出棺のときにヤバくなった瞬間
通夜と告別式で、久しぶりに会う親戚の顔を見ると、ただうれしくてついつい長話になる。私もそうだけど、親戚のみんながちゃんと老けていていてね。そうか、これから私らも人生の後半戦で、やがては骨になるのよねって、それがすごくリアルに、自然に受け止められるんだわ。
だけどそんな私が、ヤバくなったのは出棺のとき。腰を曲げて杖にすがって参列してくれた母ちゃんと同世代の友だちが「とし江さ~ん、さよなら~」と、見送ってくれたのよ。同じ時代を生きた人の振り絞るような声がせつなくてね。今でも耳の奥に残って離れないのよ。
母ちゃんは最後までシモの世話をした私を、私が望むストレートな「ありがとう」と言う言葉でねぎらってくれなかったけど、自宅介護をする前の、眉間に深い縦じまを刻んだ顔であの世に送らなかったのは、私的によかったなと思っている。
◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
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