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『BOYのテーマ』『夏色片想い』ほか 記録的猛暑を癒してくれる「菊池桃子のエンジェルボイス」…シティポップブームで「ラ・ムー」は世界的人気に

8枚目シングル『夏色片思い』(1986年)。“桃缶”ステッカーが同梱されていた
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1984年にアイドルとしてデビューすると、瞬く間にスターダムへと駆け上がった菊池桃子。今年で40周年を迎えたが、アイドル時代やバンド「ラ・ムー」時代の楽曲が、近年、再評価されている。菊池桃子の歌声に「涼」を感じるというライターの田中稲氏が、猛暑を癒してくれるおすすめの楽曲について綴る。

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今年は記録的猛暑となりそうである。調べなきゃいいのだが、ウェザーニュースで2024年8月〜10月の傾向を調べてしまった。「厳しい暑さ長引く」。読むだけで暑い! この猛暑を少しでも爽やかに、心地よく過ごしたい。

こんな時は、とりあえずビール、そして、とりあえず桃子。菊池桃子さんの歌声である。

菊池桃子の楽曲は「まるで歌う風鈴。聴く打ち水」(写真は1985年、Ph/SHOGAKUKAN)
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「大嫌いな夏が、ほんの少しだけ好きになる」

菊池桃子はアイドルの天才である。1984年、菊池桃子さんがデビュー曲『青春のいじわる』を歌う姿を初めて見た時の衝撃は忘れない。聖母さながらの笑顔を浮かべ、祈るように両手でゆっくりとマイクを持ちあげる表情は、まごうごとなきヒロイン。出てきた歌声は想像以上に小さな声であったが、超絶可憐だった。

当時はまだ「ウィスパーボイス」という言葉が一般認知されていなかったため、彼女の声は、ただただ声量の少ないカワイイ声として評価されていた。

かくいう私も1985年、日本武道館コンサート『MOMOKO in ADVANCED DOMESTIC TOUR BUDOKAN』開催のニュースを知ったときは、驚いたものである。彼女の囁き歌唱は、広い会場よりテレビ向きだろうに——。しかしそんな私の心配など鼻で笑うかのように、ビートルズの公演の観客動員数(2万2000人超)を塗り替え、コンサートを大成功させた桃子なのだった。彼女は証明したのだ。かわいさから生まれるパワーが無限大であることを!

さあ、前置きが長くなったが、クーラーを28度に設定し、菊池桃子を流してごらん。5thシングル『BOYのテーマ』の、「ボーイ……いつの日からか……♪」のAメロ歌い出しを聴くだけで、ああ、爽やか。室内温度が3度下がる。8thシングル『夏色片想い』のサビ「聞い・て・アンドゥトロワ♪」に至っては、5度下がる効果が得られる(注:個人的な感覚です)。

なんとエモ&キューティーな納涼なのか。まるで歌う風鈴。聴く打ち水。大嫌いな夏が、ほんの少しだけ好きになる。暑くてウンザリしている方、ぜひ桃子を聴いて!

『BOYのテーマ』(1985年)は、主演映画『テラ戦士ΨBOY』の主題歌として発売された
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シティポップブームで「ラ・ムー」が世界的人気に

私が「聴いて聴いて」と熱く語らずとも、すでに彼女は今、シティポップブームの波に乗り、「エンジェルボイス」「宝石のよう」と、世界で大人気なのであった。

1987年、CD売り上げが下降していた時期の12thシングル『ガラスの草原』が、『レコード・コレクターズ』2020年7月号(ミュージック・マガジン社)の特集「1980-1989 シティ・ポップの名曲ベスト100」で、69位にランクインしている。100位内でランクインしているアイドル歌手は、松田聖子さんと薬師丸ひろ子さんと彼女の3人だけというではないか。

さらに私が強く後悔をしているのが、1988年結成された、彼女がメインボーカルをつとめたバンド「ラ・ムー」についてである。あの儚い声でダンサンブルに歌い、彼女より100倍歌が上手そうな外国人バックコーラスを従えていた。そこで頭ごなしに思ってしまったのだ。こりゃ売れん、と——。言い訳がましいが、当時はラ・ムーに対して戸惑いの声の方が多かったのである。

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