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【65歳オバ記者 介護のリアル】寝たきりだった母ちゃんを歩かせた凄腕ヘルパーOさんの話

母ちゃんを寝かせたままにしない…そして奇跡へ

Oさんは来れば「とし江さん、来ましたよ~」と、カラ~ンと明るい声で声をかけてからどんどん話しかけるのよ。話しかけながら、乾いたタオルを畳んで折って聖火トーチのようにしたら、先っぽに電気ポットの熱湯を注ぐ。半分くらい滲んできたら広げてホットタオルを作るんだわ。

これで母ちゃんの手や顔を拭くとサッパリするんだろうね。「ああ~っ」と包んだタオルから目を出すときの母ちゃんは本当に嬉しそう。それで、これだけは同居している間中、朝の儀式にしたの。

オバ記者の母親とOさん
Oさんによって歩けるまでに復活した
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Oさんは、私から見たらポータブルトイレに座るのがやっとの母ちゃんを、寝かせたままにしないの。「ちょっと座りましょうか?」と車椅子に座らせようとするのよ。1人で立てないからムリと、私は決めつけていたけどOさんに言わせると、「でもトイレには座るでしょ?」となる。トイレに座れたら車椅子にも座れるんだって。

とはいえ、彼女がつけていた日誌をみると、最初の頃は「車椅子に座りませんか?」と声かけても、「今はいい」「このままでいい」と母ちゃんに拒否されているんだよね。それでもあきらめずに来るたびに車椅子に誘っていたの。母ちゃんの脚が立つようになるまでは、寝ている人間を車椅子に移動させるのはさぞ力仕事だったろうにと思うと、本当に頭が下がるわよ。

オバ記者の母親とOさん
母ちゃんに拒否されてもどんどん声をかけるOさん
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大手の介護会社から20代初めの若いヘルパーさんもお願いしたけれど、マニュアルで学んだことを愛想よくちゃんとやってはくれるけれど、Oさんとは持っているスキルが違いすぎるわ。

なんたって、看取るはずの母ちゃんが退院から1か月半で、家の前を散歩するという奇跡を起こしたのは間違いなくOさんのお手柄よ。

◆ライター・オバ記者(野原広子)

オバ記者イラスト
オバ記者ことライターの野原広子
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1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。

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