そして、笠置シヅ子さんの『ラッパと娘』(1939=昭和14年)! トランぺッターとの掛け合いで歌うという斬新にもほどがある一曲。笠置シヅ子さんが本格的にブレイクするきっかけになった曲なので、ドラマでも大きく取り上げられることだろう。
この楽曲の笠置シヅ子さんは、歌手というよりもはや最強の楽器。歌詞にスキャットがいっぱい入っていて、理屈ではない音楽の「ノリ」のすばらしさをガツンと思い知らされる。「バドジズデジドダー」の歌詞は発明だと思う!
「ブギウギ」という言葉が放つパワー
そもそも「ブギウギ」という音楽ジャンルを表す言葉が大発明だと思う。諸説あるが、西アフリカには「踊る」という意味で「Bogi」という言葉が「ブギ」の語源という説もある。音楽ジャンルとしては、19世紀、テキサスでブルース・ピアノの奏法として広まったそうだ。スウィングまたはシャッフルのリズムによる反復フレーズで「8ビート最高の芸術」とも言われている——。
なるほど。でも、その専門的な説明がなくとも「ブギウギ」という語感だけで「ウキウキワクワクしたとき、高鳴る胸の鼓動に一番近いリズム」だと、すぐ感じ取れるではないか。なんてすばらしい!
溢れ出る感情と共鳴する旋律の種類と、それにバシリとはまるジャンル名。音楽というのは、あらゆるパーツに底知れぬ魅力が詰まり、それが噛み合って発せられるパワーと痛感する。
朝ドラ『ブギウギ』は、これまでの朝ドラにはないほどの歌と踊りが出てくるという。
朝からたくさんのハッピーがもらえそうだ。心ワクワクしながら待っておこう!
◆ライター・田中稲
1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka