ライター歴43年のベテラン、オバ記者こと野原広子(65歳)が、介護を経験して感じたリアルな日々を綴る。昨年、茨城の実家で母ちゃんを介護したオバ記者。その母ちゃんが3月に亡くなりました。ありし日の姿を思い出すことも多いといいますが、ふと目に浮かんだのは母ちゃんがいつも首に巻いていたスカーフのことでした。スカーフを巡る母との物語をオバ記者が綴ります。
* * *
「世話になったな」と言わなかった母ちゃん
痩せて青黒い顔をしていたときじゃなくて、家に帰ってきて、ちょっと太ってきて「あはは」と笑う顔をみんなに見せてからあの世に旅立たせてやれて、ほんとうによかった。
最近、ふとしたときに、去年の夏から冬にかけて茨城の自宅で母ちゃんと過ごした日々を思い出すんだけど、慰めになるのがこの写真だ。
母ちゃんからはただの一度も、「ヒロコ、世話になったな」としみじみとしたねぎらいの言葉はかけてもらわなかったけれど、私がスマホのカメラを向けるたびに見せたこの笑顔で、ヨシとするか!
「ここまで回復した人はまずいない」
母ちゃんが退院して数日の間に、あれよあれよという間に驚異的な回復をしたことについて、担当医のU医師はじめ訪問看護師さんたちが口々に同じことを言ってくれた。
「高齢者は病院から自宅に帰ってくると、ほとんどの人が元気になるけど、ここまで回復した人はまずいないですよ」
その言葉を何度も思い出しては、心の中で「母ちゃん、よかったな」と話しかけている私。
もちろん私だけの手柄でないことは言うまでもなくて、さくらがわ地域医療センターの医療チームの方々や、ケアマネジャーやヘルパーさん、訪問入浴サービスの人たちの総合力よ。
あと、顔を見せてくれるだけで母ちゃんを、“前と同じ、ふつうの暮らし“に戻してくれるご近所友だち。