家事・ライフ

薄井シンシアさん、年に一度「体力・財力・気力」を自問する「だから私は人生に迷わない」

薄井シンシアさん
薄井シンシアさんが年に一度は欠かさないセルフチェックとは?
写真4枚

17年間の専業主婦を経て、外資系企業で働く薄井シンシアさん(64歳)は、新年を迎えるたびに、自分の「体力」「財力」「気力」を点検しています。心身ともに余裕をもって暮らし続けるため、シンシアさんが年に一度は欠かさないセルフチェックの中身とは? 前編では、10年後、20年後を見据えて生きるシンシアさんに、その効果を詳しく聞きました。

* * *

年末年始に生きがいを考える

私は年末年始を、一人でゆっくりと自分の生き方を点検する時期にしています。新年にしっかりと頭を整理すると、自分がどの方向に進みたいかが明確になるでしょう? いったん整理すれば、目の前にチャンスが来たとき、それを受けるかどうかも瞬時に判断することができます。

そう考えたきっかけは60歳になった年の正月でした。皆さんもたぶんそうだと思うけれど、年末年始って、大抵は家族と過ごすじゃない? 学生になっても年末年始は帰省して家族と過ごす人が多いから、一人でポツンと年末年始を過ごすことってそんなにないと思います。私もそうでしたが、2019年の年末年始に人生で初めて一人で過ごしました。

その年はすでに夫と離婚していたし、米国に住む娘は11月に一時帰国してから戻っている。翌年に東京五輪の開催を控えていたこともあり、私は娘の住む米国へ行かず、初めて年末年始を一人で過ごすという選択をしました。そのとき、これから生きていくために何が必要なのか。生きがいをどうするのかをいろいろと考えたのです。

自分に問うのは体力・財力・気力

私は結婚後17年間、専業主婦をして、次の17年間はキャリアの再構築。いま目の前に迫っているのは、65歳で定年退職になったあとの17年間をどうやって過ごすかの選択です。それを頭に入れつつ、今年も新年に自分自身の「体力」「財力」「気力」を点検しました。

薄井シンシアさん
「体力」「財力」「気力」を点検
写真4枚

体力は、どのくらいのペースで働きたいか、ということです。先日、娘からも言われましたが、65歳を過ぎてフルタイムで働くのはしんどい。もちろん、まだフルタイムでも働けます。でもフルタイムで全力で働くと、体力をつける暇が無い。年を取ればとるほど、今以上に体力をつけるには相当の時間がかかってしまうのです。

だから65歳以降も働くなら、デスクワークでなく、体を動かす仕事のほうが健康に良い。それこそ、エッセンシャルワーカーのような仕事は、働きながら体力も維持できるので一石二鳥だと思います。娘からも「デスクワークは、もうやめた方が良いよ」と言われました。

二番目は財力です。新年には毎回、収支が変わっていないかどうかを確かめます。私はだいたい月15万円の暮らしで満足する。だから新しい出費をチェックして、毎月の支出を見直します。貯金は、あるに越したことはないけれど、ある程度まで増えたら、安心して、お金に縛られない生き方を模索することも大事だと思います。

もう一つ、いま考えているのは「新NISA」です。既に資産の一部を投資に回しているし、資産を増やす必要に迫られているわけでもありません。でも、目の前に転がっているチャンスを使わないのはもったいないとチェックしています。

薄井シンシアさん
目の前に転がっているチャンスを使わないのはもったいない
写真4枚

三番目の「気力」は、朝、目覚めた時のモチベーション。私は、いつもここでつまずきます。私の人生で一番良かったことは子育てだけど、娘が巣立ってしまったので、それはモチベーションになりません。

だから仕事を生きるモチベーションにしています。働く場所があれば、自分を奮い立たせるツールになる。もし起業したら自分のペースですべてを進められる一方で、朝、起きるモチベーションが下がります。私はそれもあって起業しないのかもしれません。就職すれば、毎朝、起きる必要があるから、「逃げ」かもしれないけど、仕事がモチベーションです。

年に一度、点検をすれば人生に迷わない

私は新しい仕事や企画の誘いがあったとき、必ず相手の話をよく聞くことにしています。聞きながら「この話はここに結びつくから、やっぱりこれかな?」「この話は、こちらの仕事に近いかな」と自分の中でグルーピングをする。そうやって全体を俯瞰すると、最もチャンスが広がる可能性があるものが見えてきます。

物事を選ぶ基準は好き嫌いではありません。結果を出したいので、最も成功する可能性がある選択肢を選ぶ。年に一度、そうやって頭を整理するから人生に迷いがないのかもしれません。

◆薄井シンシアさん

薄井シンシアさん
写真4枚

1959年、フィリピンの華僑の家に生まれる。結婚後、30歳で出産し、専業主婦に。47歳で再就職。娘が通う高校のカフェテリアで仕事を始め、日本に帰国後は、時給1300円の電話受付の仕事を経てANAインターコンチネンタルホテル東京に入社。3年で営業開発担当副支配人になり、シャングリ・ラ 東京に転職。2018年、日本コカ・コーラに入社し、オリンピックホスピタリティー担当に就任するも五輪延期により失職。2021年5月から2022年7月までLOF Hotel Management 日本法人社長を務める。2022年11月、外資系IT企業に入社し、イベントマネジャーとして活躍中。近著に『人生は、もっと、自分で決めていい』(日経BP)。@UsuiCynthia

撮影/小山志麻 構成/藤森かもめ

薄井シンシアさんの社交術 外交官夫人時代のホームパーティーは「仕事だからサプライズはしない」

●薄井シンシアさん、やり方が強引で言葉もきついから同僚とはたびたび衝突 それでも敵をつくらないでいられるワケ