十分に睡眠をとっても「寝足りない」と感じたり、日中に耐え難い眠気を感じたりする「過眠」は、季節性うつが原因かもしれません。多くの場合、症状は春ごろに自然と解消されますが、悪化するとうつ病になる可能性もあるので注意が必要です。漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんは、秋の過眠には生活習慣の見直しが有効だと言います。そこで、意識したい行動や取り入れたい食材、おすすめの漢方薬について教えてもらいました。
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秋は過眠になりやすい! その理由とは
秋には、季節性うつの1つである「秋うつ」になる人がいます。十分な時間寝ているつもりでも寝覚めが悪い、日中に眠くなるなどの過眠は秋うつの症状として挙げられます。そのような症状が起こる原因は、主に自律神経が乱れやすくなることとセロトニンの分泌量が減少することにあります。
自律神経の乱れ
秋うつによる過眠の原因の1つは、交感神経と副交感神経からなる自律神経のバランスが偏ることによって起きる睡眠リズムの乱れです。
秋特有の朝晩と日中の寒暖差、台風・雨などによる短期間での気圧や湿度の変化に順応できないと、自律神経のバランスに偏りが出ます。夏の暑さによる疲れや胃腸の不調を引きずっていると、より強く環境の変化に影響を受けやすくなります。
セロトニン分泌量の減少
日照時間の減少も秋の過眠の原因になります。それは、神経伝達物質のセロトニンが日光に当たることで合成されるからです。セロトニンは体内時計を司るメラトニンの材料のため、セロトニン不足が体内時計を狂わせやすくするのです。
秋の過眠を改善するセルフケア
セロトニンは日光に当たる以外にも、リズム運動をすると分泌されます。リズム運動とは一定のリズムで体を動かすことを指し、日常生活では呼吸や歩行、咀嚼(そしゃく)などが当てはまります。以下では歩行と咀嚼について詳しく解説します。
歩行
一定の間隔で手足を動かす歩行は、代表的なリズム運動です。
セロトニンは運動を始めてから5分程度で分泌が始まり、20~30分でピークを迎えます。通勤や移動など、ある程度まとまった時間を歩き続けると、セロトニン分泌が盛んになるのです。
咀嚼
食べ物を噛む咀嚼もリズム運動です。リズム運動は集中して行うことで、効率的にセロトニンの分泌を促すことができます。そのためテレビやスマートフォンをオフにして、ゆっくり味わって食事をすることがセロトニン分泌においても効果的です。毎食でなくてもよいので、食事をゆったりと楽しむ時間をできるだけ確保するようにしましょう。