健康・医療

医師が提案する「QOD(死の質)を高める」とは?死を意識することで何が変わるのか

白いスーツを着た男性
「QOD(死の質)を高める」ことをすすめている、医師の川嶋朗さん
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後悔のない生き方をするために知っておきたいのが「QOD(クオリティ・オブ・デス=死の質)」という考え方。『どうせ一度きりの人生だから 医師が教える後悔しない人生をおくるコツ』(アスコム)を上梓した、医師の川嶋朗さんは、QODの充実を目指すことが理想的な生き方につながると話す。いったいどういうことなのか、詳しく教えてもらった。

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理想的な生き方をするための「QOD」という考え方

「自分の理想的な死とは何か」を考えることは「QOD(クオリティ・オブ・デス=死の質)の充実」であるとし、川嶋さんは「QODの充実」を目指すことが、自分がこの先どう生きたいか考え、後悔なく生きることにつながると話す。

「死ぬ瞬間までいきいきと自分の理想的な生き方をし、残された家族に対する後悔もなく、最期も希望どおりの死をかなえることが理想的なのではないかと思い、QOD、つまり死の質を高めましょうということを提案しているのです」(川嶋さん・以下同)

人は死の危険に直面してようやく自分の死を意識する

多くの人は生きたい理由を真剣には考えず、生活習慣病リスクの高い生活を送り、やがて病気になる。病気は、このままではとても健康ではいられない、と体と心が発するSOSだ。

「それでも自分を正さず体や心をいたわらない人には『ここまで悪くならなければ、気づいてくれないのか!』と体が最後通牒をつきつけ、死を強く意識するがんのような重い病気を発症して、『このままでは、とても生きていられない! なんとかしてくれ!』と必死で訴えるのです」

死を意識すると自分のやりたいことを真剣に考える

しかし、がんのような重い病気は悪いことばかりでもないと川嶋さんは言う。死を意識すると、寿命を意識するためだ。寿命を意識すると、自分のやりたいことを真剣に考えることができ、その結果、やりたいことのためにどのくらい生きていたいかをちゃんと考えることができるようになるという。

考え事をする女性
寿命を意識すると自分のやりたいことを真剣に考えられる(Ph/photoAC)
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「そして、限りある時間を自分のやりたいことのために有効に使うには、健康でいることが大切だと思い、医療とのかかわり方をきちんと考えるようになるのです」

QODを高めるために予定寿命を想定する

「自分の目指す健康寿命をまっとうするためにはどうしたらいいのかを普段から考えておくことで、QOLも高まる」と川嶋さんは言う。健康なうちから自分の理想的な死に方について考え、そこまで健康に生きるために何をするべきかを考えることが大切なのだ。

「まずは予定寿命を決めてしまう。そうしたら、その日までの道のりを逆算してみる。そうすると、人生がより具体的になります」

QOD達成のためのリストを作る

仕事においては、期日までに仕事を終えたり目標を達成したりするために「To Doリスト」を作ることがある。それと同じように、QODを達成するためのリストを作ることを川嶋さんはすすめている。

ToDoリスト
やるべきことやできることを整理したToDoリストがあれば人生が充実する(Ph/photoAC)
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「『やるべきこと(HAVE TO DO)』『できること(BE ABLE TO DO)』『やりたいこと(WANT TO DO)』と整理していくと、行動が明確になり、人生が変わります」

家族と死について話し合う日を作る

大切な人に自分の理想の死に方や、最期のときの意思を伝える習慣をつけるため、家族と一緒に死について話し合う日を1年に一度設けることを川嶋さんはすすめている。家族の理想の死を知っていれば、それに向けた準備も進めておくことができる。

「誕生日でも大晦日でも、いつでも構いませんが、気が変わっても伝え忘れることがないように、毎年同じ日に話すようにするといいと思います」

エンディングノートを書く

また、「エンディングノート」を書くことも、「QODの充実」につながります。エンディングノートとは、遺産相続や延命治療の希望、介護などについての希望、家族への思いなどを書く人生の集大成ノート。あらかじめ自分の死について考え、ノートにまとめておくことで、自分はどの程度生きて、どのように死にたいのかを考え、周囲に対しても明確にしておくことができるという。

エンディングノート
エンディングノートを書くと周囲に対しても自分の意志を明確にできる(Ph/photoAC)
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「もしも、急性心不全で倒れて、『命が助かっても寝たきりになるくらいなら、延命治療はしないでほしい』という意思があったとしても、そのときには伝えることができません。家族にそのような決断をさせるのは酷です。だから、エンディングノートは家族のために、本人がやることなのです」

◆教えてくれたのは:医師・川嶋朗さん

かわしま・あきら。神奈川歯科大学大学院統合医療学講座特任教授。統合医療SDMクリニック院長。北海道大学医学部卒業後、東京女子医科大学入局。ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院などを経て2022年から現職。漢方などの代替、伝統医療を取り入れ、西洋近代医学と統合した医療を担う。著書に『どうせ一度きりの人生だから 医師が教える後悔しない人生をおくるコツ』(アスコム)など。https://drs-net.com/profile/

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