日本人女性の平均的な閉経年齢は50歳くらいだと言われているが、その前後5年間は「更年期」と呼ばれ、多くの女性がさまざまな不調を感じるようになる時期だ。
この時期に多くの女性が持つ悩みのうちのひとつに、「若い頃よりも痩せにくくなった」「少し食べすぎただけですぐに太ってしまう」という、いわゆる「更年期太り」がある。
最近体重が増えたのってもしかして更年期のせい…? もう歳だから年齢的に太ってしまうのは仕方ない、とあきらめている人は、「あんしん漢方(オンラインAI漢方)」の漢方食養生アドバイザー・管理栄養士の猪坂みなみさんが教える更年期太りへの対処法をチェック。
「以下のグラフのように、平成30年の『国民健康・栄養調査』によると、40歳以降の女性は、30代までと比較して、肥満者(BMI25以上)の割合が急に増加します。これは、閉経を前にホルモンバランスが変化することや、基礎代謝が落ちること、子育てや家庭環境の影響でイライラしやすくなり、自分の意志では過食をやめられなくなることなどが原因と言われています。そのため、30代までと同じダイエット方法ではうまく痩せられないのが更年期なのです。そんな更年期太りにお悩みのかたにおすすめなのが漢方です。健康的な食事や運動を毎日続けるのは苦手という場合も、医薬品として効果が認められた漢方薬なら、症状や体質に合ったものを毎日のむだけなので、手間なく気軽に継続できますよ」(猪坂さん)
生理周期が不順になってきた頃から、食事量は変わらないのにお腹にお肉がつきやすくなった、便秘がちになり体重が減りにくくなった、イライラによる過食がどうしても止められなくなった、などの症状があると、更年期のせいだと疑っていいという。
更年期太りを引き起こす原因と、自宅でできるセルフケアや根本から体質改善するための方法を知り、体重増加が進むのを食い止めるために役立てよう。以下、猪坂さんによる解説だ。
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更年期に入って痩せにくくなってきた…その原因は?
更年期には、エストロゲンという女性ホルモンの分泌量が減少します。エストロゲンは内臓脂肪を蓄積しにくくする働きを担っているため、このホルモンが減ることで、更年期は脂肪を蓄積しやすい状態になっています。それだけでなく、この年代は基礎代謝の低下や運動不足など、消費カロリーが減りやすい状態になってくるため、より太りやすい時期と言えます。
さらに、この時期に子供の反抗期や受験なども重なる人も多く、イライラが溜まりやすいため、ストレス解消のために過食がやめられず太ってしまう、というかたも多いです。
このように更年期は太りやすい要因がいくつも重なってしまうため、若い頃のように「食事を抜いて痩せる」「ランニングなどの有酸素運動で脂肪を燃やす」という方法だけでは、効率よく痩せることが難しくなります。
更年期太りを改善するためのおうちでできる3つの方法
更年期太りを改善するためには、若い頃のダイエット法とは違う更年期の女性に適したダイエット方法に取り組むのが有効です。
◆野菜たっぷりスープでお菓子の過食防止!
更年期はホルモンバランスの乱れの影響で脂肪蓄積しやすい状態にあるため、特にご飯やパン、麺類といった脂肪になりやすい糖質類の食べすぎに気をつけ、お菓子類、お酒などの量は控えて、カロリーオーバーを防止するようにしていきましょう。
30代までは多少食べすぎても、翌日の食事で調整すれば体重が戻っていたかもしれませんが、この方法は脂肪が蓄積しやすい状態になっている更年期太りには向きません。特にお菓子はハイカロリーなので、できるだけ控えたいところですね。
食欲が我慢できなくなったら、野菜たっぷりのスープでお腹を満たすのがおすすめです。ただし、スープなら何でもいいわけではありません。選び方を間違えると、逆にカロリーをとりすぎて太ってしまうことも。そこで、ダイエットに向くスープの種類と、オススメのちょい足し食材をご紹介します。
◆ダイエットに向くスープの種類
・ミネストローネ、コンソメスープ、味噌汁
◆ダイエットに向くスープのちょい足し食材
・しょうが、にんにく、唐辛子、大豆
コーンポタージュやクリームスープなどのドロッとしたスープは、高カロリーなものが多いので避けて、上記のようなサラサラとしたタイプのスープを選びましょう。
ちょい足し食材としておすすめなのは、脂肪燃焼作用が期待できるしょうがやにんにく、唐辛子、大豆などです。特に大豆に含まれる「大豆イソフラボン」は、更年期に減ってしまう女性ホルモンと似た働きをしてくれます。そのため、更年期太りに悩む女性は積極的に取り入れるのがおすすめですよ。じゃがいもやさつまいも、とうもろこしなどの糖質の多い食材は避け、玉ねぎやにんじん、ピーマン、ブロッコリー、小松菜などのお好きな野菜でスープを作ったら、これらの食材を足してみてくださいね。
また、塩分の摂りすぎはむくみにつながり、体重が落ちない原因になりますので、味付けを薄めにする、スープの量を少なめにして具材をたっぷり盛り付けるなど、塩分を控える工夫をしてみてください。
◆筋肉減少を防止!スキマ時間でおうちトレーニング
