急激に足つりが起こる「こむら返り」。漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんは、繰り返すこむら返りは不調のあらわれで、生活の見直しが必要だと言います。そこで、こむら返りの予防に有効な習慣や食材、おすすめの漢方薬を教えてもらいました。
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こむら返りの原因
こむら返りとは、ふくらはぎの筋肉の一部が異常に収縮した状態のことを指し、強い痛みを伴います。主な原因は、神経伝達にかかわるミネラルバランスの崩れや、血流の悪化です。
腰椎椎間板ヘルニアや糖尿病、動脈硬化などの病気が隠れている場合もありますが、ほとんどは一時的な脱水、筋力の低下、疲労、柔軟性の低下などが引き金になります。
秋冬の「冷え」もこむら返りの要因
秋冬の寒さもこむら返りを引き起こす要因の1つです。
冷えにより血管が収縮することで血流が滞り、ふくらはぎに十分な血液が届かなくなると、ミネラルのバランスが偏りやすくなるため、こむら返りが起こるリスクが高まります。
このような血流の悪化やミネラルバランスの偏りが続くと、全身の臓器や神経伝達機能に支障をきたす可能性があります。こむら返りが起きたときは、生活を見直すタイミングです。
こむら返り予防のために気をつけたいこと
病気が原因でなければ、こむら返りは生活習慣の見直しで予防できます。気をつけたいポイントをチェックしてみましょう。
3食しっかり食べる
ダイエットや生活リズムの影響で「朝食を食べない」「夕食はおかずだけ」という食生活をしていると、ミネラルを確保しづらくなります。
栄養素は単体では働かず、チームで力を発揮するため、サプリメントなどよりも、さまざまな栄養素を含んだ食事から摂るのが理想です。
また、食事は水分摂取の機会でもあるため、3食食べることで脱水も起こりづらくなります。
こまめに歩く
日常的に座って過ごす場面が多い、歩く機会が少ないという人は、筋肉の収縮と弛緩が行われにくいため、緊張しやすくなり、こむら返りを起こしやすくなります。
家事や通勤、散歩など日頃から歩く習慣をつけたり、座る時間が多ければ1時間に1回程度は立ち上がったりするなど、動く機会を増やしましょう。
こむら返り予防に効果的な栄養素と食材
こむら返りを予防する際、注目したい栄養素はマグネシウムです。マグネシウムは、筋肉の収縮や神経伝達にかかわるカルシウムとカリウムを調整する働きがあります。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、30~64歳女性のマグネシウム摂取推奨量が290mgなのに対し、30~60代女性のマグネシウム平均摂取量は232mgです(令和元年国民健康・栄養調査)。
日本人女性は慢性的にマグネシウムが不足している心配があるので、食材から積極的に取り入れてみてください。
ほうれんそう
寒風に当たると甘味が増すほうれんそうは冬が旬です。茹でたほうれんそう小鉢1つ分(80g)で32mgのマグネシウムが摂れます(文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」)
購入する際は、葉の緑が濃いもの、根が大きく、赤みが強いものを選ぶようにしましょう。すぐに使わない場合はポリ袋に入れ、立てて冷蔵保存すると鮮度を保ちやすくなります。
ホタテ
ホタテの旬は夏と冬で、冬は卵が大きくなりおいしい時期です。ホタテのむき身1つ(100g)で59mgのマグネシウムが摂れます(同)。
ホタテは刺身やバターソテー、チャウダーなど幅広い調理法で楽しむことができます。もちろん、使いやすい冷凍のベビーホタテや缶詰の水煮缶を利用してもいいです。
青のり
100gの青のりにはマグネシウムが1400mg含まれています(同)。青のりは1回の使用量が少ないので、使用頻度を高めることで効率的にマグネシウムを摂取できます。
みそ汁や納豆にふりかける「ちょい足し」のほか、和え物や炒め物に加えると彩りにもなります。フライドポテトやかき揚げなどの揚げ物とも好相性です。