指先を押し合うだけで、複雑なヨガのポーズとほぼ同じ効果が得られるという「指だけヨガ」。体が硬い人やヨガ初心者、高齢者でも、場所を選ばず簡単に始められるのが魅力!
考案者のヨガ研究家・深堀真由美さんにやり方を教えてもらった。
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まずは、指と体の相関を知るところから。
【親指】のどの甲状腺に対応
のどの甲状腺は、新陳代謝を促すホルモンを分泌する。親指を押すと、この部分が刺激され、顔のたるみやむくみ、肌荒れの改善に。また、更年期障害など婦人科系の悩みには、親指の付け根を刺激するとよい。
【人さし指】首、肩、腕、胸、胃に対応
人さし指を押すと、首、肩、腕、胸、胃といった“上腹部”に刺激を与える。首や肩こりをはじめ、胃もたれ、胃炎、二日酔いなどにも効果的。
【中指】脳から背中に対応
中指は脳から背中に対応しており、中枢神経や自律神経に影響をおよぼす。ここに圧を加えると、睡眠障害やイライラ、集中力の衰えを改善する。
【薬指】小腸、大腸に対応
薬指は、小腸、大腸、腎臓、膀胱など、下腹部の臓器にかかわっているため、刺激すると、便秘や頻尿、下痢などに有効。免疫力を司る腸を強化できるので、さまざまな病気の予防にも。
【小指】足に対応
小指に圧を加えることで、下肢全般の不調を整える。特に、足の付け根(そけい部)にはリンパ節があり、水分や老廃物が溜まりやすいので、むくみやしびれ、ひざのだるさが気になるなら、小指を重点的に刺激するとよい。
指先に全身のエネルギーが集中
30年以上のヨガ指導歴を持つ深堀さんが、「深堀式指だけヨガ」を考案したのは13年前。複雑なヨガの動きを、子供から高齢者まで誰もができるようシンプルにできないかと考えたのが始まりだったという。
「発端は、“着替えもいらず、どこでもできる、手軽なヨガはないか”という、生徒さんの声。そこで、着目したのはヨガの始まりと終わりに必ず行う“合掌のポーズ”でした」
ヨガの考え方によると、手には全身のエネルギーが集められているという。最初に紹介した「指と体の相関」のように、それぞれの指は、体の各部位とつながっているからだ。
特に手と脳とのつながりは大きく、大脳の約3分の1は、手から伝わる情報処理のために使われているほど。
「指先の感覚の鋭さは驚異的です。目を閉じていても、温度や質感などが瞬時にわかりますよね。ヨガでは合掌のポーズをとり、感覚が鋭い指先の一点に意識を集中させることもあります。その理論をアレンジし、指だけに特化したヨガを考案したんです」
エネルギーは圧の高い所に集まる。指先を押して圧をかけ、エネルギーを集中させたら、丹田呼吸でそのエネルギーを全身に届ける、というのが指だけヨガの仕組みだ。
しかし、全身を使ったヨガのポーズと比べれば、指先を押すだけで同じ効果が得られるというのは、にわかに信じがたい。
「医師の協力のもと、血流量と心拍数を計測したことがあるのですが、指だけヨガを行った時の血流量は平時に比べて高く、心拍数もウオーキング時の数値に匹敵しました。つまり、指だけヨガをやることで、心臓が活発に動いていることがわかったのです」
指同士を押し合って生まれたエネルギーは、内臓や体の各部位をダイレクトに刺激する。そのため、全身を使ったポーズとほぼ同じ効果を得やすいのだという。
ポイントは丹田呼吸
指だけヨガは、指同士を押し合うだけなので、誰でもどこでもできて簡単だが、1つ重要なのが呼吸だという。
指先を押し、エネルギーを集中させても、呼吸がきちんとできていないと、エネルギーを全身へ届けられない。
深い呼吸はストレスなどでこわばった体をゆるめる効果がある。筋肉の緊張がとけると、脳もリラックスし、免疫力や自然治癒力が上がるという。
丹田呼吸をするだけで、汗が出やすくなり、代謝もアップ。太りにくい体質に変わる。深堀さん自身、便秘がちで風邪をひきやすい体質だったのが、丹田呼吸を意識したヨガを始め、症状が改善した。
ヨガにはさまざまな種類があるので、興味のあるヨガを試して自分に合うヨガを見つければよい。
ただし、高い温度と湿度のもとで行うヨガは、心臓への負担が大きく、深い呼吸がしづらいので、40~50代以上で初めてヨガを体験する人は気をつけよう。気分が悪くなったら休むことが大切だ。
いずれにせよ、どんなヨガでも、続けなければ効果は出ない。一般的なヨガをやってはみたものの体が硬くて挫折した人でも、指だけヨガならできるはず。30年後の元気を目指して、簡単な指だけヨガからチャレンジしてみては?