健康・医療

「自分に自信が持てない」を改善して心を整える3つのステップ

自分は何をやってもダメだと思ってしまう。逆に、いくら人から褒められても、その言葉を素直に受け止められない――。このように、自分に自信を持つことができない人、また、それによって気持ちが不安定になってしまう人は、どうしたら今よりラクになれるのでしょうか。

イスに座り窓の外を眺め考え事をする女性
自信のなさ、不安な気持ちを解消するカギは「過去の記憶」と「記憶の可視化」(Ph/Getty Images)
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『あれこれ気にしすぎて疲れてしまう人へ 精神科医30年のドクターが教える傷ついた心の完全リセット術』(徳間書店)で、精神面の不安などを解消する方法を紹介した精神科医の清水栄司さんに教えていただきました。

過去の記憶を書き出してみる

清水さんは、今の自分に自信が持てない理由が過去のことに関係しているか、検討してみるようアドバイスします。

「自信が持てない原因が過去にあるようならば、その時の記憶を思い出す。それを淡々と書き出してみる。そしてその事実を、自分自身が満足できるシナリオに書き直す。このようにステップを踏んで記憶を書き直してみることをおすすめします」(清水さん・以下同)

もう少し具体的に聞いてみましょう。

「まずは、無理のない範囲で、自分に自信が持てなくなる前の自分を思い出してみてください。もし幼い頃のあなたが、天真爛漫で自信にありふれていたのなら、そうでなくなったのは、いつからなのか? そのきっかけとなった出来事は何なのか? 『自分に自信が持てない』というイメージは、どのような過去の場面につながっているのか? 子供の頃まで記憶をたどり、『自分はダメだ』と感じた過去の経験やエピソードを書き出してみましょう」

例えば、学生時代に受験に失敗したことが、「自信がなくなった」きっかけだった場合、当時の自分を一人称にして、主観的に、現在形で脚本(シナリオ)風に書くことです。

テーブルの上のノートパソコンを見ながら紙に書き込む女性
過去の記憶を掘り起こして、客観視することも方法のひとつ(Ph/Getty Images)
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《STEP1》

「私は、それまでは成績も学校のクラスの中では一番で、志望校合格も確実と言われていたのに、失敗して一切合切の自信を失っている。周りからはかわいそうな目で見られ、腫れ物に触るような扱いを受けたような気がしている。両親からもダメな子だとみられているように思えて、何をするにも意欲が持てなくなってしまっている」

次に、同じ出来事を、第三者が書くようにして、事実のみを淡々と客観的に現在形で書きます。

《STEP2》

「Aさんは、それまでは成績も学校のクラスの中では一番で、志望校合格も確実と言われていた。それが不合格となり、自信を失ってしまう。周りからも、気をつかわれているが、何をするにも意欲を持てなくなっている」

その次は、その事実を自分自身が満足できるシナリオに書き直すのです。例えば、《例2》のエピソードに、「大人になった現在の自分」を味方として登場させて、Aさんが前を向いて歩き出せるように、書いてみます。

《STEP3》

「Aさんは、それまでは成績も学校のクラスの中では一番で、志望校合格も確実と言われていた。それが不合格となり、自信を失ってしまっている。周りからも、気をつかわれているが、何をするにも意欲を持てなくなっている。そこに、大人になった現在の私が登場し、当時のAさんに対して、『一生懸命勉強したことは決して無駄にならない。また、君は第一志望校に入れなかったから、今ここにいて、新しい大事な友達に巡り会うことができたんだ、失敗は成功の母なのだ』と声をかける」

「過去の記憶を事実と思っていても、ネガティブな解釈で誤認している場合も多い。そこで、ポジティブな解釈を加えることで、そう思っていなかったとしても、物事のいい面を認識でき、脳にインプットされるようになるのです」と、清水さん。

「なお、『合格しないと意味がない』といった考え方は、『白黒思考、二分思考(二分法的思考)』です。これは優か劣か、善か悪か、あるいは全か無か(all or nothing)といった二つを対立的に考える思考です。自分が望む状況であれば肯定できるけれど、そうでなければ一切を否定するとなると、自己肯定感が下がり、自信を失いがちになります」

かの田中角栄は、次のような名言を残しています。

「世の中は、白と黒ばかりではない。敵と味方ばかりでもない。 その真ん中にグレーゾーンがあり、これが一番広い。(中略)真理は常に中間にある」

自分の望み通りでなくても意味がある。そう考えられるようになると、ラクになるでしょう。

「気分の揺れ」を点数にして記録してみる

気分が極端にハイテンションになるときと、激しく落ち込むローテーションになるときがたびたびある。そんなかたは、「気分の揺れ」があるからかもしれません。

清水さんは、「気分の揺れ」を自覚したうえで、次のように心がけることをすすめています。

自分の気持ちを可視化して行動をセーブ

「気分が一番ハイテンションのときをプラス100点、一番ローテーションのときをマイナス100点として、その都度、今の気分がプラス、マイナスのそれぞれ何点くらいなのかチェックします。その結果、プラスとマイナス、それぞれ80点を超えるようなテンションだと自覚したら、『今は危険区域だ』と判断して行動をセーブするのです」

歩道橋で外を眺める女性
気持ちの波を把握することで、行動もコントロールできるように(Ph/Getty Images)
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《ハイテンション時の記入例》
「今はプラス80点のハイテンション。ここを超えるとSNSで余計なことを書いてしまいそうなので、今日はもうスマホを触らずに就寝しよう」

《ローテーション時の記入例》
「今はマイナス80点のローテンション。これ以上落ち込まないためにも今日はもう仕事を終えて家でリラックスしよう」

「点数は、自分のフィーリングで設定してOKです。無理のない範囲で点数を記録して、自分の気分の波のペースを知り、行動を制限するようにしてみましょう。ダイエットでも、体重や食べた物を記録して可視化することで自然と暴飲暴食や運動不足に気をつけるようになりますよね。それと同様です」

気分の波をコントロールできるようになると、それによって招いていたトラブルも減り、副次的効果も期待できるといいます。結果、心がラクになるのです。

教えてくれたのは:精神科医・清水栄司さん

精神科医・清水栄司さん
精神科医・清水栄司さん
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千葉大学大学院医学研究院認知行動生理学教授、医学部附属病院認知行動療法センター長、子どものこころの発達教育研究センター長も務める。千葉大学医学部卒業。 千葉大学医学部附属病院精神神経科、プリンストン大学留学等を経て、現職。著書に『自分でできる認知行動療法 うつと不安の克服法』(星和書店)などがある。

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