期待と不安が入り混じる春は、気持ちも疲れがち。そんな時期は、旅でも意識して内省の時間を持ち、心身のバランスを整えましょう。そこで、旅行ジャーナリストの村田和子が、ココロが喜ぶアートな箱根の休日をご紹介。
今回、注目するのは、自然豊かで美術館が多く、身を置くと心地よい幸せオーラに包まれまる箱根・仙石原。温泉旅館「星野リゾート 界 仙石原」は、見て、触れて、食して、五感でアートを味わえるアトリエ温泉旅館。芸術はココロの栄養となり、日常と違う刺激は新たな行動を後押ししてくれます。

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世界のアーティストの感性に触れ感じる~箱根・仙石原の魅力
「星野リゾート 界 仙石原」の館内は、スロベニア、イタリア、ドイツ、中国など海外を含めた12名のアーティストの作品が彩り、まるで美術館のよう。

これらは2018年の旅館開業を前に実施された、アーティストインレジデンス箱根仙石原で描かれた作品たち。アーティストインレジデンスとは、滞在費など創作環境のサポートをすることで、その地で感じたインスピレーションが作品として生み出される、芸術の発展のための取り組みです。

◆自由に使える約2000本の色鉛筆で創作にチャレンジ
フロント横には、絵の具の原料がグラデーションを作り出す印象的な空間「アトリエライブラリー」が。アートや建築の書籍を手にしたり、自由に使える約2000本の色鉛筆で、創作にチャレンジするのもよさそうです。



自然のアート絶景を、さまざまなシチュエーションで楽しむ
客室に入るとまず目に飛び込んでくるのが、自然が織り成すアート。高台からの見事なパノラマに気持ちが踊ります。

広めのテラスにはお洒落なイスが配されており、深呼吸をして森林の香りを胸いっぱいに取り入れるのもよし、窓が大きくとられているので琉球畳に配されたソファでお茶をしながらのんびり眺めるのもいいでしょう。


◆温泉露天風呂に入りながら絶景を楽しむ
究極の楽しみ方は、客室にある温泉露天風呂に入りながら眺めること。このシチュエーション、日本人にとっては、たまりません!



客室は、外の景色やアート作品が映えるようにあえてシンプルに。客室キーやガラスのランプシェードなども、洗練されたデザインで目を引きます。


何もせず、この空間でのんびりとお茶でもしながらゆったり過ごしたい……そんな気持ちにかられつつ、無料で楽しめるアクティビティがあるとのことで、アトリエライブラリーへ。
アートを体験。世界でひとつの「てぬぐい作り」
星野リゾートの温泉旅館「界」では、その土地の伝統や文化を楽しむご当地楽(ごとうちがく)があります。「界 仙石原」では、型染作家の小倉充子さんがデザインした「てぬぐいの絵付け(無料)」が体験できます。


宿場町や箱根の名物をデザインしたもの、野鳥や草花をあしらったものなど、数種類のデザインから好みを選んで、布クレヨンや布用のペンで色をつけていきます。

コロナで疲れた気持ちを元気にしてくれるアクティビティで、出来上がった作品は、思い出の詰まったすてきなお土産になります。
プレゼンテーションにも注目したい特別会席
夕食は半個室の食事処で頂く会席料理。アートな宿ならではのプレゼンテーションにも注目です。

先附の「サーモンの瞬間燻製」は、ガラスの蓋を開けるとスモークが広がる演出。これは箱根・大涌谷をイメージしているそう。


メインの山海石焼は、白と黒の2種類の石が運ばれ、白い石で山の幸である牛肉を、海の恵みは黒い石で焼いていただきます。


どれも驚きがあり美味。〆の食事が運ばれたときには、「もうお腹いっぱい!」と思ったのですが、土鍋の蓋を開けるといい香り。

西京焼きにした鰆、竹の子に木の芽が添えられています。少しだけと手を伸ばしたら最後、おいしすぎておかわりを頂いてしまうほど。
◆地酒の飲み比べセットも
客室へ戻ると、お願いしてあった地酒の飲み比べセットが運ばれてきました。

