健康・医療

《健康習慣》名医と健康のプロがやっている“食事前のルーティン”「水分補給」「運動」「うがい、歯磨き」「ガムを噛む」「野菜ジュースを飲む」

水を飲む女性
名医と健康のプロがやっている“食事前のルーティン”とは?(写真/Photo AC)
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日々の食事は健康の基本。献立や食べ方に気を配るだけでなく、食事前にちょっとした工夫をするだけで、健康効果がグンとアップするという。名医や健康のプロなど健康長寿を叶える11名に何をしているのか調査した。

健康のプロが選んだ最強の食前ルーティン

食事前のルーティンが健康を守るためになぜ重要なのか。内科医の石原新菜さんが説明する。

「現代人はスマホやテレビを見ながら、適当にパパッと食事をしがちです。それではあっという間に食べ終わり満腹感を得られないため、すぐに空腹を感じて、つい余計に食べてしまうことになる。

それを防ぐため、食事前に『いまから食事をする』という意識づけをすることが大切なのです」(石原さん・以下同)

食事前のルーティンには、朝昼晩それぞれにやるべきことと、1日3食共通してやるべきことがあるという。

「朝は目覚めをスッキリさせ、体の活動性を高め、やる気を出す必要がある。そのため、交感神経を優位にさせるルーティンをします。朝は一日のうちで最も体温が低いので、体を温められることを行うといいですね。

交感神経は適度に食欲を抑える効果があるので、食べすぎを防ぎ、ダイエットにもつながります」

では、昼はどうだろう。薬剤師の山形ゆかりさんは、「午後の集中力を切らさないために、お昼前にコーヒーや紅茶を飲む」と言う。

「カフェインの眠気覚まし効果は、飲んでから30分後に効き始め、5~6時間持続するとされています。昼前に飲むことでシャキッとして、午後を過ごすことができます」(山形さん)

夕食前にすることについて、婦人科医の松村圭子さんが説明する。

「夜、体を休めるためには、夕方から副交感神経が優位になる行動をとる必要があります。オンとオフをしっかり切り替えるため、私は夕食前にワインを1杯だけ飲みます。適度な糖質が体の緊張をほぐしてくれ、私はよく眠れるようになりました」

食事ごとに共通して行うことには、水分補給、運動、ガムを噛むなどがある。

加齢とともに代謝や免疫力も下がってくる。それを少しでも食い止めるには、筋肉をつけ、体温を上げること。質のよい睡眠を取るためにも、食前の行動が重要なポイントだ。

コップ1杯の水で体を潤し、食べすぎを防止【水分補給】

今回、回答を得た名医と健康のプロ11人のほとんどが、食前に限らず、ふだんから意識して水分を摂っていた。特に多かったのが起床後の水分補給だ。

「寝ている間も汗などで体から水分が失われます。冬から春は室内の空気が乾いているため、粘膜も乾燥しています。粘膜に潤いが足りないと、ウイルスや細菌を排除する機能を持つ線毛や免疫組織の働きが低下し、風邪やインフルエンザにかかりやすくなります。

それを防ぐためにも、朝はコップ1杯程度の水を飲みましょう。朝は低体温なので、人肌から50℃くらいに温めた白湯に、しょうがやスパイス類など体を温める作用の食材をちょい足しするといいでしょう」(石原さん)

「すりおろしたしょうがに、シナモンなどのスパイスをちょい足しすると、さらに温まりますよ」(石原さん)
「すりおろしたしょうがに、シナモンなどのスパイスをちょい足しすると、さらに温まりますよ」(石原さん)(写真/marucyan/PIXTA)
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介護福祉士で薬剤師の吉田三和子さんは、気温に合わせて飲むものを変えているという。

「寒い時期は体を温める作用のある黒烏龍茶を、常温で50〜100ml飲むことが多いです」(吉田さん)

朝だけでなく、「食事前には必ず水を飲む」と言うのは、管理栄養士の望月理恵子さんだ。

「食事30分前に、白湯または炭酸水をコップ2杯ほど(500ml)飲みます。これで胃腸管に水がたまって胃がふくれるため、満腹感を得やすくなり、食べすぎ防止につながります」(望月さん)

軽い運動で代謝を上げ、食欲を抑える【運動、ストレッチ、マッサージをする】

「食事前に軽めのランニングやウオーキングなどの有酸素運動を行うことで、食欲を抑えられる」と循環器専門医の大塚亮さんは言う。

「食前の血糖値が低い状態で運動をすると、脂肪が燃焼しやすく、効果が長続きします。運動をすることで交感神経が優位になり、食欲も抑えられます」(大塚さん)

管理栄養士の浜本千恵さんは「家の中で簡単な運動をしている」と言う。

「お腹があまりすいていないときは、代謝を上げるために好きなYouTuberの動画を見ながら、ストレッチや足踏みなど簡単な運動を5分ほどしてから食事をするようにします」(浜本さん)

「朝食前に30分程度、ランニングかウオーキングを行えば、脂肪が燃焼しやすい体になります」(大塚さん)
「朝食前に30分程度、ランニングかウオーキングを行えば、脂肪が燃焼しやすい体になります」(大塚さん)(写真/ペイレスイメージズ1(モデル)/PIXTA)
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夕食前に逆立ちをすると言うのは山形さんだ。

「逆立ちをすると下がり気味の腸が正しい位置になり、腸の負担を軽減できて、消化を助けます」(山形さん)

