健康・医療

更年期になるとなぜ太る?医師が解説する解消のカギは「セルフモニタリング」

お腹をつまむ人
女性ホルモンの影響で更年期は太りやすい
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更年期に入り、体重の増加や体形の変化が起こる理由について、「更年期になると代謝の低下やホルモンの変化によって、体重が増える傾向にあります」と話すのは、医師の木村眞樹子さん。漢方医学にも詳しい木村さんに、更年期太りの原因と解消方法・漢方について教えてもらった。

更年期に太りやすくなる原因

更年期太りは、主に基礎代謝の低下とホルモンバランスの変化、自律神経の乱れによって起こります。

基礎代謝低下の原因

基礎代謝とは、生命を維持するために消費するエネルギーのことです。基礎代謝が高いほど日常生活で消費されるエネルギーは多くなりますが、加齢とともに低下していく傾向があります。

日本人女性の基礎代謝基準値(kcal/kg/日)は18〜29歳で22.1ですが、30〜49歳で21.7。50〜69歳で20.7となっており、徐々に数値が低くなっていることがわかります(e-ヘルスネット(厚生労働省)「加齢とエネルギー代謝」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-004.html)。

また、筋肉量の減少も基礎代謝が低下する原因のひとつです。体温を調整したり体を動かしたりするために筋肉が多くのエネルギーを消費しているので、筋肉が減るということは消費エネルギーの減少にもつながります。

「食べ過ぎた訳でもないのに太った」という人は、加齢で基礎代謝が低下して消費エネルギーが減少しているにもかかわらず、食事内容や摂取カロリーが若い頃と変わらず、余ったエネルギーが脂肪として蓄積されている可能性があります。

消費カロリーと摂取カロリーのバランスのイメージ
加齢により基礎代謝が退化した影響で、摂取カロリーとのバランスが若い頃と変わった可能性も
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エストロゲンの分泌量の低下

更年期になり、卵巣の機能が弱まって女性ホルモンのエストロゲンの分泌量が低下すると、中性脂肪をためやすい体になります。

食事によって血液中の糖が増えると、インスリンが分泌されます。インスリンは、糖をエネルギー源として利用できるようにし、余った糖を中性脂肪として蓄積する働きをするホルモンの一種です。一方、女性ホルモンであるエストロゲンは、インスリンの働きをサポートするとともに、体に中性脂肪がたまりすぎないよう脂質を代謝する働きも担っています。

しかし、更年期になると卵巣の機能が弱まってエストロゲンの分泌量が低下し、糖代謝がスムーズに行われなくなるため、血糖値が下がりにくくなります。

血糖値が下がらない状態が続くと、インスリンが過剰に分泌され、血中の糖が中性脂肪に変換されやすくなります。その一方で、エストロゲンによる脂質代謝の働きは低下しているため中性脂肪がたまりやすくなるのです。

自律神経の乱れによる食生活の乱れ

エストロゲンは脳の視床下部が卵巣に指示を出し、分泌量を管理しています。しかし、更年期になると卵巣の働きが弱まりエストロゲンが分泌できなくなります。すると、司令に対してエストロゲンが分泌されないため、視床下部の働きが不安定になるのです。

皿に持ったお菓子
自律神経の乱れがストレス食いの原因になっている可能性もある
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視床下部は自律神経のコントロールも担っているため、視床下部が不安定になることで自律神経の乱れにつながり、ストレスへの耐性が低下します。イライラすると食に走るタイプの人の場合、暴飲暴食や食欲のムラ、甘いものが食べたくなるなどカロリー過多になりやすく、結果として体重増加につながります。

更年期太り解消のカギはセルフモニタリング

更年期太りの解消には、セルフモニタリングが有効です。セルフモニタリングとは、自分の行動や考え方などを記録することをいいます。セルフモニタリングを実践することで、無理のない体重管理がしやすくなり、更年期太り解消に役立ちます。

