女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。
第9回は「食欲の秋」について。
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秋になると、わが家は混ぜご飯が多くなる。かやくご飯、栗ご飯、鯛飯、ジューシーご飯、さつまいもご飯、豚肉と人参ご飯。なぜか、白米よりも回数が増えてくる。
そして、減るのが早い! 夫も息子も食べる、食べる。不思議だ。いろんな色が混ざり合い、美味しそうな匂いが食欲をそそるのか…。
もちろん私も大好きだ。子供の頃は、親によく栗拾いに連れていってもらった。大きなカゴをもらって、たくさんの栗の木の間を歩きながら、みつけて拾うのがすごく楽しかったのを覚えている。かごいっぱいになると子供心にも誇らしい気持ちになった。そして母が作ってくれる栗ご飯の美味しかったこと!
「食べて、焼いて」家族でくるくると
そして、わが家では庭での炭火焼き率が高くなる。これは、私が炭火焼きが好きだからだ。あれこれメニューを考えなくても、炭で焼くだけで野菜もお肉も本当に美味しい。
厚揚げも、炭で焼いて、ショウガの千切り醤油にちょっとつけて食べると絶品だ。牛肉も、豚肉も葉野菜に包んで食べると最高だし、鶏肉とネギの組み合わせも格別! 茄子もたまらない! そして、シメは焼きおにぎり! そこまでいかなくてお腹いっぱいになってしまうこともしょっちゅうですが…。
モチ(トイプードル・女の子)も、周りをチョロチョロしてしっぽをフリフリして「ちょっと、ちょっと」とおねだりしながら、お肉をもらえるのを待っている(笑)。
私が焼いていると、少し食べた夫が変わってくれ、その間に私が食べて、次は息子が焼いてとなんだかくるくるしている状況が面白くて私はけっこう好きだ。家族でくるくるしている感じをみていると、なんだかほっとする。
連日炭火焼きの日もよくある。お肉も野菜も、時々は貝やお魚も食べられて栄養バランスばっちりだと思いながら。手抜きの気持ちも多々ありますが…。
今はコロナで出来ないが、以前は家で炭火焼きをしていると近くに住む友人達がやってきたりして、ワイワイみんなで焼きながらおしゃべりして本当に楽しかった。
炭は最初に火をつけるのが大変そうだが、火おこし器を使うと、わりと簡単についてくれる。そして食べ終わったら火消し壺に炭をいれて蓋をしておけば、次に使うときも簡単に火がついてくれる。意外に手間がかからないのもありがたい。
虫の声を聞きながら庭で炭火焼きをすると感じるのは、秋の訪れとともにやはり「食欲の秋」である。
◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)
1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。