アマゾンの倉庫でバイトしたことも
ライターとして一生現役を想定している、といえば聞こえはいいけれど、前にここで書いた通り、30代から50代初めまでギャンブル依存症になって、まあ、死ぬまで働くしかない状況といったほうが正確だよね。それをとくに大変だとも思わなかったのは、生来ノンキ者で、行き当たりばったりの性格だったから。てか、年金暮らしの友人から「毎日、やることない。仕事をしているあなたがうらやましい」なんて言われると、心の中で「でしょ。一生働けることが最高の幸せだって」と大きくうなずいた私。
ところが60歳になる少し前から、高血圧とか心房細動とか、心臓系の不具合が出てきて、そのたびに病院に駆け込み、薬を処方してもらう。でも、だからといって働けないということはなくて、ライターの仕事が減ったときはアマゾンの倉庫で仕分けのバイトをしたり、ユニクロのバックヤードで働いたり、けっこうな肉体労働で帰りは口もきけなくなったけれど、でもまだ働ける。まだイケる。これは私の大きな自信になったんだよね。
頭がハッキリしているからライターができる
ところが昨年の今頃、お腹が急に膨らんできて、検診を受けたら「卵巣がんの疑い」。そりゃあ、がんになっても働けないことはないと思っても正直、お先真っ暗よ。幸い、手術の結果は卵巣がんではなくて、境界悪性腫瘍という良性とも悪性ともつかない診断。思わず医師に「ってことは切られ損ですか?」と悪たれをついてしまったわよ。そんなことでも言わないとやりきれなかったの。
まぁ、いずれにしても私は働いて、そのときの収入に応じてひとり暮らしを死ぬまで楽しむ。自分ではとてもシンプルで控えめなモットーと思っていたけれど、そうではなかったんだよね。みんな健康であってこそで、いったん病を得るとたちまち立ち往生よ。そんなわが身の頼りなさをしみじみと実感していたところに「入院をきっかけに認知症になる人もいるっていうから気を付けてね」ってさっきのA子の言葉。あのね~。
いずれにしても自分の頭がハッキリしていると思っているからライターをしていられるんで、ボケたら廃業だよ。とはいえ、前に話したことを初めてのことのように話し出すことは、たまにある。相手のちょっとした顔の表情を見て、「あ、これ、話したっけ?」と聞くと「聞いた」とスラッと返ってくる。まだ指摘してもらえるのね。これがうれしいんだわ。そのたびに、私はまだ大丈夫と胸をなでおろすんだよね。
◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
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