健康・医療

「夏の冷え」、運動不足も原因に 女性に冷えが多い理由と対策を医師が教える

女性の冷え
女性に多い「夏の冷え」原因と対策を医師が解説(Ph/イメージマート)
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夏季は暑さが続くため「冷え症」とは縁遠いように思われますが、実は体の冷えに注意しなければいけない季節です。特に女性は冷えやすい体質になりがちなので、意識して改善していきたいところです。夏の冷え症について、医学博士の高尾美穂さんに聞きました。

夏は体を冷やす罠だらけ

「冷え症」の人は、同じ環境でほかの人が寒さを感じない温度なのに、手や足の先が冷たく感じる症状です。

「冷え症の人はさまざまな原因によって血液の流れが悪くなり、血管が収縮し、毛細血管へ温かい血液が流れず、手足などが冷えてしまいます」(高尾さん・以下同)

暑い夏はつい冷たい飲み物やアイスクリームを欲しますが、それでは体が冷えてしまいます。汗をかいた体で冷房に当れば、体の表面から一気に熱が奪われて、体内の血行が悪くなります。寝苦しいからと、冷房を下げたまま眠るのも、必要以上に体を冷やして汗腺や排泄器官の働きを鈍くする原因に。夏は体を冷やす“罠”が満載なのです。

アイスコーヒー
暑いからと体を冷やすことで逆に「冷え」が悪化してしまう(Ph/photoAC)
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男性とは筋肉量が違う

「女性の冷えの訴えは、30代以降のどの年代においても体調の悩みの上位に入ります。男性から冷えの悩みをあまり聞かないのは筋肉量の違いでしょう。そもそも熱を生産できる臓器は筋肉しかありません。筋肉量が多ければ、自力で体を温めることができるのです。

女性は男性に比べると筋肉量が少なく、汗をかくような運動も避けがちです。そうなると、筋肉が働けずに熱を生み出すことができません」

運動不足と自律神経の乱れが冷えを呼ぶ

筋肉量が少ないことや日常的にそこまで動かないことが、女性の冷えにつながっているのです。

「夏は外気温によって筋肉が温められるので、寒い時期と比べると可動域が維持されてけがをしにくく、運動のパフォーマンスは上がります。けれども、汗をかきたくない、日焼けが怖いと、冷えに悩む方ほど外でアクティブに活動しません。暑い時間帯を避けたり、日焼け対策をして定期的に体を動かすと、冷え症は改善していきます」

冷えの原因は筋肉量や運動量が少なく“自家発電”できないことと、もう1つ、大きな原因があると高尾さんは指摘します。

「夏は冷房の効いた部屋に入ることによる寒暖差で、自律神経が不安定になりがちです。自律神経には血管の太さを調節する役割があります。成人の血管を1本にして伸ばすと、10万kmもの長さになるといわれています。これは地球の2周半以上の長さです。自律神経は、その血管の働きを調整しているのです。

エアコン
寒暖差が自律神経の乱れを引き起こす(Ph/photoAC)
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血管を太くすれば温かい血液を体の端まで運びやすい状態になります。反対に、血管がいつも細くなっていると体温を末端まで運べないために冷えを感じます。

ただし、自律神経の働きだけで血流をコントロールしているわけではなく、筋肉が収縮したり弛緩したりして、ポンプのように血液を送っています。血行面からのアプローチとしても、運動はかかせません」