「1分間血流アップ体操」で3つのポイントを刺激
血液の循環の滞りを解消し、最初に述べたような緩やかな磔刑状態から体を救うには、次の3つが正常に働くことが必要だといいます。
まずは「血管」。血液の通り道である血管が詰まったり、汚れていたりするのはNGです。2つ目は「自律神経」。自律神経が乱れると、血液の量の調整がうまくいきません。
最後に、「筋肉ポンプ」です。血液の流れに深く関わっている筋肉ポンプが作動しないと、血液を心臓にうまく戻せません。
「『1分間血流アップ体操』は、この血管、神経、筋肉ポンプの3つのポイントに刺激を与え、血流を改善させる簡単な体操です」
富永さんは、診察が終わったあと、自身の体や患者の協力を得て、血流の測定を繰り返して「1分間血流アップ体操」を開発。そこで、5つの「1分間血流アップ体操」から1つと、「1分間血流アップ体操」と合わせて行うことで効果アップが狙える「すき間時間血流アップワザ」の1つを紹介します。
【1分間血流アップ体操】「シャガノバ体操」のやり方
しゃがんで伸びるから「シャガノバ」と名付けられたこの体操。ほかの「1分間血流アップ体操」に比べてアクションが大きいですが、難しいことはありません。血流アップ効果が抜群なうえに回数は1、2回で十分というから、ぜひ実践を。
ひざが痛い人や足腰に自信がない人は転倒に注意して、自分のペースで行いましょう。
【1】しゃがんで足首をつかむ。手の親指は内側向きでくるぶしをつかむ。視線は下向きに。鼻から大きく息を吸いこむ。(このときかかとが上がってしまう人はそれでも構わない)
【2】口からゆっくり息を吐き、お尻を持ち上げていき、足を伸ばしたところで息を吸ってひと休み。その後、ゆっくり息を吐きながら【1】の姿勢に戻る。
腕ではなく、肩だけを上げ、腕はそれにつられているイメージで行うのがポイント。鼻から息を吸い、肩をグーっと上げきったところで、今度は息を口から吐き、一気に体の力を抜きましょう。
「手のひらを開くと、指先がビリビリしているはず、これは血流がよくなった証拠です!」
【すき間時間血流アップワザ】「両手ニギニギ」
手を握るだけの動作だから、電車に乗っているときや信号待ちなど、「両手ニギニギ」は本当にすきま時間でできてしまう簡単血流アップワザです。
【1】指の横腹と横腹を重ね合わせる。
【2】親指をそろえる。ほかの指は、指先が指の股に当たるようにする。
【3】ニギニギともむように、軽く力を入れる。これを10回繰り返す。
手は編むようにふんわりと握るのがポイントです。優しくもむようにニギニギニギとリズミカルに動かします。
「指先の血流改善と、脳への刺激によってボケ防止の効果も期待できます」
ジムの1時間より「1分間血流アップ体操」を
2009年に安田厚生事業団の体力医学研究所によって行われた「肯定的感情の変化」という実験で、ジムで1回60分必死で汗を流すよりも、体操で軽く体を動かしたほうが気分も上がるということが証明されたそうです。
「この実験では、運動習慣のある若者よりも、54〜64歳の人のほうが、また、男性より女性のほうが、効果が大きいこともわかりました。自己暗示のようですが、『私はこれをやったら健康になれる』と思いながら取り組むとより効果的です」
◆教えてくれた人:医師・富永喜代さん
とみなが・きよ。富永ペインクリニック院長。医学博士。日本麻酔科学会認定麻酔科指導医。呼吸と循環、血液コントロールのスペシャリストとして、全身の病気と血流について豊富な知識を有する。聖隷浜松病院などで麻酔科医としてのキャリアを積み上げ、臨床麻酔実績は2万人超。2008年に愛媛県松山市で開業。YouTubeチャンネルは登録者数25万、オンラインサロンは会員数1万5000人を超え、SNS総フォロワー数は39万人。NHK『おはよう日本』、TBS『中居正広の金曜日のスマたちへ』などメディア出演も多数。著書に『血流がすべて 血流コントロールの名医が教える わずか1分でできる「すごい血流改善法」』(アスコム)など、著書累計95万部のベストセラー作家である。