まずは、その日の食事内容や感じたことを書き留めたり、体重の記録をとったりしてみましょう。毎日記録すると、普段の生活でどんな行動や習慣が肥満につながっているのかを客観的に把握できます。

記録ができたら、次は内容をもとに小さな目標を立てましょう。はりきって「◯kgやせる!」と大きな目標を立ててしまうと、達成までの道のりが長すぎて途中で挫折してしまう可能性があります。「3食野菜のおかずを入れる」「駅では階段を使う」といった小さな目標を立て、達成できたら自分を褒めるようにしましょう。

達成感が得られると次第にレベルの高い目標にチャレンジできるようになり、更年期太り解消への意欲を保ちやすくなります。

ノートに書き込んでいる
セルフモニタリングがダイエットのカギ
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セルフモニタリングを活用して更年期太りを解消する方法

食生活や運動、睡眠におけるセルフモニタリングの活用方法を紹介します。

食事内容の見直しや食べ方を工夫する

食事内容や食べた時間、間食の内容、食べるときの癖など書き出して食習慣を見直してみましょう。普段は意識していなくても、記録をとってみると脂質が多い食事が続いていたり、間食が多かったりなど、更年期太りの原因が見つかりやすくなります。

太りやすい食事を続けているわけではないのに太り始めたという場合には、無理に食事量を減らすのではなく、食べ方を工夫してみましょう。食べる順番や噛む回数など、食事の際の癖をモニタリングすることで、太りにくい食習慣を身につけることにつながります。

例えば、ご飯や肉料理などから食べ始めることが多いなら、ベジファーストを習慣にしてみましょう。ベジファーストとは、食物繊維が豊富な野菜やきのこなどを最初に食べる食事法です。血糖値が急上昇するとインスリンが過剰に分泌され、糖を中性脂肪としてためこみやすくなります。食物繊維には糖の吸収を緩やかにする働きがあるため、最初に食べることで血糖値の上昇を緩やかにできます。

さらに、よく噛んで食べるのも効果的です。少量の食事でも満腹感を得やすいため、厚生労働省では一口あたり30回噛むことを推奨しています(e-ヘルスネット(厚生労働省)「速食いと肥満の関係 -食べ物をよく「噛むこと」「噛めること」」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-10-002.html)。毎日の食事の際に意識して取り組んでみましょう。

消費カロリーを意識した運動をする

スマートフォンやウェアラブル端末を活用し、「1日5000歩」など目標を設定するのもおすすめです。いつも持ち歩いている端末に運動量や消費カロリーなどを記録できるアプリを入れると、簡単にモニタリングできます。

スマートウォッチを見る女性
ウェラブル端末の活用でモチベーションアップ!
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お昼や夕方など、タイミングを決めて運動量をチェックすると「夜までにもう少し歩こう」「今日は頑張った」など、モチベーションにつながるでしょう。

無理なく消費カロリーを増やすには、比較的負荷の軽い有酸素運動がおすすめです。

例えば、近所への外出は徒歩で移動したり、駅などでは階段を使ったりなど、普段の生活のなかでできる運動はたくさんあります。取り入れやすいものから始めてみましょう。

睡眠の質の改善

イライラするなど、自律神経の乱れを感じる場合は、睡眠の状態をモニタリングし寝不足や睡眠の質の改善を心がけるとよいでしょう。

質のいい睡眠をとるには、夜になると分泌量が増加して眠気を誘う作用があるホルモンのメラトニンの分泌を保つことが重要です。

メラトニンは、夜にスマートフォンの光を浴びたり、毎日寝る時間がバラバラだったりすると、分泌されにくくなります。朝は太陽の光を浴び、夜寝る前はなるべく電子機器などの強い光を避けましょう。

毎日の就寝、起床の時間を記録すると、ばらつきに気づいて時間を揃えやすくなります。眠りの深さや寝付きなどをモニタリングできる睡眠アプリを活用するのもおすすめです。