
ごちそうを食べる機会が増える年末年始を前に、今から太りづらい体に整えておきましょう。気温が低くなる秋冬は、代謝を高めて痩せ体質を作る絶好のチャンスだと、漢方にも詳しい管理栄養士の小原水月さんは言います。そこで、代謝アップのための生活習慣や食事、ダイエット効果が期待できる漢方薬について教えてもらいました。
* * *
秋冬は代謝が上がる
代謝とは栄養素をエネルギーや身体活動に必要な物質に変える作用を指し、とくに安静時に呼吸や血液の循環、排出、体温調整など、生きるために最低限必要なエネルギーを生成することを基礎代謝といいます。
秋冬の過ごし方で痩せ体質になる
秋冬は外気温の低下の影響で、体温を維持するのに必要なエネルギー量が増えるため、基礎代謝が高くなると考えられています。基礎代謝が高まる秋冬に、より代謝を高める生活習慣を身につけると消費エネルギー量が増え、体内に蓄えた脂肪が消費されやすくなります。

秋冬に代謝を上げると1年中太りづらくなる
さらに、この時期に代謝の高い体作りをすることで春夏にエネルギー消費量が落ち込むのを防ぎ、余分なエネルギーをため込みづらくできます。つまり、1年を通して太りづらく痩せやすい体になることができるのです。
秋冬から身につけておきたい代謝アップにつながる生活習慣
基礎代謝が行われる器官の内訳は、筋肉22%、脂肪4%、肝臓、脳などの各臓器の合計74%です。基礎代謝を上げるためには、筋肉と各臓器の機能低下を防ぎ、活発に働くようにすることが必要です。
そこで、毎日の生活のなかでできる、基礎代謝がアップする習慣を実践してみましょう。
座る時間を減らす
特別な運動をしなくても、積極的に日常生活の活動量を増やすことで筋肉を維持できます。ある研究では、非肥満者は肥満者に比べて座っている時間が150分も少なかったと報告されています。

1日1回は外出する、デスクワーク中でも1時間に1回は立ち上がるなど、歩いたり立ったりする場面をなるべく増やしましょう。
食事を抜かない
各臓器を働かせるには食事を摂るのが効率的です。食べ物が口から入ると、胃腸はぜん動運動をして消化・吸収します。
吸収された成分は血液によって全身に運ばれ、肝臓ではエネルギーを産出し、腎臓では老廃物を排出します。これらの働きは、すべて神経を介して脳によって調整されています(https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/55/5/55_309/_pdf)。

このように、食事をすると全身が活発化し、盛んにエネルギー消費が行われるのです。食事を抜くとこれらすべてが働く機会を失い、基礎代謝の低下につながるので、1日3食食べるのが理想です。
秋冬が旬! 代謝を上げる栄養素や食材
1日3食の基本に加え、食事内容も意識することで、さらに代謝アップが期待できます。基礎代謝を上げるために食事で摂りたいのは、エネルギー消費を高めたり、栄養素のエネルギー化を助けたりする成分です。
しょうが

しょうがに含まれるジンゲロールには、食後のエネルギー消費量を促進する作用があることが報告されています。
チューブや乾燥のしょうがでも効果が期待できます。汁物に入れたり、炒め物や煮物の風味づけに使ったりして継続的に摂るのがおすすめです。
まいわし

産卵前の秋から冬にかけておいしくなるまいわしは、ビタミンB群の1種であるビタミンB12を豊富に含みます。
ビタミンB群は代謝ビタミンとも呼ばれ、エネルギー産生に不可欠な栄養素です。ビタミンB12は植物性食品にはほとんど含まれていないので、動物性食品から摂ることを意識しましょう。
豚ヒレ肉

代謝に欠かせないビタミンB群の含有量が多い豚肉。なかでもヒレは、ビタミンB群がとくに多い部位です。
肉質がきめ細かく、柔らかいのが特徴の豚ヒレ肉。年間安定して手に入り、他の部位よりも脂質が少ないのも魅力の1つです。カツのような油を多く使う調理法だとカロリーが上乗せされてしまうので、トマト煮込みやオーブン焼きなどでさっぱりと食べましょう。
代謝を高めるには漢方もおすすめ
手軽に基礎代謝を高めたいという人は、漢方薬をのむのもおすすめです。老廃物を排出したり、血流を改善したりする漢方薬で代謝を上げれば、太りにくく痩せやすい体質を目指せます。ダイエットに対しては、「血流をよくして基礎代謝を上げる」「水分の循環をよくして老廃物を排出する」「脂肪の燃焼を促す」「余分な脂肪の吸収を抑える」「精神に働きかけ、つい食べてしまうことを防ぐ」といった作用のある漢方薬を選びます。

また、漢方薬は自然の生薬からできていて一般的に副作用が少ないとされているため、初めての人でも安心して利用できます。
代謝を促しダイエットをしたい人におすすめの漢方薬2つ
・防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
脂質代謝機能を改善し、ため込んでいる脂肪を減らすのに役立ちます。お腹がぽっこり出て、便通が悪い人に用いられます。
・大柴胡湯(だいさいことう)
体の余分な熱を取り除き、肝の働きをよくして脂質代謝を改善します。ストレスで食欲が増してしまうときや、便通が悪くがっちりした体形の人に用いられます。
漢方薬を始めるときの注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。