ライター歴45年を迎えたオバ記者こと野原広子(66歳)。昨年、介護をしていた母の死、自身の大病などを経験。そして最近は心臓にも不安を抱えるようになった。それでもライター稼業を続けるワケと、最近感じる自分の中での“優先順位”の変化とは――。
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「目の輝きが違う」と言われ…
「66歳というお年で今も現役で働いているなんてすばらしいことです。なかなかできることではないです」
先日、訪ねた鍼灸院でこう言われたの。女性鍼灸師のHさんは40代になったばかり。「すごいです」とまじまじと私を見るんだわ。「たいがいの人はもう仕事をセーブしているか、引退している人だっているじゃないですか。比べるわけではないけれど、ふつうの66歳の女性と野原さんは目の輝きがまったく違うんですよね」と言うのを、うつぶせになって脚から背中にかけて鍼を打たれながら心地よく聞いていた私。
昨秋にお腹をタテに20cm以上切る大手術をして、自分に健康に自信が持てない身にはこんなにうれしい言葉はないもの。
と同時に、その夜、考えちゃったの。そうか。66歳ってそういう年か。そりゃそうだよね。60歳で定年退職した人は、それからもう6年もたっているんだもの。今月はいくら稼いだかと、夜ふけにスマホで銀行口座を眺めたりしていないよなぁ、と。
経済的な理由で「引退」はない
「てか、いままで世間の同年代の暮らしぶりを考えなかったほうがどうかしているよ」という声も聞こえないではないけれど、ぶっちゃけちゃうと私の場合、経済的な理由で、「引退」という選択はない。「働いて来月の家賃ほか生活費を稼ぐ」一択なの。それに長くこういう生活をしていると、「生活に追われている=年をとれない、とらない」という思考になるんだね。勘違いといえば、これ以上の勘違いもないんじゃないか。
「仕事優先」。若い頃から耳にタコができるほど聞いてきた週刊誌記者の心得えよ。私がライターになった45年前は「ま、ずっとこの仕事をしたいなら親の死に目には合えない覚悟をしないとな」と昭和ヒトケタの先輩ライターに言われたもの。