スマートフォンが普及しSNS全盛の時代を迎えた今、老若男女を問わず「知らない人に自分が何者かを伝える」機会が増えています。短いフレーズで、しかも自分が魅力的に映るように伝える……それが理想とはいえ、「そもそも自己アピールは苦手」という人は多いのではないでしょうか。1980〜1990年代のエンタメ事情に詳しいライターの田中稲さんは、「そんな時、アイドルの自己紹介ソングに学べることがある」といいます。田中さんが歴代の「自己紹介ソング」を分析します。
* * *
新しい出会い、新しい始まり。そんなときに必要なのが自己紹介、もしくはプロフィール文づくりである。私は、名刺交換するとき「薄い顔、薄い名字なのだから、印象に残らねば」とプラスワンを考える。そして「シェーのポーズで名刺を差し出してみようか……」、などという危険な思惑が毎回頭をよぎるのだ。したことはないが。
SNSでも自己紹介を書く欄は悩む! 必要な情報をサクッと分かりやすく、かつ親しみを持ってもらえるようアピールしたいという欲も乗っかり、短くまとめられない。結局「もう普通でいいや……」と真面目な内容で終わってしまうのである。きっとお悩みの方は多いはず、「プロフィール欄書くの難しい問題」!
しかし、モジモジしていては誰にも覚えてもらえない。ということで、エブリディ自己アピールを余儀なくされるアイドルたちの自己紹介ソングを集め、参考にしてみようではないか。
あなたのためだけに囁く倉沢淳美『プロフィール』
アイドル花の時代と呼ばれた80年代前半、伝説の自己紹介ソングとして知られているのが、倉沢淳美さんの『プロフィール』(1984年)である。倉沢さんは『欽ちゃんのどこまでやるの!』の三つ子の一人「かなえ」役で人気を博し、ソロデビューを果たした。
が、世の中にすっかり定着していた「かなえちゃん」イメージから、今度は素のキャラクターをしっかりアピールしなくてはいけない。この曲は、そのタイトルの通り、彼女のプロフィールを入れ込んでど真ん中勝負に出た感が清々しい。同時に、「16歳の倉沢淳美」が今聴いても鮮度たっぷりに解凍されるという嬉しい効果も!
「自分は普通の女の子」という内容のセリフから始まり、「そんな私は好きですか」と問いかける。畳みかけるように、誕生日を教えてくれる。そしてサビで「A・TSU・MI」と名を叫ぶ。なんと隙のない流れ!
なかでも秀逸なのは2番の歌詞。身長が1メートル56センチであることを明かし、「あなたとなら釣り合いそう」と歌うのである。そしてウッカリ、BWHまで言いそうになりながらも「まだ秘密」と止める。
聴いている人は完全に「ぜったいオレに向かってだけ紹介してくれてる!」という気分になったはず!