとさじでただちに命の危険があるわけではないが、体の中に蓄積することでじわりじわりと健康を蝕むのが塩分だ。秋津医院院長の秋津壽男さんが言う。

「塩分を摂りすぎると、腎臓に負担がかかります。といってもよほど悪化しないと強い自覚症状はないため、異常値が出ても一時的なものだろうと放置され、病状が進行する“隠れ慢性腎不全”の人が増えていることが問題視されています。また、塩分は血液中の水分量を増やすので血圧も上がります。

さらに、のどや食道、胃の粘膜を傷つけ、食道がんや胃がんのリスクも高まると指摘されているのです」

人生100年時代、健康寿命を延ばすことが重要視されるなかで、塩分が体に与える悪影響は広く認知されるようになり、いまや「減塩」は一過性のムーブメントではなく健康習慣の要となった。

塩
厚生労働省が推奨する目標値の倍以上、塩分を摂取してる人も少なくない(写真/PIXTA)
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「長年、日本人の塩分摂取量は世界的に見ても過多傾向にありました。厚生労働省が推奨する目標値は、1日当たり成人男性7.5g未満、成人女性では6.5g未満とされていますが、実際には12~15g、意識をしていなければ15gを軽く超えている人も少なくありません。調味料をはじめとした減塩食品を食生活に取り入れるのはいまや常識となり、減塩志向は高まる一方です」(秋津さん)

ヘルシー和食は塩分たっぷり?

塩の使用を控えて、しょうゆは減塩タイプを選んで、塩気の強い食べ物はなるべく避ける―かように“節塩”を意識しても、塩分は思わぬところに潜んでいる。管理栄養士の望月理恵子さんが指摘する。

「例えば、和食にはヘルシーなイメージがあり、薄味にすれば健康にも減塩にもいいと思いがちですが、洋食よりも塩分は多く含まれる傾向にあります。みそ汁や煮物など調味料を使用する料理が多く、手の込んだものほど塩分が高くなるといえる。おひたしにはしょうゆではなくぽん酢をかけたり、薬味をきかせて調味料を減らしたり、納豆のタレも半分にするなど工夫しましょう。

塩分は朝の方が体にため込みやすいので、朝食でご飯、みそ汁、塩鮭に漬けものといった和食を摂るかたはメニュー改善を意識した方がいいですね」

一般的にみそ汁1杯には約1.2g、梅干し1粒は1〜2g、浅漬けなら100g当たり2gほどの塩分が含まれる。和定食の朝食にした場合、それだけで1日の摂取量の半分ほどになってしまうことすらあるのだ。

識者たちが声を揃えて注意を喚起するのが、寿司だ。管理栄養士の金丸絵里加さんが言う。

「お寿司は酢飯にも塩分が含まれ、イクラや漬けまぐろ、穴子、うになどネタにも塩気があり、さらにそれをしょうゆにつけて食べるわけですから、かなりの量の塩分を摂取することになります」

酢飯にも塩分が含まれる寿司は減塩の敵!
酢飯にも塩分が含まれる寿司は減塩の敵!(写真/PIXTA)
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秋津さんも続ける。

「お寿司を食べると、夜にのどが渇くという人はとても多い。酢飯は塩と砂糖と酢で味を調えるので、自分で作れば調節もできますが、飲食店や市販のものは難しい。特にスーパーなどで売られているお寿司には、大量の塩分が含まれている傾向にあります」

スーパーやコンビニのおにぎりにも要注意

スーパーやコンビニの総菜で気をつけるべきは寿司だけではない。

「例えばお弁当は、外で働く人が食べてもおいしいと感じるように濃い味つけにしていることが多い。濃い味のおかずは少し残すなどして、食べ方に気をつけましょう」(秋津さん)

弁当
お弁当は濃い味つけにしていることが多い(写真/PIXTA)
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手軽に食べられるおにぎりも要注意。

おにぎり
手軽に食べられるおにぎりも要注意(写真/PIXTA)
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「コンビニのおにぎりは食べてしょっぱいと感じないのが絶妙なのですが、どれを選んでもだいたい1g前後の塩分が含まれていて、塩気の強い具材だと2g近いものもあります。食べすぎてしまうと一気に塩分過多になる。お寿司と同様、自分で作れば塩の量は調節できますから、摂取量を減らすことは可能です」(望月さん・以下同)

コンビニのおにぎり
コンビニのおにぎりは食べすぎてしまうと一気に塩分過多に(写真/PIXTA)
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炭水化物でいえば、塩分が含まれない白米と違ってパンやうどんにはそもそも塩分がしっかり入っている。

「かけうどんは汁にもしっかり塩味がきいていますから、汁まで飲み干すのはやめた方がいい。食パンには1枚当たり1g前後の塩分が含まれるので、朝昼晩と1枚ずつ食べたらそれだけで3gほどの塩分を摂っていることになります」