「かくかくしかじか」など、ネーミングも個性的な3つのお酒は地元の瀬戸酒造店のもので、頂く酒器も岡野里香さんの作品。

アート三昧の楽しい1日を振り返り、ご機嫌に眠りへとつきます。
翌日は雨。でも、美術館ならノープロブレム
目覚めると昨日とはうってかわり嵐のような天候。でも、がっかりすることはありません。客室からは水墨画のような景色が広がり、これはこれでいい感じです。予定していた朝の散策は取りやめ、朝食を頂いたら、もう一度温泉を楽しむことに。


◆約1万点のコレクションがある『ポーラ美術館』
宿をあとにして、スタッフのリコメンドだという『ポーラ美術館』へ向かいます。

初めて訪れましたが、作品はもちろん、建築など空間も見ごたえ十分! 時間をたっぷりとって、ゆっくり味わいたい美術館です。


モネやルノワールなど日本随一の印象派のコレクションが有名ですが、ほかにも日本の絵画をはじめ、現代アート、東洋陶磁、ガラス工芸など、そのコレクションは約1万点にものぼるそう。

定期的に展示の入れ替えが行われるので、いつ訪れても新鮮な作品との出会いが楽しめます。

◆「パレット」という名のデザートに注目
もうひとつのお目当てだったのが、ポーラ美術館内にある「レストラン アレイ」。

開催中の展示会にちなんだコース料理が評判なのですが、今回は朝食をしっかり頂いたあと。そこで、デザートを注文することに。

運ばれてきた「パレット」という名のデザートは、パレットに見立てたお皿に、色とりどりのスイーツが並びフォトジェニック。食べるのがもったいないほど美しい1品です。

また、ポーラ美術館には、彫刻を愛でながら自然の中を散策できる遊歩道が整備されています。こちらも楽しみにしていたのですが、雨足が強くなり、次回リベンジすることに。

アートに加え、美味しい食事に温泉と、心の栄養をたっぷりと補給した1泊2日のアート旅。コロナで日常はまだ大変だけれど、「明日からがんばろう」という力が湧いてきます。

仙石原には、他にもすてきな美術館がたくさんあるので、美術館めぐりをしてみるのもおすすめです。また、「界 仙石原」では、期間限定でアーティストと行う体験「手業のひととき」も開催。直接作家と交流し、作品を作る貴重な機会ですので、気になる方はチェックしてみてはいかが?
【DATA】
■「星野リゾート 界 仙石原」

住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原817-359
アクセス:新宿箱根高速バスで120分 台ヶ岳バス停下車徒歩5分、箱根登山鉄道強羅駅よりタクシーで約15分
料金: 1泊2食付き2名1室/1名4万1000円(サ・税込)~
https://kai-ryokan.jp/sengokuhara/
■アート体験「手業のひととき」
「界 仙石原」の客室アートを手掛けた作家の1人、鈴木泰人氏とプライベートで行う本格的な体験。仙石原周辺を散策し、豊かな自然からインスピレーションをえて作品を製作する。
期間:6月30日(水)までの火、木曜日
料金:1万円(宿泊費別)
https://www.hoshinoresorts.com/sp/tewaza/

■「ポーラ美術館」

アクセス:箱根登山バス(もしくは施設めぐりバス)「ポーラ美術館」下車すぐ
入館料:大人/1800円
https://www.polamuseum.or.jp/
教えてくれたのは:旅行ジャーナリスト・村田和子さん

旅行ジャーナリスト。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力を媒体で発信。宿のアドバイザー・講演なども行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド(R)」を提唱、著書に「旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社・2018)」。現在は50歳を迎え、子どもも大学生となり、人生100年時代を楽しむ旅を研究中。資格に総合旅行業務取扱管理者、1級販売士、クルーズアドバイザーなど。2016年よりNHKラジオ『Nらじ』月一レギュラー。トラベルナレッジ代表。(https://www.travel-k.com/)旅ブログも行っている。(http://www.murata-kazuko.com/)
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