食べる量は変わっていないのに若い頃よりも太りやすくなったという人は、更年期の太りやすい状態と基礎代謝の低下が重なっているかもしれません。20代をすぎると少しずつ筋肉量が減っていき、70代では20代の頃の4割程度の筋肉量になってしまうと言われています。
何もしなくても消費されるエネルギーである基礎代謝は、筋肉量が多いほど高くなります。そのため、できるだけ筋肉の減少は防止していきたいですよね。特に30~50代の時期にあまり運動をしないと筋肉が急激に減少するリスクが高まると言われていますので、スキマ時間で実施できる筋トレに取り組んでみましょう。
◆家でできる手軽な筋トレ方法
【1】両手を、地面と平行にして前に差し出す。
【2】お尻を引いてしゃがむ。
【3】太ももに力を入れて、4秒かけて立ち上がる。
【4】膝を伸ばしきらずに、再度お尻を引いてしゃがむ。
このトレーニングを、1日に10回×週に3回実施できると理想的です。
適度な運動を取り入れると、血液循環がよくなり、自律神経のバランスも整うと言われています。自律神経の働きが弱いかたは体脂肪率が高めであるというデータもありますので、ホルモンバランスの乱れで自律神経が影響を受けてしまう更年期は特に、運動習慣をつけることが大切ですね。筋肉量を増やして基礎代謝も高め、更年期太りに負けない筋肉質な体を作っていきましょう。
◆漢方薬で更年期太りを改善
更年期太りの改善には、漢方もおすすめです。
漢方医学では、更年期には体内の血(血液)や水(リンパ液など)の巡りが悪くなることで余計なものが体内に溜まってしまい、体重が落ちにくくなると考えられています。このバランスの乱れを改善することで、根本的な解決(体質改善)を目指すのが漢方です。漢方は、便秘やむくみ、脂肪蓄積を生じにくい体質作りを目的としているのです。
手の込んだダイエット料理を作ったり定期的な運動をするのは苦手…というかたでも取り入れやすく、のむだけでいいという点も継続しやすいポイントです。更年期太りに適した漢方は、体質など人によって異なりますので、ご自身に適したものを取り入れるようにしてください。
更年期太りを解消したいかたにおすすめの漢方
・お腹がぽっこり出ている、便通が悪いかたへ
【防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)】
血流や水分代謝を促し、体全体の巡りを改善します。便や汗などで不要物を体外へ排出し、体を軽くします。脂質代謝機能を改善する効果が期待できるので、溜め込んでいる脂肪を減らすのに役立ちます。
・余分な水分が体内に溜まり、むくんでしまっているかたへ
【防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)】
水分循環を促し、余分な水を排泄させます。水太りの肥満症のかたによく使用されます。肥満に伴う関節の腫れや痛みにも有効です。
・ストレスで食欲が増してしまう、便通が悪いかたへ
【大柴胡湯(だいさいことう)】
気の巡りを促してストレスを低減させ、便通も改善します。体内の代謝のバランスを整えることで、脂肪燃焼をサポートします。高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛にも使用できます。
40歳を過ぎた頃から体重が徐々に増え、お腹の脂肪や便秘が気になってきた、という女性が「防風通聖散」をのみ始めたところ、1週間後には便通がよくなり、特別意識して運動を行ったわけでもないのに、2週間後に体重が0.5kg減っていたという事例もあります。
自分に合った漢方薬が知りたい、コスパよく漢方をのんでみたい、というかたには、AI(人工知能)と漢方のプロフェッショナルが症状に合った漢方を見つけ出し、効く漢方を自宅に届ける「オンラインAI漢方」などの、スマホで気軽に頼めるサービスもおすすめです。
具だくさん野菜スープとおうち筋トレ、漢方薬で更年期太り解消
更年期太りは、女性ホルモンの減少によって脂肪が蓄積しやすくなってしまうことや、基礎代謝の低下やイライラでどうしても止まらない過食などが原因と言われています。
また、漢方の考え方では、体内の血(血液)や水(リンパ液など)の巡りが悪くなることで、余計なものが体内に溜まり、体重が落ちにくくなると考えられています。
そのため、具だくさん野菜スープや筋肉減少防止のトレーニングで、食べすぎと運動不足を防止していきましょう。さらに、食事や運動を毎日頑張るのは難しいというかたや、自分なりに頑張っているのに結果が出ない…という場合は、のむだけでいい漢方薬で体質改善を目指すのもおすすめです。
更年期太りには、更年期ならではの対策が必要です。年齢のせいとあきらめず、できることから取り入れてみてくださいね。
教えてくれた人:猪坂みなみさん
いのさか・みなみ。漢方食養生アドバイザー・管理栄養士。ダイエットスクールの運営や、Webメディアを中心に健康・ダイエット情報、漢方の養生方法などの情報発信・執筆活動を行っている。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方) https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/
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