自分は塩辛い食品より、スイーツなど甘いものが好きだから塩分過多にはなりにくいと思っている人にも危険は潜む。

「アップルパイなどはパイシートに塩分が多く含まれているので、甘味を摂っているつもりが、実は塩分もしっかり摂っているということになる。スモークサーモン3切れより市販のアップルパイ1個の方が塩分量は多いこともあるので覚えておいてください」

※全国の2630人の女性を対象に、1日当たりの塩分摂取量を調査したもの。出典/厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」
全国の2630人の女性を対象に、1日当たりの塩分摂取量を調査したもの。出典/厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」
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「鍋のシメの雑炊」の落とし穴

外食や市販の総菜に塩分が多く含まれる以上、できるだけ家で手作りすることが推奨されるが、そこにも落とし穴はある。

「気をつけていただきたいのは顆粒だしです。和風、中華、洋風といろいろな種類がありますが、なかには結構な量の塩分が含まれているものもあります。市販のだしでなく、自分で昆布やかつおぶしからだしをとる場合にも塩分は抽出される。あさりなど貝類は特に塩分を多く含むので、貝類の汁物は調味料をいつもより少なくすることを目指して」(金丸さん)

気をつけていただきたいのは顆粒だし
気をつけたい顆粒だし(写真/PIXTA)
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これからの季節、食卓に頻繁に登場するあるメニューにも注意が必要だと望月さんが続ける。

「寒くなってくると鍋を食べる機会が増えると思いますが、鍋つゆはかなり高塩分。そこに具材の塩分が旨みとともに溶け出す。最後のシメで雑炊を作って汁ごと食べてしまうのはかなりの危険行為といえます。

野菜たっぷりの鍋だからヘルシーと油断は禁物。食材を別ゆでして塩分を落としてから鍋に入れたり、しゃぶしゃぶにして塩分を抜いて食べるといいですね」

雑炊同様、素材や調味料の塩分をすべて吸収する炊き込みご飯も塩分が高くなる。煮汁を素材に染み込ませる煮物やきんぴら、おでんにも気をつけたい。

「ハムやソーセージといった加工食品の塩分量が多いのは知られていますが、はんぺんやちくわ、かまぼこなど魚介を使った加工食品はもともとの素材に塩分が含まれているのでより注意したい。練り物を多く入れるおでんは塩分過多になりやすい料理です。

調味料に使われる白だしや薄口しょうゆも、普通のしょうゆよりも塩分量が多い。色が薄いぶん、ついつい入れすぎてしまうケースが多いので、知らず知らずのうちに大量の塩分を摂っているということになりかねません」(望月さん)

だし
だしにも注意(写真/PIXTA)
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しょうゆを控えて、白だしを使えば減塩になるというのは大間違いなのだ。自分で調味せずにルーで作るカレーやシチューも実は塩分過多メニューの代表格。

「スパイスやハーブなど複雑な味つけになっているので気づきにくいのですが、ルーの塩分量はとても多い。食べる頻度は多すぎない方がいい」(金丸さん)

市販の総菜は調味料代わりに使う

日常に潜む隠れ塩分から身を守るためにはどうすればいいか。まず欠かしてはいけないのが、食品表示成分のチェックだろう。

「調味料はもちろん、お総菜やお弁当やお寿司などありとあらゆる食品は、『食塩相当量』の表示から塩分量を見ることができる。必ず確認して商品を選びましょう。意外なものに塩分が多く含まれていることへの気づきにもつながります」(望月さん)

食品表示の「食塩相当量」はしっかり確認しよう
食品表示の「食塩相当量」はしっかり確認しよう(写真/PIXTA)
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自分で料理する際には調味料の量などで調節できるが、市販の総菜などを食卓に取り入れるなら食べ方に気をつけたい。

「塩分量が多い煮物やきんぴらは味が濃いので、自分で野菜を足して和え物にするなど、調味料のように使ってみてください。

自炊するなら、スパイスなどの香辛料や、トマトやきのこといった旨みの強い食材を使うことで調味料で塩分を加えなくても満足感が得られます。逆に鮮度が低い食材は旨みや風味が抜けていてついつい調味料を足してしまうことになります」(金丸さん)

大切なのは、自分がどのくらいの塩分を摂っているかを把握すること。秋津さんが言う。

「実際に減塩に気をつけて食品を選んでも、厚労省の目標値を超えないのは難しいのが現実です。だからといって、過剰に塩分を控えれば今度は低血圧になりすぎてかえってリスクになりかねない。毎日平均して、8~10g程度を摂ることを意識しましょう」

毎日の小さな積み重ねが10年後、20年後の健康状態を大きく変える。そのひと口にどれだけの塩が入っているか、意識することから始めよう。

●要注意!隠れ塩分食品リスト※塩分量は調理に使用する食材や調味料、商品によって差があります
※塩分量は調理に使用する食材や調味料、商品によって差がある
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※女性セブン2024年9月19日号

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