新型コロナウイルスの影響で、睡眠グッズが売れている――東京・銀座には8階建てのビル全フロアが寝室関連という睡眠専門店が9月にオープン。たくさん眠れるのはいいことだが、もし、いつも眠気を感じるのならば話は違ってくる。寝ても寝たりないなら、重病のサインであるかもしれない。体からのSOSを見逃さないで!
寒い時期のうつで眠気が
これから寒い時期になり、気分の落ち込みとともに強い眠気を感じるようになったら、「冬季うつ病」の疑いがある。睡眠専門医の坪田聡さんはこう語る。
「一般的なうつ病は不眠になりやすいのですが、主に秋口から冬にかけて起こる、季節性うつ病はそれとは反対に眠気を感じることも症状の1つです。冬は日照時間が短く、人間の体も動物の冬眠と同様の状態になることが原因ではないかと考えられています」
◆セロトニンやドーパミンの分泌が関係しているケースも
統合失調症や注意欠陥・多動性障害(ADHD)も、過眠の症状が出ることがある。
「これらの精神疾患や発達障害は脳内の神経伝達物質であり、覚醒を促す役割もあるセロトニンやドーパミンが分泌されなかったり、うまく働かなかったりすることで起きる。ドーパミンには集中力を上げ、やる気をもたらす効果もあるため、不足すれば頭がボーッとして眠気を感じ、過眠状態になることがある」
血糖値の急上昇で意識がぼんやり
高齢者であれば、眠気が重病のサインである可能性も。
「毎食後に耐えられないほどの急激な眠気を感じた場合は、『糖尿病』の疑いがあります。糖尿病を抱えていると、食後に血糖値が急上昇してインスリンが大量に分泌され、その後すぐに急降下して低血糖値に近い状態になり、意識がぼんやりして眠くなるのです」
頭部打撲は3か月注意を
眠気を感じるようになった1~2か月前に転んだり柱にぶつかったりして頭を打った経験がある場合は要注意だ。
「頭を打ったことすら忘れてしまう軽い打撲だとしても、1~2か月ほどかけて、頭の中でじわじわと出血が進み、血がたまって血腫となる『慢性硬膜下血腫』になる可能性がある。血腫が脳を圧迫した結果、歩行障害や認知症の症状に加え、眠気を感じるケースも。特に高齢者に多い疾患であるため、頭を打った場合は、3か月くらいは意識して体調を確認してほしい」
休日と平日の睡眠差は2時間以下に
不調や病気のサインとなる“不自然な眠気”を見逃さないためにも、普段から適切な睡眠を心掛けたい。すなおクリニック院長の内田直さんが解説する。
「まずは寝る時間と起きる時間を一定にし、毎日朝日を浴びて体内時計をリセットすること。食事時間も固定すると、さらに体内時計の周期が整いやすく、睡眠の質が上がります。アルコールは少量ならば寝つきがよくなりますが、飲む量に比例して眠りが浅くなるため、深酒は控えて。1日30分、少し息が上がるくらいの有酸素運動をすることも有効です。通勤の行き帰りで15分ずつ歩くなど、日常の中で実践してほしい」
これらの習慣と反対に避けるべきは“休日の寝だめ”だ。
「睡眠時間が一定でなければ、体内時計のリズムは大きく崩れてしまう。そもそも平日と休日で、睡眠時間に2時間以上の差があれば寝不足です。平日の睡眠時間を見直しましょう」(坪田さん)
◆机に突っ伏して10~20分の仮眠でチェックを
生活習慣を整え、質の高い睡眠を取るべく努力してもなお日中の眠気が続く場合、専門家に相談することが必要になる。坪田さんは「仮眠ができるかどうかがひとつの線引きになる」と語る。
「横にはならず、机に突っ伏したり背もたれにもたれて10~20分程度の仮眠を取ってみる。それでスッキリするようなら、それぞれの病気や不調においても軽い症状であることが多い。しかしそれでも眠気が取れず、日常に支障があれば、迷わず病院に行ってください。医師は、睡眠にまつわる病気を専門に扱う『日本睡眠学会』に所属する専門医の中から選ぶのがいいでしょう」
眠気は体からの静かなSOSかもしれない――。
※女性セブン2020年10月15日号