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【64歳オバ記者 介護のリアル】母ちゃんが天国へ旅立った 臨終間際に呼びかけた「いづまでも寝でんじゃね。じゃがいもの種芋、植えなくちゃなんねーべ!」

オバ記者の母親「母ちゃん」がとうとう天国に旅立ってしまった
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ライター歴43年のベテラン、オバ記者こと野原広子(64歳)が、介護を経験して感じたリアルな日々を綴る。昨年、4か月間、茨城の実家で93歳「母ちゃん」を介護。その後、施設に入所した母ちゃんだったが2月中旬、体調に“異変”があり緊急入院。コロナ禍で面会ができなかったが1週間前、担当医師から面会の許可が出たのだった――。

* * *

ベッドで寝ている母ちゃんと対面

「いつ何があるかわからない状態です」

1か月前に食事ができなくなり、総合病院に入院した母ちゃんの様子を芥川龍之介似のU医師はそう言ったそうな。

それまで弟には「血糖値が通常の8倍になりました」「昨日から受け答えができなくなっています」と連絡が入っていたけれど、ご時世柄、お見舞いは厳禁。なのに今度ばかりはその禁をといて短時間なら会わせてくれると言う。ということはそれなりのこと。覚悟して上野駅から新幹線に乗って駆けつけたのが先週の土曜日だ。

足かけ3年、母ちゃんが総合病院に入院するのは3度目のこと。短期入院や通院を入れたら、何回足を運んだかわからない。すっかりおなじみの駐車場から玄関を通って「病室がどごが聞いてくっから」と弟は受付へ。

だけどいざエレベーターに乗ったら、「あれ、3階だっけ?」。気が動転しているのか、なかなか病室にたどり着けないの。ナースステーションで聞いて2階へ降りて、やっとベッドで寝ている母ちゃんと対面した。

見舞いした中で「いちばんいい顔」をしてる

「母ちゃん、どした?」と声をかけても無反応。目を閉じたままで動かない。けど、母親の顔色は明るい。いままで何度も病室で寝ている母ちゃんを見舞ったけど、いちばんいい顔なんだわ。

オバ記者の母親
ベッドに横たわっていた母ちゃんはとってもいい顔だった
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それなのにU医師は顔を固くして、「最期の症状に、尿が出なくなるというのがあるんですけど、とし江さんは昨日からその症状が出ています」と言う。

さらに「ここから先は神の領域です。急にスッ~とあちらに行ってしまうかもしれないし、数日このままかもしれません」とU医師は大きな目をさらに大きく見開くの。

担当医師の名前を覚えていた母ちゃん

母ちゃんは、昨年6月にこの病院で意識不明、危篤になった。それから入院している2か月間、ほぼ意識がなかったと聞いていたけど、実はこのU医師のフルネームを覚えていたの。

オバ記者の母親
危篤状態で自宅に戻りそこからV字回復した当時の母ちゃん
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私がそのことを知ったのは自宅での介護中、U医師が2度目に訪問診察に来てくれた時。U医師が、母ちゃんがニコニコと笑いかけるのを眩しそうに見て、「奇跡です。医学では説明できません」と何度も同じことを言って帰っていった後、母ちゃんがふいに彼の名を言ったんだわ。

驚いて「何で知ってんで?」と聞いたら、「はぁ(もう)、U先生はそごいらにいる医者じゃねーって初めて見たとぎから、ピンときたがら名前覚えだのよ」だって。

私は何人かの訪問看護師さんから、U医師が以前はドクターヘリに乗っていた救急医療医師だったと言うことを聞いて知っていたけど、耳の遠い母ちゃんがそんなこと知るはずがない。

「あんな優秀な医者さまにあだって(当たって)母ちゃんは運がいいな」と言うと、「そだなぁ。はぁ、母ちゃんは顔見だだげで、そごいらの医者じゃねーってわがんだよ」だって。

私はこれまで的確な医療をしてくれたU医師を称えたのに、母ちゃんはそれを「自分の目は確かだ」という自慢話にすり替える。オレが、オレがと前に出る性格は昔からまったく変わらない。

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