気圧による気象病に備えた対策
気圧の影響を受けやすい人は耳の血行不良によって、内耳にある気圧を感じるセンサーが敏感になっていると考えられます。ですから、症状が現れるタイミングの前に血行をよくして、内耳のセンサーの感受性を下げることで、気象病の症状を和らげることができます。
「耳温熱」で耳の血行を促進
耳の血行をよくする方法はいくつかありますが、シンプルに耳を温める「耳温熱」なら手軽です。
やり方は、少し湿らせたハンドタオルを耐熱性のポリ袋になどに入れて電子レンジで1分ほど加熱して温めたものか、熱湯200mlと水100mlをホット専用のペットボトルに入れて混ぜ合わせたものを作り、交互に耳全体を温めます。このとき、耳の後ろに位置する「完骨」と言うツボにあてるとよく効きます。
漢方薬と酔い止め薬の組み合わせで対策
内耳の状態をよくする薬として、私が患者さんに処方しているのは、主に漢方薬の五苓散(ごれいさん)と抗めまい薬です。
全身の水分代謝を整える五苓散の作用によって、内耳の血行不良がよくなり、感受性に関わるむくみを解消する効果を得ることができます。抗めまい薬は、「めまい」が内耳に異常をきたす症状であることから、逆説的に投与することで気象病の症状の緩和に役立ちました。
一般的に抗めまい薬は市販品を買うことができませんが、乗り物酔いの症状は内耳の乱れからくるものなので、酔い止め薬で代用ができます。ただし、酔い止め薬も成分はさまざまですので、購入の際には内耳の血行を変えるものや、神経の過興奮を抑えるような成分が入っているものを薬剤師さんと相談しながら選んでください。
痛み止めをのんではいけないということではありませんが、長期間頭痛を放置していることで耳鳴りやめまいなどのさまざまな症状が起こる「脳過敏症候群」に進行してしまう可能性もあるので、鎮痛剤だけに頼らず、根本的な治療をするようにしましょう。
◆教えてくれたのは:天気痛ドクター・医学博士・佐藤純さん
日本慢性疼学会認定専門医。中部大学生命健康科学研究科教授。愛知医科大学客員教授。1983年に東海大学医学部を卒業後、名古屋大学大学院での研究、米ノースカロライナ大学での留学や名古屋大学教授を経て、2005年より愛知医科大学病院・いたみセンターで日本初の「気象病外来・天気痛外来」を開設。30年以上にわたり、気象と痛み、自律神経との関係を研究。2020年にウェザーニューズと共同開発したアプリ「天気痛予報」をリリース。メディア出演も多数。著書に『1万人を治療した天気痛ドクターが教える「天気が悪いと調子が悪い」を自分で治す本』(アスコム)など。https://www.tenkitsu-dr.com/doctor/