17年間の専業主婦を経て、キャリアを再構築。現在、外資系企業で働く薄井シンシアさん(64歳)が年末年始の習慣にしているのは「体力」「財力」「気力」の再点検。中でも「体力」はクオリティーオブライフの要だと言います。後編では、小さな体力の衰えを見逃さず、ピンチをチャンスに変えようと生きるシンシアさんの姿を浮き彫りにしました。
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転んでも、ただでは起きない
ちょうど60歳だった2019年、友人との待ち合わせ場所へ向かって有楽町を歩いている時に転んでしまいました。受け身の姿勢を取ったので、大事には至らなかったけれど、転んだことはショックでした。理由を突き止めようと、道に出っぱりでもないかと見渡しましたが何もない。ただ、私がつまずいただけなのです。同じ年、お婿さんの母親も転倒して顔を打つ事故にあいました。私は、その話を聞いていたので、より慎重に歩いていたはずなのに転んでしまった。
このことをジムのトレーナーに話すと、「もしかしたら足が上がらなくなっているから、転んだのかもしれませんね」と言われました。そこで初めて、「歩くときに足があまり上がらなくなっているのかもしれない」と気付きました。
現在の自分の体力は50歳のときに比べて、圧倒的に劣っている。体力が落ちたというより、今の体力を維持するためには、昔に比べて時間がかかるし、やるべき課題が増えたと感じています。
階段は一段飛ばし
それからは、足を上げ下げする運動を取り入れようと、階段を一段飛ばしで上がっています。歩く歩幅も大きく変えました。日常のタスクを今までよりも少し増やしたのです。
普通は転んだだけで、そこまで深く考えないかもしれません。でも私は転んだ理由を徹底的に考えました。私は体力維持を人一倍意識して、47歳からスポーツジムに通っています。それなのに13年間の運動メニューに足の上げ下げは入っていなかった。30歳でぎっくり腰をしたことがあったので、腰をカバーすることは意識していましたが、まさか足の上げ下げが問題になるとは思っていなかった。だから、すぐに新メニューを取り入れたのです。
どこかが痛いと実力が発揮できない
「生きるために何が必要か」と自問自答したとき、やっぱり一番に出てくるのは体力です。体力を客観的に振り返る作業は健康診断と同じで、1年に1回は必要なプロセス。見た目もそうですが、活力に満ちあふれて、なにかあったときにパッと動けるパワーを常に維持するためには体力が第一でしょう? あっちが痛い。こっちが痛いとなると、ほかのことは全くできません。だからクオリティーオブライフの基本は体力だと思います。
健康診断は、会社の定期健診に年1回参加して、さまざまなオプションもつけています。昔からコレステロールの数値が高いので、健診とは別に、専門医にも年に1回、首の血管の状態をチェックしてもらっています。