
春はそこまで来ているものの、まだまだ肌寒い毎日。冷えた体に温かな汁物は、何よりのごちそうです。たっぷり具沢山の豚汁とけんちん汁なら、おかずにもなり、お腹も大満足。名店の料理人に、家庭でもおいしくできるレシピとテクニックを教えてもらった。
【豚汁】家庭でもできる!匠の味
おいしい豚汁は豚肉と相性のよいごぼうを入れるのがマスト。具材は炒めずに、冷たい状態から煮込み、最後にみそを入れて仕上げる。何度も食べたくなる絶品豚汁を、日本料理の匠に教えてもらった。
材料をすべて入れてから火をつけ、じんわり加熱
「長ねぎ以外の野菜の総量は500g。ここをおさえておけば、個々の野菜の分量が多少増減しても、別の野菜に変わってもOKです。豚汁作りでは肉が硬くなるという悩みが多いのですが、原因は、煮立った状態で肉を入れているから。高温では肉が火傷状態になり、身が縮んで硬くなるのは当然。
一方、コールドスタートなら徐々に肉に熱が入るため、弾力のあるやわらかな食感をキープできます。野菜も同じ。旨みがゆっくり溶け出しますから、汁の味にも厚みが出ますよ」(日本橋 ゆかり 三代目 野永喜三夫さん)
《材料》(3~4杯分)

豚バラ薄切り肉…200g 大根…2cm分 にんじん…1本 ごぼう…1本 里いも…1個 しいたけ…4個(各100g) 長ねぎ…1本
みそ…大さじ3と1/3(60g) だし汁…4と1/2カップ(または水4と1/2カップ、和風顆粒だしの素3g)
《作り方》
【1】材料は切ってすぐだし汁に入れる

鍋にだし汁を入れる。大根は2mm厚さのいちょう切り、にんじんは2mm厚さの輪切り、ごぼうは2mm厚さの斜め切りにする。里いもは縦半分、5mm厚さに切る。しいたけは軸ごと4等分に切る。長ねぎの白い部分は1cm幅のぶつ切り、青い部分は薄く小口切りにする。切った順にだし汁に入れる(青ねぎ以外)。
【2】すべて入れたら点火する(コールドスタート)

豚肉を3cm幅に切り、鍋汁に入れたら中火にかけて約10分煮る。コールドスタートで冷たい状態から熱を通せば、豚肉はやわらかいままくっつかないため、重なったまま入れてもよい。
【3】汁の濁りが透明になったらみそを入れる

煮立ってあく(豚肉のたんぱく質が凝固したもの)が出るが、そのままでOK。濁った汁が透明に変わり食材にしっかり火が通ったら、火を止め、お玉の上でみそを溶いて入れる。
【4】ねぎの青い部分を入れ加熱する

青ねぎを入れて煮汁に浸し、火を通して発色させる。器に具材を盛り、汁を入れ、青ねぎをのせる。
アレンジ

たっぷりの粉チーズをかけてフランスパンを浸して食べるのもおすすめ。チーズのコクが出た汁を吸ったパンが激旨!
◆教えてくれたのは:日本橋 ゆかり 三代目 野永喜三夫さん

三代にわたり宮内庁への出入りを許された老舗の日本料理店。三代目の料理動画配信も話題。

住所:東京都中央区日本橋3-2-14
【けんちん汁】家庭でもできる!匠の味
具材を油で炒めて煮込み、しょうゆで味をつけるのがけんちん汁。精進料理のため、動物性の食材を使わないのが特徴だ。発祥と言われる鎌倉・建長寺の老大師直伝の味を教えてもららった。

ごま油がほんのり香る精進料理の代表的な汁物
「けんちん汁は建長寺が発祥の『建長寺汁』が由来とも言われています。精進料理ですから、動物性の食材はだしも含めて一切使いません。また、食材を無駄にしないことが基本なので、皮まで使い切ります。作り方はシンプルですが、野菜の甘みと旨みが奏でるだしは、滋味深く食べ飽きない味です。
炒めるときに使うごま油は調理で味も香りも飛んでしまうので、仕上げにも入れるのがポイントです。ご家庭で作る場合は、肉や魚なども入れて、楽しんでください」(禅茶寮 点心庵 料理長 高橋博文さん)
《材料》 (2杯分)

木綿豆腐…1/8丁(20g) 大根(葉含む)…1/20本 れんこん…1/6節 里いも…1/4個(各30g) にんじん…1/8本(15g) ごぼう…1/10本 こんにゃく…1/10枚(各10g) 好みの季節野菜/赤かぶ・ビタミン大根…各10g しょうゆ…大さじ2 塩・ごま油…各小さじ1
だし汁…2カップ(水…2カップ 干ししいたけ…1個(10g) 昆布…2g)※だし汁は前日に用意しておく。
《作り方》
【1】こんにゃくはそぎ、野菜は同じ厚さに

こんにゃくは、短時間でも味がしみこみやすくするため、包丁の柄尻で叩いて伸ばし、器の底などで食べやすい大きさにそぎ切る。
にんじんとごぼうはささがきにし、大根、里いも、れんこんは5mm厚さに揃えていちょう切りまたは短冊切りにする。だし汁の戻した干ししいたけは5mm厚さに切る。
【2】ごま油で食材を炒める

鍋にごま油を熱し、【1】のにんじんとごぼうのささがき以外を入れて強火で炒める。大根が透き通ってきたら、にんじんとごぼうを入れて軽く炒め混ぜる。
【3】しっかりあくを取り、澄んだスープにする

弱火にし、昆布を除いただし汁を入れる。ひと煮立ちしてから10分そのまま煮る。途中であくを取って澄んだ汁にする(家庭ではあくは取らなくてもOK)。
【4】豆腐をくずし入れ、ごま油で香りを

しょうゆ、塩を加え木綿豆腐をひと口大に手でくずしながら入れる。ひと煮立ちしたら器に盛り、刻んだ大根の葉少量(分量外)を入れ、ごま油少量(分量外)をたらす。
◆教えてくれたのは:禅茶寮 点心庵 料理長 高橋博文さん

建長寺の門前にある。食材は、自然豊かな鎌倉産のものを使用。坐禅の部屋にある円窓は必見。

住所:神奈川県鎌倉市山ノ内7
撮影/宮本信義、田中宏幸 取材・文/佐々木めぐみ
※女性セブン2025年3月13日号