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保護猫を家に迎えるなら…「先に飼っている猫がいたら優先」など注意点

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保護猫を家に迎えるときの注意点とは?(Ph/AFLO)
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近年、猫を飼い始めるときにペットショップやブリーダーから買うのではなく、譲渡会で保護猫を迎える人が増えてきました。野良猫や捨て猫、虐待されていた猫を自治体や民間団体、個人が一時保護し、新たな飼い主を探す。そうやってレスキューされた猫たちが保護猫と呼ばれています。保護猫を家族に迎えるとき、健康面やメンタル面でどんなことに気を付けるべきでしょうか。獣医師の山本昌彦さんに聞きました。

まず健康チェック、特に感染症の検査は重要

保護猫を飼うときは、まず健康診断をすべきだと、山本さんは言います。

「野良猫や飼育崩壊の現場から保護された猫は、予防接種をちゃんと受けられていないケースが多いですし、すでに病気を抱えている子もいます。病気によっては人間や先住猫に伝染するものもあるので、自宅に連れ帰る前に病院で一通りの検査をすることが望ましいです。

例えば、猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)や猫白血病ウイルス感染症は他の猫に伝染する可能性があります。これらほど重い病気ではありませんが、猫ヘルペスウイルス感染症も猫から猫へうつります。ヒゼンダニによって起きる皮膚病の疥癬(かいせん)は人獣共通伝染病です」

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自宅に連れ帰る前に動物病院で一通りの検査を(ph/fotoco)
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ワクチン接種やウイルス検査などの相談も

動物病院で、獣医師が全身をチェックする診察と、血液検査、ウイルス検査を受けて、まずはその猫の健康状態について詳細に把握することが大切です。

「『この子は何歳ぐらいなので、ワクチンを次はいついつに打ちましょう』とか『ウイルス検査は今回陰性でしたが1か月後に再検査してみましょう』とか『先住猫と会わせるタイミングは次のワクチン接種後にするべきですね』とか、獣医師と相談して今後の病気予防のプランニングもしておきたいですね」

また、皮膚にノミが取りついていたり、体内に寄生虫がいたりすることもあるので、駆虫も飼い始めの頃に意識すべきことの一つです。

関係構築には時間がかかるものと心得る

容易に人間に心を開かない印象のある保護猫ですが、精神的なケアや心の距離感などは、どう考えて接していくべきなのでしょうか。山本さんは、「子猫の場合はあまり気にしなくて大丈夫」と話します。

「生後2~3か月ぐらいまでの子猫の場合は、親が野良だったり劣悪な飼育環境にいたりして、その子供というケースが多いですね。そういう子猫は、人間にひどいことをされた、人間が怖い、とは思っていないことが多いです。通常の子猫に接する態度で問題ありません」

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関係構築には時間がかかるもの(Ph/AFLO)
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一方、大人の保護猫は、人間に恐怖感や不信感を持っていることも多いのだそうです。

「どうしても人間との間に心の溝がある猫が多いので、そこを急激に無理に埋めるようなことはすべきではありません。過度に干渉しないで、焦らずに時間をかけて少しずつ距離を縮めていくのがいいですね。

特に猫は一般に、犬ほど人なつこくないので、2~3日でなんとかなると思わずに、それなりに時間のかかるものだと思っておいてください」

猫は人と仲良しの関係にはならない動物

獣医師であり、猫の飼い主でもある山本さんいわく「猫は、問題なく一緒に暮らせるようになっても、犬ほど分かりやすく人と仲良しの関係にはならない動物」だということです。

「もちろんフレンドリーな猫もいますが、そうでない猫もたくさんいます。うちの子も、お腹がすいたら近寄ってきますが、機嫌が悪いとどこかへ引っ込んだまま出てこなかったりします。ただ、するべきお世話をきちんとしていれば、猫も快適に暮らせて、ここは問題のない場所だ、安心できる場所だと分かってくると思います。安全・安心な生活のなかで信頼関係ができ上がっていくのです」

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