病気予防には、食前の歯磨きが正解【うがい、歯磨き】

朝食前に必ず歯磨きやうがいをするのは浜本さん。

「起きたら、水を飲む前に軽く歯を磨き、ぶくぶくうがいをします。寝ている間に増えた雑菌を洗い流せて、虫歯や歯周病を予防できます」(浜本さん)

医学博士の福田千晶さんは「歯磨きの際は、舌についた汚れも落としてほしい」と言う。

「舌の汚れにも雑菌が潜んでいます。専用ブラシか柔らかめのブラシで舌を3〜4回なぞって汚れをかき出しています」(福田さん)

「食前は歯磨き粉をつけずに、歯ブラシで軽く磨くだけでも口内の汚れは落ちます」(福田さん)
「食前は歯磨き粉をつけずに、歯ブラシで軽く磨くだけでも口内の汚れは落ちます」(福田さん)(写真/polkadot/PIXTA)
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唾液の分泌を促し、消化の手助けをする【ガムを噛む】

「食事前にガムを噛んでおくと空腹感を抑えられる」と望月さんは言う。

「ガムをよく噛むことで満腹中枢が刺激され、満腹感を得やすくなります。咀嚼回数が増えると唾液分泌につながり、消化のサポートや血糖値の急上昇を抑えることもできます」(望月さん)

味は好みのものを。

腹式呼吸を意識し、精神を落ち着かせる【深呼吸、瞑想をする】

神経内科医の米山公啓さんは、仕事後に帰宅し、夕食をとる前に軽い瞑想と深呼吸を取り入れることにしている。

「私は家に帰っても、すぐに食事をすることはありません。仕事モードから帰ってきてすぐは心拍数が上がっていて緊張状態が続いています。それでは食事を楽しめず、精神的にもよくありません。そこで私は、目を閉じて大きく深呼吸を行い、リラックスモードに切り替える時間を10分ほど作るようにしています」(米山さん)

「深呼吸は消化吸収を促し、消化不良の予防につながります」(望月さん)
「深呼吸は消化吸収を促し、消化不良の予防につながります」(望月さん)(写真/foly/PIXTA)
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食前に飲むと血糖値の上昇がゆるやかに【野菜ジュースを飲む】

野菜不足を補うために野菜ジュースを飲むといいと言うのは石原さん。

「白米を食べる30分前に野菜ジュースを飲むと、食後の血糖値を抑えられるという研究データ(上グラフ)があります」(石原さん)

望月さんはさらにヨーグルトを加えている。

「無糖の野菜ジュース1パック(200ml)とヨーグルト50gを摂ると、ジュースに含まれる食物繊維とヨーグルトのたんぱく質の働きで血糖値の上昇が抑えられます」(望月さん)

血糖値最大変化量の結果 
血糖値最大変化量の結果
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カロリーのあるものを少量口にし、満足感を出す【何かを口にひと口入れておく】

少量のおやつなどを口にするのもいいようだ。

「夕食前、お腹がすきすぎているときはチョコレートや黒糖などを1〜2粒口に入れます。少しだけ血糖値を上げることで満足感が出て、食べすぎを防ぎます」(石原さん)

内科医の左藤桂子さんは外食前のプロテイン摂取を欠かさない。

「プロテインは腹持ちもよく、ドカ食いを防げます。たんぱく質も摂れるので、栄養補充にもなります」(左藤さん)

「ゼリータイプのプロテインを持ち歩いて飲んでいます」(左藤さん)
「ゼリータイプのプロテインを持ち歩いて飲んでいます」(左藤さん)(写真/Naoki/PIXTA)
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熱めの温度で交感神経を優位にし、食欲を抑制【お風呂に入る】

意外にも、「食事前に入浴すると食べすぎを防止できる」と、松村さんは言う。

「目覚めをよくするため、朝食前に41℃のお湯に10分間つかります。熱めのお湯にすることで交感神経が優位になり、やる気が出るうえ、適度に食欲を抑えてくれるので、食べすぎ防止にもなります」(松村さん)

山形さんは夕食前に入浴すると言う。

「血流がよくなり、消化器官の働きが活発になります。入浴後は常温の水をコップ1杯飲み、代謝を高めています」(山形さん)

炭酸水などと割って、胃の動きをよくする【酢を飲む】

大塚さんは、炭酸水で割ったりんご酢を飲むのを続けていると話す。

「食前に飲むことで胃の動きがよくなり、糖の吸収を抑えてくれます」(大塚さん)

薬膳コンサルタントの阪口珠未さんも、食前酢の効果に期待する。

「薬膳では、開胃といって、食事の前に酢の物を食べて消化液の分泌を高めます。消化を高めつつ、食欲をコントロールしやすくなります」(阪口さん)

骨を丈夫にし、質のよい睡眠を促す【カーテンを開けて日光を浴びる】

朝食をとる前にカーテンを開け、10分ほど日光を浴びる、と言うのは大塚さんだ。

「日光を浴びることでビタミンDが形成され、骨も丈夫になります」(大塚さん)

山形さんも朝の日光を浴びることを大切にしている。

「背中でもいいので朝日を浴びます。体内時計が整うのか、エネルギーが上がりやすくなるのを感じます。特に朝の自然光にはセロトニン(幸せホルモン)の分泌を促す効果があり、夜の睡眠にも重要です」(山形さん)

「蛍光灯の光では効果がないので、曇りの日でも必ずカーテンを開け、日光を浴びましょう」(大塚さん)
「蛍光灯の光では効果がないので、曇りの日でも必ずカーテンを開け、日光を浴びましょう」(大塚さん)(写真/mits/PIXTA)
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※人物写真はすべてイメージ。

取材・文/廉屋友美乃

※女性セブン2025年3月27日・4月3日号