野生パンダ保護の一環としてジャイアントパンダ繁殖を行っている上野動物園では、2021年6月に双子パンダのシャオシャオ(オス)とレイレイ(メス)が誕生しました。誕生から約2年で、一緒に生活していた母パンダのシンシンの元から離れて新しい放飼場での生活をスタート。双子パンダたちの親離れについてご紹介します。
2月から見られていた親離れの兆し
授乳と人工乳に加え、1歳半ほどになると竹もしっかりと食べられるようになっていたシャオシャオとレイレイの親離れの準備が始まったのは、1歳9か月になる2023年3月のこと。もともと単独で生活する動物のジャイアントパンダは、1歳半から2歳ごろに母親のもとを離れていくそうです。
上野動物園の同じ飼育室で暮らしていた母パンダのシンシンと双子パンダたちも、まさに1歳半をすぎてもうすぐ2歳という2月頃から、シンシンの態度に変化が見られたといいます。2頭に授乳を要求されたシンシンが避けるように移動したり、低いうなり声を出したりすることが増えたため、子に大きなケガを負わせてしまう可能性も考慮し、3月10日から親離れの準備が始まったそうです。
実際に、母パンダは攻撃的な態度を示して、子のひとり立ちを促すとも言われているため、シンシンにもそのような行動が見られたのだと考えられます。
4つのステップで親離れが完了!
上野動物園では双子パンダの誕生が初めてだったため、親離れの時期は慎重に判断したそうですが、先日中国に返還されたシャンシャンも2018年に親離れをしたそうです。
そのときと同じように、4つのステップで段階的に母親と離れて暮らす時間を長くしていき、3月19日に親離れが完了しました。
落ち着かない双子パンダと厳しい顔を見せる母パンダ
午前中だけシンシンと双子が別居するステップ1の段階では、シンシンがいない時間が短かったため、2頭にそれほど影響はなかったといいます。ステップ2では、午前・午後の別居、ステップ3では夜間のみ別居、ステップ4で完全別居となり、別々に過ごすようになりました。
ステップが進んでシンシンの居ない時間が長くなると、同居していたころからシンシンに積極的に絡むことが多かったシャオシャオは、鳴いて母親を探すような行動を見せたそうです。そんな2頭に我関せずの様子を見せていたレイレイも、室内や放飼場をうろつくような行動を見せるようになっていったといいます。
シンシンは、一緒に過ごしている時間も積極的に相手をせず、自らの採食を優先していたそうです。また、すぐに授乳を受け入れなかったり、途中で切り上げたりすることが多くなり、子育て優先ではなくなってきている様子から、順調に親離れが進んでいると判断されました。
シンシンの不在に落ち着かない様子を見せていた2頭も、次第にお互いに寄り添いながら、支え合うようにして以前のように採食や休息をするようになり、少しずつ新しい生活に慣れていったようです。
親離れして新しい場所での生活がスタート
親離れをしたあとの2頭は、以前にシンシンと過ごしたことのある室内展示3号室と初めて使用する屋外放飼場で生活することになりました。これまでと違う環境に、人の声や物音に怖がったり、放飼場に出て行かない可能性も考えられていましたが、3月20日に行われた初めての放飼では、シャオシャオが先陣をきってすぐに屋外に出ていき、マイペースなレイレイもそれについていくようにして出ていったそうです。
その後は2頭一緒に放飼場全体を探索し、モート(空堀)の下をのぞいたり、水を溜めたプールに入ったり、木に登ったりするなど、新しい場所を確認するようなさまざまな行動が観察されたといいます。なお、初日は短時間の放飼だったこともあって、採食や休息は見られなかったそうです。
少しずつ成獣に近づいている双子パンダ
翌日以降は日に日に落ち着いて過ごすようになり、今ではレイレイは成獣と同じように採食や休息をするようになったといいます。シャオシャオはしばらくの間、レイレイのそばでレイレイの行動に触発されるように採食や休息をしていたそうですが、ここ最近は少しずつ単独での行動も見られているようです。
シャオシャオとレイレイが支え合いながら、たくましく成長していく姿を、これからも見守って行きたいですね!