ビールを注ぐなら『ビタースウィート・サンバ』の鼻歌を
ビールは、鼻歌とも滅法相性がいい。みなさん、ビールをコップに注ぐとき、思わず「フンフンフン……♪」と自然に鼻息がメロディ&リズムを奏でやしないだろうか。私はする!
そういった意味でお見事なのがサントリー『金麦』のCMだ。『ビタースウィート・サンバ(Bittersweet Samba)』をチョイスするとは! この曲は、ハーブ・アルパート&ザ・ティファナ・ブラス(Herb Alpert’s Tijuana Brass)によるインストルメンタル。
「ダー、ダラッダ、ダッダラダー、ダッダラ♪」
この浮足立ったサンバのリズムが、ビールのプチプチという炭酸&のどごしのよさと恐ろしいほどマッチングする。多分、タイトルが「ビタースウィート」というからには、きっと甘いお菓子をイメージしていると思うのだが、私はもう「ビールのために作った楽曲」と、作曲者の意図を勝手にすり替えている。
この曲は、ニッポン放送のラジオ放送『オールナイト・ニッポン』(今年55周年!)のテーマ曲としてもおなじみだ。2002年には、ニッポン放送の春のキャンペーンソングとして、この曲に歌詞がついた『bittersweet samba〜ニッポンの夜明け前〜』がリリースされていた。歌唱は、ダウンタウン(浜田雅功、松本人志)、ココリコ(遠藤章造、田中直樹)、間寛平、藤井隆、ロンドンブーツ1号2号(田村淳、田村亮)、山田花子、東野幸治、花紀京という当時のよしもとの看板芸人ドリームチーム、Re:Japanである。
この歌詞がまたいいのだ。ビールとは関係ない歌だが、ビールに合う! 「夜明け前」をキーワードに、これまでの失敗や後悔、焦りとトラウマが歌われる。でも今は変わる夜明け前。もうすぐ明日はやってくる——。クーッ、すいませんもう一杯だけおかわり。つまみは唐揚げで! ダー、ダラッダ、ダッダラダー、ダッダラ……(鼻歌)♪
ちなみに、ビールは太ると言われているが、あれはビールのせいではなく、つまみのせいなのだそうだ。ビールの炭酸は揚げ物と味の相性がいい。これがどうやらいけないようである。なるほど、つまみは枝豆にチェンジで……。健康に飲んでこその多幸感。ビールがもたらすアッパーな開放感は、ついつい心を全開にしてしまうから、ジョッキの数が知らぬ間に増えないよう注意だ。
ビールについての話題がわらしべ長者的にうつろいでしまったが、それもほろ酔いの楽しさ。ビールと相性のいい曲はたくさんある。その合いの手に「ぷっはー!」「くーっ! うまいッ」という感嘆のパーカッションが響けば、最高のビール・ハッピー・コラボレーションのできあがりだ。ぷっはー!
◆ライター・田中稲
1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka