取り返しのつかない事態になることもある、犬の熱中症。まだまだ暑い日が続くので、気をつけたいもの。そこで、実際に熱中症にかかってしまったときの応急処置など飼い主さんがすべきことを、獣医師の山本昌彦さんにうかがいました。
体温を下げることが最優先
犬の熱中症は、8月が診療件数のピーク。夏日(最高気温が25℃を超える日)どころか真夏日(最高気温30℃超)、猛暑日(最高気温35℃超)が続き、9月もまだまだ暑さが続くと予想されています。特に高齢犬や短頭種を飼っている場合は注意が必要です。
山本さんは「犬が熱中症にかかりやすいのは、直射日光や路面からの照り返しを受ける散歩中や、エアコンのない部屋や自動車の中などに長時間いるときなので、こうしたシーンを避けることが大切です。特に車の中は短時間で温度が上がります。絶対に犬を車内に置き去りにしないでください」と話します。
リビングにいても熱中症になる可能性
しかし、炎天下の運動中や家族が出払っている留守番中だけでなく、例えば、リビングで家族と一緒にいても、犬だけが熱中症になることはありえるのだそうです。予防をしていても、愛犬が熱中症にかかってしまう可能性はゼロにはなりません。
浅くて速い呼吸、ふらつく、ぐったりする、吐いたり下痢をしたりする、けいれんを起こす、といった熱中症の症状が見られたとき、飼い主さんはどうしたらいいのでしょうか。山本さんは「まず、ワンちゃんの体を冷やしてあげてください」と訴えます。
「動物病院への連絡も重要ですが、すぐにできる対応として体温を下げることを最優先にしてください。飼い主さんは気が動転して、とにかく病院へ運び込もうとした結果、体を冷やしていないということがありますが、体温が高いまま移動すると、その間にも状態は悪くなっていきます。とにかく体を冷やしてください」(山本さん・以下同)
涼しい場所に移して水をかける!
犬の体を冷やすために、具体的に飼い主さんがすべきことは「涼しい場所に移すことと水を浴びせること」だといいます。
「まず、風通しのいい、涼しい日陰などに移動します。街中の場合は空調の効いたビル内に移動できるといいですね。それと同時に水をかける。全身にかけます。水道が使えたらいちばんですが、ペットボトルの水でもなんでも構いません。
ただし、氷水を使用すると体の表面の温度は下がりますが、皮膚の血管収縮を起こし熱が体内にこもったり、表面温度が下がりすぎて低体温症を引き起こす可能性もあるので注意が必要です。濡らしたタオルで体を覆うのも効果があります」
症状が軽ければ水を飲ませる
さらに、もしも氷や保冷材がある場合には、体に押し当てると効果的なのだとか。
「首の後ろやわきの下、鼠蹊部(太ももの付け根の内側)など太い動脈が走っている部分に当ててあげるといいですね。血流が冷やされて全身の体温が下がっていくはずです」
もちろん、症状が軽く、意識がある場合には、水を飲ませることも大切です。
「飲ませる水は、普通の水で構いません(塩の添加などは不要)。近年は、犬用の経口補水液なども市販されているので、そういうものを散歩やドライブ時に携帯しておくこともおすすめです」