【増加するネズミ被害】都内だけで25万匹が生息、相談件数は10年前から倍増 2cm×2.5cmの隙間があれば屋内に侵入可能、壁まわりの物置やプランターが格好の隠れ場に

《毎日清掃 3〜4時》。客のいないガランとした店内に、大きな張り紙。その目の前で、真剣な表情の従業員がせわしなく動き回る──。
全国で約2000店舗を展開する牛丼チェーン最大手の「すき家」が、異物混入騒動で揺れている。
全店舗の一時閉店を経て4月4日に一部を除き営業を再開したものの、24時間営業を取りやめた。現在は午前3〜4時の1時間を、営業中には実施しづらい場所の清掃に充てている。
「すき家は食の安全や品質に一貫して責任を持つため、フランチャイズ化せず全店直営で運営しています。それだけに、信じ難い異物混入騒動と、その後のなかなか収束しない展開が世間に大きな衝撃を与えています」(全国紙経済部記者)
発端は1月下旬に遡る。
《味噌汁の中にねずみの死骸が混入していました。考えられません》
すき家鳥取南吉方店の利用者がインターネット上に、こんな口コミを投稿したのだ。そこには、みそ汁の中に5cmほどのネズミが丸ごと浮かんでいるグロテスクな写真が添えられていた。すぐにSNSで投稿が拡散されたが、あまりにショッキングな内容に「いくら何でもフェイク画像だろう」と思われていた。ところが3月22日、すき家はネズミ混入が事実であることを認めて謝罪した。
問題となったのが、ネズミがどのタイミングで混入したかだ。仮にみそ汁を作る鍋に入り込んでいたら、不特定多数の客がネズミを煮込んだ“ネズミ汁”を口にした可能性があるとして、利用者にとって重要な関心事となった。すき家で働く従業員が指摘する。
「みそ汁の提供には共通のマニュアルがあります。まず手作業でお椀にわかめとねぎ、油揚げなどの具材を入れて、そのお椀を重ねて冷蔵庫内に保管する。オーダーが入ると鍋から汁をおたまですくってお椀に注いで配膳します。
汁を注いだ後にふたを開けっぱなしにしていれば、ネズミが鍋に入る可能性もあります。でも鍋はステンレス製でツルツルなので、ネズミが登れるとは思えない。天井から落下したり、誰かが意図的に入れたりしたら話は別ですけど……」
インパクトのある写真とともに臆測が独り歩きするなか、3月27日にすき家が公式サイトを更新。現地調査と店内カメラの映像からネズミが鍋に混入する様子は確認されなかったとし、さらに混入したネズミの死がいを検査した結果、加熱されていないことを示す反応が出たことから、鍋にネズミが混入した可能性は著しく低いと結論づけられた。
過去にも起きていた食品への混入事件
混入したネズミはクマネズミの子供とみられている。ではネズミはどのように混入したのか—すき家はネズミの「侵入ルート」をこう説明している。
《当該店舗の大型冷蔵庫の扉が店外に面しており、その下部に設置されたゴム製パッキンに生じていたひび割れから混入したネズミが侵入した可能性が高いと結論付けております。また、お椀への混入は、みそ汁の具材を入れたお椀を大型冷蔵庫で一時保管していた間に混入した可能性が高いと考えております》
わずかなひび割れから冷蔵庫内に侵入したネズミがお椀の中に紛れ込み、やがて死亡。それに気づかずに従業員が汁を注いだという見立てのようだ。

近年、ネズミが混入したのは牛丼店だけではない。
2024年5月には、人気食パンの『超熟』(敷島製パン)にネズミが紛れ込んだ。
「購入者が食パンの中の“異物”に気づいてメーカーに連絡を入れたそうです。調べた結果、その異物は5cmほどの“クマネズミの体の一部”でした。東京多摩工場で生産された食パンで、メーカーは約10万4000個を回収する大騒動となりました。どうもネズミは工場近くの巣穴から侵入し、焼かれる前のパンの生地に入り込んだようです」(前出・全国紙経済部記者)
コロナ禍以降、利用率が増加したフードデリバリーでも混入騒動が起きた。3月29日、「出前館」の配達員が届けた商品に異変が見つかった。
「受け取った客が袋を開けたところ、5cmほどのクマネズミが生きたまま入っていました。商品は、玄関ドア前に“置き配”されたもの。侵入経路はわかっていませんが、袋の口は閉じられた状態だったそうです」(全国紙社会部記者)