健康・医療

《医師が選んだ本当に頼れる病院「脳卒中」編》重要なのは「一刻も早く治療を始めること」 まず受診すべきは脳卒中学会認定の「一次脳卒中センター(PSC)」

高齢になるほど脳卒中は発症しやすい(写真/PIXTA)
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 初期段階での自覚症状はほぼなく、ある日突然、日常を一瞬で奪う「脳卒中」。血管が収縮し、血圧が上昇しやすい冬は発症率が高まるとされる。回復の明暗を分ける適切な早期治療と、質の高いリハビリテーションを受けるにはどのように病院を選べばいいのか。ジャーナリスト・鳥集徹氏と本誌・女性セブン取材班がレポートする。【前後編の前編】

 あなたや家族の人生を、突然変えてしまうのが「脳疾患」だ。

 特に脳血管の障害が原因で起こる「脳卒中」(「脳梗塞」、「脳出血」、「くも膜下出血」の総称)は、多くが何の前触れもなく発症する。命は助かっても、体の左右どちらかが思い通りにならなくなる「片麻痺」や感覚障害などの後遺症が残り、体を動かすことや話すことが不自由になるケースも多い。重いまひが残れば本人が肉体的にも精神的にも過酷なのはもちろん、家族にも介護の負担がかかる。

 それだけに、常日頃からの予防が大切だ。具体的には、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動などの病気や、過度の飲酒、喫煙、肥満などが脳卒中のリスク因子となる。思い当たる人は医師の指導のもと、病気の治療や生活習慣の改善に取り組んでほしい。

 また、脳卒中は高齢になるほど発症しやすく、生涯のうち4〜5人に1人が経験する。そのときに運命を左右するのは、「どの病院へ運ばれるか」だ。また、容体安定後のリハビリテーション(以下、リハビリ)の質が、その後の機能回復に大きく影響する。

 そこで今回は、脳疾患やリハビリの専門医にアンケートを実施。「あなたや家族がその病気になったときにかかりたい病院、あるいはかかりたくない病院」について尋ねるとともに、いい病院の見極め方を取材した。

どれだけ早く治療できるかがカギ

 自分や家族が脳卒中を発症したとき、もっとも重要なのは「一刻も早く病院へ行くこと」だ。治療開始が遅れるほど脳へのダメージが大きくなり、後遺症が重くなる。

 では、どのような場合に脳卒中と判断できるのか。その症状に気づき、早く対応するための標語に「FAST」がある。Fは顔(Face)、Aは腕(Arm)、Sは発語(Speech)、Tは時間(Time)を意味する。「顔の片側が動かせず口角が下がる」「片腕がだらんと垂れ下がる」といった症状が現れた場合には、発症時刻を確認し、すぐに救急車を呼ぶなど、急いで病院に向かってほしい。

 では、どこへ駆け込めばいいか。まずは日本脳卒中学会が認定する「一次脳卒中センター(PSC)」を目指そう。埼玉医科大学国際医療センター副院長で、脳卒中センター長の栗田浩樹医師が話す。

埼玉医科大学国際医療センター副院長・脳卒中センター長の栗田浩樹医師
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「現在、全国に957か所のPSCがあります。具体的には『24時間365日脳卒中患者を受け入れ、速やかに診療を開始できる』『専用の集中治療室である脳卒中ユニット(SU)を有する』『脳卒中専門医1名以上が常勤している』などの条件を満たした施設がPSCに認定されています。

 さらにこの中でも、『脳血管内治療専門医と脳血栓回収療法実施医が合わせて3名以上常勤している』『血栓回収治療実績が年間12例以上ある』といった基準を満たした施設が『一次脳卒中センター・コア施設』に認定されており、全国に296か所あります。脳卒中を疑ったら、一刻も早く近くのPSCを受診してください」

 同学会のホームページには、都道府県別のリストが掲載されている。いざというときのためにも、最寄りのPSCがどこにあるかを確認しておいてほしい。

 しかし、首尾よく運ばれたとしても、治療が遅れては意味がない。横浜新都市脳神経外科病院では、スムーズな治療開始に向けて、さまざまな取り組みを行ってきた。同院院長の森本将史医師が話す。

横浜新都市脳神経外科病院院長・森本将史医師
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「以前は当院も病院到着から治療が始まるまでに90分ほどかかっていました。そこで、治療に関係する部署のリーダーを集めて委員会を設置。時間がかかった理由を一例一例検討し、早期治療開始のマニュアルを作成。さらに模擬患者による訓練も行うことで、治療開始までの平均時間を約20分に短縮できました。

 脳の専門医や看護師などスタッフの数が多い施設なら、スムーズに対応してくれる可能性が高いといえるでしょう」

 病院へ運ばれた後には、どんな治療が行われるのか。脳卒中のうち、全体の6〜7割を占めるのが、脳の血管が血栓で詰まり、その先に血が流れなくなることで脳細胞が壊死してしまう「脳梗塞」だ。この治療には、大きく「血栓溶解療法」と「血栓回収療法」の2つがある。熊本赤十字病院脳神経外科部長の戸高健臣医師が解説する。

熊本赤十字病院脳神経外科部長の戸高健臣医師
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「血栓溶解療法は、t-PAという血栓を溶かす薬剤を点滴(静注)する治療で、脳梗塞発症後4時間半以内であれば、実施できます。

 そして必要があれば血栓回収療法も行います。これは脳の大きな血管に血栓が詰まっているときに行うもので、腕か足の付け根から動脈にカテーテルを挿入し、X線画像を見ながら血栓を取り除く方法です。こうした技術の進歩で、治療成績は格段に向上しています」