更年後も元気に過ごすために摂り入れたい栄養素
エストロゲン減少による変化をケアするために、更年期の終わり以降も意識的に摂取したい栄養素を紹介します。
大豆イソフラボン
エストロゲンが減少すると生活習慣病などのリスクが高まりますが、エストロゲンと似た働きをする大豆イソフラボンの摂取が生活習慣病などの防止につながります。大豆イソフラボンは、大豆製品から摂取可能です。1日に40~45mg(食品安全委員会「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」https://www.fsc.go.jp/sonota/daizu_isoflavone.html)の摂取が望ましいとされ、納豆1パックまたは豆腐約半丁などが適量です。
カリウム
エストロゲンには血管を拡張させて血圧が上がらないようにする作用がありますが、エストロゲンが減少すると血圧が上がりやすくなるため、更年期後の女性は高血圧のリスクが上がります。
そのため、ナトリウム(塩分)の排出を促して血圧を下げる働きがあるカリウムを食事から補いましょう。カリウムは海藻類や果実類、いもや豆、野菜などさまざまな食材に含まれています。昆布やひじき、干しブドウ、バナナ、アボカドはカリウム豊富な食材の代表例です。
カルシウム
更年期を過ぎるとエストロゲンの欠乏により骨密度の低下が顕著になるため、日頃からカルシウムを補って骨密度の維持に努めましょう。カルシウムは牛乳・チーズなどの乳製品や小魚に多く含まれています。
カルシウムの吸収が高めるために、きのこ類や鮭などビタミンDが豊富な食材も併せて食べるのがおすすめです。
ビタミンC
皮膚や血管などのコラーゲンの合成や維持に関わるビタミンCは、エストロゲンの減少で衰えやすくなった肌のために意識的に摂りたい栄養素のひとつです。柑橘類やキウイフルーツ、じゃがいも、ブロッコリー、パプリカなどはビタミンCを豊富に含んでいます。
更年期後の健康維持には漢方薬も役立つ
生活習慣病や骨粗しょう症に対しては医療機関での治療が最優先となりますが、「頻尿や尿漏れが気になる」「だるくて元気が出ない」といった更年期の不調には漢方薬もおすすめです。
たとえば、頻尿や尿漏れの改善には膀胱の機能を正常化するもの、気分の落ち込みに対しては、自律神経のバランスを整えて精神を安定させる漢方薬が適しています。
更年期後の不調に効く漢方薬には多数あり、婦人科や内科、泌尿器科などさまざまな診療科でも処方されています。ホルモンバランスや自律神経のバランスの乱れなどによる不調に働きかけるので、多彩な症状を訴える更年期女性に対してはとくに有効とされています。
おすすめの漢方薬
・牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
体を温めて水分代謝をよくし、冷えによるしびれや排尿トラブルなどを改善することで頻尿や尿漏れの改善に作用します。そのほか、下半身のしびれや痛み、むくみなどにも用いられます。
・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
エネルギーの巡りをよくすることで精神の緊張をゆるめて精神不安やイライラ、気分の落ち込みなどを改善する漢方薬です。のどや胃の緊張をやわらげることで水分の循環をよくするので、喉のつかえ感や吐き気などの症状にも用いられます。
漢方薬を始める際の注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん
おはら・みづき。管理栄養士・健康食育シニアマスター。社員食堂で300以上の料理を修得、ダイエット合宿所・特定保健検診の業務に携わり600人以上の食事と生活習慣改善を個別サポート。自身の出産後の体調不良から食事と漢方で体調改善・増進の経験を生かし、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。「心も体も食べたものだけで作られる」をモットーに簡単で時間もお金もかけずに元気になれるレシピを発信中。また、オンラインAI漢方サービス「あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)」などでの執筆も行っている。