女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。第57回は、寧々さんが訪れた友人の別荘での出来事について。
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友達の別荘に女三人で行った。一年近く行ってないらしく、まずは掃除だね~と言いながら近くのスーパーに行き、とにかくワインやらチーズやらお菓子やら色々たくさん買い込む。飲む気満々だ! しばらく行ってなかったので、家までの道は草がぼうぼうで枝や葉っぱが車に当たりながらも、そろそろと進む。
懐かしい! 家にはそれぞれの匂いがあると思うのだが、その匂いが楽しかった時間を思い出させてくれる。女三人揃えば、やることが早い。特に何も言わなくても、すぐに黙々とそれぞれ分担して掃除を始める私達。窓を開け放して新鮮な空気を入れて掃除機をかけ、雑巾であちこち拭きいていくとどんどん綺麗になっていく。最強だなと思った。
そうこうしていると、友達が「ああ~!」と悲痛な声をあげている。どうしたどうした~と私達が行くと、冷蔵庫が壊れているという。コンセントも繋がってはいるし、ブレーカーも落ちていないが確かに冷蔵庫は静かに眠っていた。とりあえず買ってきた食材は、保冷バッグに入れられるだけ入れる。ふと、トイレは大丈夫かと心配になり聞くと、ダッシュで彼女はトイレに走った。トイレは無事に動いた。安心する私達。トイレが使えれば、後は何でも大丈夫だよ~と笑う。水も出るし!
友人が編んだアクリルスポンジが!
そして早々に冷蔵庫に入れなきゃいけないようなものは、とっとと飲んで食べようという事になり明るいうちから飲み始める。途中友達が野菜を炒めてくれたりしながら、とにかくずっと喋って飲んでいた。最高だ。
ふとお皿を洗おうとキッチンに行くと、食器を洗うスポンジが彼女が編んで作ったものだった。さすがだ! アクリル毛糸だから、すごくよく落ちるよ~という。彼女のこういうところは、本当に尊敬する。見習いたい。帰ったら私も作ってみようと思った。
少し涼しくなってくると、私はいわゆる家庭科は苦手なくせにいつも編み物を始めている。たいてい、適当に何を編んでもモチ(トイプードル・女の子)に取られて、モチのお布団がわりになるのだが…毛糸は、また解いて違うものを編めるのも楽しい。余計な事を考えずに、黙々と手を動かして編むのは心が落ち着いて嬉しい。そういえば、ちょっとイライラしたり、何か落ち込むようなことがあると私は編み物をしているかもしれない。もちろんそういう時ばかりではないが。
たまには、きちんと編み物教室でも通ってみようかと秋の青空を見ながら思うのだった。
◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)
1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。